抵当権抹消登記は、不動産登記の中でも簡単な部類です。
それゆえ、自分で挑戦してみようと思う方も多いようです。
抵当権抹消登記の必要書類には、委任状があります。
今回は、抵当権抹消登記の委任状について詳しく解説します。
よくある勘違いや、書き方、紛失した場合の対応などについて整理しています。
この記事からわかること
- 抵当権抹消登記の委任状とは
- 委任状の期限
- 委任状の関係者
- 委任状の書き方
- 受任者ごとのケース
- 紛失してしまった場合の対応
抵当権抹消登記の委任状とは
そもそも抵当権抹消登記の委任状とは何なのか?について、整理していきます。
委任の前提条件(原則)
抵当権抹消登記に使う委任状は、原則として「抵当権者(金融機関)と所有者が共同で作成すること」とされています。
初歩的な勘違いとしてよくあるのが、「所有者(例えば、あなた)が、だれか(妻や司法書士など)に抵当権抹消登記を委任するための書類」だと考えているケースです。
窓口に持っていくだけの人は、委任されている人ではなく、いうなれば、ただの代理人です。
基本的に「金融機関」が債権者
抵当権抹消登記は、住宅ローンなどによって設定された抵当権を抹消するための登記です。
ですので、債権者は、基本的に「金融機関」です。
抵当権を抹消する権利があるのは債権者(金融機関)
抵当権の債権者(権利者)が金融機関であるからには、抵当権を抹消する権利を持っているのも「債権者(金融機関)」です。
つまり、委任状の正しい認識としては、「債権者(金融機関)から債務者(例えば、あなた)が抵当権を抹消する行為を委任された」となります。

が、金融機関からすれば「お金は返してもらったし、もうどうでもいい。」が本音です。
抵当権設定登記は、お金を貸す側にとって重要なことなので手取り足取りサポートがあります。
しかし、抵当権抹消登記は、基本的に「お金を返した人(例えば、あなた)にとって重要なこと」でしかないのです。
債務者側の受任者が変わる
委任者が債権者(金融機関)であることはわかりました。
問題は、受任者(委任を受ける人)です。
抵当権抹消登記の委任状で、ケースによって変わるのは「受任者」です。
受任者が、
- あなた
- 司法書士
- その他のだれか
というようにケースが多岐に分かれることになります。

つまり、「金融機関およびあなたが、司法書士などに抵当権抹消登記を委任した」ということになります。
よって、
- 委任者 = 金融機関・あなた
- 受任者 = 司法書士など
という形になります。
受任者=代理人
抵当権抹消登記の委任状においては、「受任者=代理人」と考えても差し支えありません。
あなたが自分で行うのであれば、あなたが受任者です。
あなたが司法書士に依頼するのであれば、司法書士が受任者(=代理人)です。
委任状の期限
抵当権抹消登記の委任状に期限の定めはありません。
委任状がしっかりと管理されている限り、永久に有効です。
委任状の関係者
委任状の関係者を整理します。
債権者(および委任者)
債権者(および委任者)は、基本的に、
- 金融機関
- 住宅金融支援公庫
- その他、お金を貸した人
などです。

債務者(および受任者)
債務者(および受任者)は、基本的に、
- あなた
- 妻(およびほかの家族)
- 司法書士
などです。

共有者がいる場合
通常、住宅ローンを組んだ場合、土地および建物に抵当権が設定されるのが普通です。
この時に、
- 土地 → あなた・父
- 建物 → あなた・妻
のように共有関係があったとします。
この場合、あなたが受任者となる委任状が1枚あれば抵当権抹消登記はできます。
また、
- 父が受任者の委任状が1枚
- 妻が受任者の委任状が1枚
の合計2枚でも抵当権抹消登記はできます。

委任状の書き方
委任状の書き方について、解説します。
委任状のひな形
委任状にひな形はありません。
委任状の発行者は、基本的に「金融機関(債権者)」なので、金融機関ごとに書式は変わります。
ほとんどの場合、
- 委任者
- 受任者
- 日付
だけが書かれた紙を受け取ります。
委任者のところだけ、金融機関の情報が記載されていて、あとは基本的に白紙です。

何かこだわりがある場合には、完済日以降であれば、どの日付でも大丈夫です。
委任状に使う印鑑
委任状に使う印鑑は「認印」で問題ありません。
実印は必要ありませんし、使わないようにしてください。

はっきりいって危険ですのでやめましょう。
世の中にはよからぬことを考える人が思ったよりたくさんいます。
印鑑なんて乾けば再利用もできないと考えるかもしれませんが、それを何とかかんとかしてしまう者もいるのです。
不用意に実印を使うことは絶対にやめましょう。
受任者(および代理人)の情報
受任者の欄には、
- 受任者の氏名
- 受任者の住所
を記載します。
受任者ごとのケース
受任者ごとのケースを整理します。
妻に依頼する場合
あなたが妻に依頼する場合には、原則として、妻が受任者になります。
ただし、「法務局の窓口に行って書類を提出してもらうだけ」の場合には、妻の情報を受任者欄に特別に記載する必要はありません。

絶対とは言いませんが、確認する意味もありません。
難しく考えずに、あなたの情報を受任者に記載するだけで十分です。
司法書士に依頼する場合
あなたが司法書士に依頼する場合には、原則として、司法書士が受任者になります。
先にも書きましたが、
- 委任者 = 金融機関・あなた
- 受任者 = 司法書士
です。

紛失してしまった場合の対応
抵当権抹消登記の委任状を紛失してしまった場合には、金融機関に再発行の申請をしてください。
抵当権抹消登記関連の書類では、「登記識別情報もしくは登記済証」以外の書類は、すべて再発行が可能です。
金融機関の印鑑証明などが必要になることもあるので、早めに連絡して対応しましょう。
抵当権抹消登記に関するより詳しいことは、以下のリンクを参考にしてください。
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抵当権抹消登記とは:手続き、必要書類、費用と相場、申請書作成方法
住宅ローンが完済すると抵当権抹消登記をすることになるのが一般的です。抵当権抹消登記とは、抵当権を消す登記です。その性質上、抵当権を設定した金融機関などから許可がなければ、抵当権抹消登記を行うことはできません。
抵当権抹消登記が行えるということは、融資を完済しているので差し押さえなどのリスクは通常考えられません。なので、別にしなくてもいいのではないのか?と思う方もいるでしょう。ですが、相続や急な売却になったときに困るのが常です。
今回は、抵当権抹消登記がどういうものなのかということや、費用など知っておくべき内容を抑えつつ、注意点も説明します。これを読めば、抵当権抹消登記についてはバッチリです。