建物の建築を考えて土地を探すときには、容積率について知っておく必要があります。容積率を考えずに土地を買ってしまうと、本当に建てたかったものが建てることができないということにもなりかねません。詳細な建築プランを作るときには問題ありませんが、土地探しの段階であれば容積率からアバウトなプランを描くことができます。
容積率の制限からオーバーしてしまうと、建築の許可は下りません。どれだけ建てたいものがあっても、調べ方を間違えていては本末転倒になってしまいます。他にも、容積率は、前面道路幅員や地下についても注意が必要です。
今回は、容積率について基本的なことを説明します。とくに難しいものではないので、一通り読んでおさえてしまいましょう。後半ではプラスアルファの知識も解説します。
【この記事からわかること】
- 容積率とは
- 容積率の調べ方
- 容積率の制限
- 容積率と前面道路幅員
- 容積率オーバーの物件
- 容積率と地下
容積率(ようせきりつ)とは
容積率は、敷地の面積に対する建物の床面積の割合になります。建物も1階建てや2階建て、3階建てといろいろなタイプのものがありますが、各階の床面積の合計が必要になってきます。
容積率は住まいの大きさを左右するものになります。容積率にも限度というものがありますので、この限度を守っていく必要があります。容積率の限度は敷地のある環境によって異なってきますので、少々面倒な部分は出てきますがゆっくりと理解しておきましょう。
都市計画によって決められた指定容積率と前面道路による容積率のふたつがあるのですが、これらのうち厳しいほうの数値が容積率の限度ということになります。指定容積率に関しては、各行政庁の都市計画課などで調べることができます。50パーセントから1300パーセントの間で決められています。
前面道路による容積率に関してですが、これは敷地に面する道路の幅が12メートル未満である場合に適用されるものです。ただ、道路の中には当然12メートル以上の幅のものも存在します。そういった場合には、指定容積率がそのまま適用されるようになります。
容積率の上限というのは、その地域がきちんと機能するように、その機能が維持できるように決められているものになります。
容積率の調べ方
容積率の調べ方ですが、ZENRIN(ゼンリン)や刊広社が出版している住宅地図があるなら、それを使いましょう。
カプセルのような丸い印の上の数字が容積率です。上の画像では、700と書いてあります。これは700%という意味で、敷地面積の700%(7倍)までの床面積の建物を建ててもよいということです。
地図がない場合は、市町村役場の都市計画課か建築指導課に電話をしましょう。電話をするときには、対象の土地の住所をメモしてからにします。基本的に電話口で教えてもらえるでしょう。
ただし、その場所が用途地域の境目に位置しているようなケースでは、電話での確認が難しく、直接来てくださいと言われることがあります。行政の立場で言えば、適当なことを言ったな!と怒られても困るので、曖昧な時には断固として教えてくれません。
このときに足を運ぶのが面倒であれば、一度各市町村のホームページを見てみましょう。容積率や用途地域がわかる電子地図が用意されている自治体もあります。「市町村名 容積率 マップ」などで調べると出てくることがあります。
容積率の制限
下に記載する表は、各用途地域における容積率の最高限度です。このうち、どれが適応されることになるのかは、各自治体の都市計画課に確認する必要があります。
地域・区域 | 容積率 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 |
50% 60% 80% 100% 150% 200% |
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域 第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 近隣商業地域 準工業地域 |
100% 150% 200% 300% 400% 500% |
商業地域 | 200% 300% 400% 500% 600% 700% 800% 900% 1000% 1100% 1200% 1300% |
工業地域
工業専用地域 |
100% 150% 200% 300% 400% |
高層住居誘導地区 | 都市計画で定めた数値の1.5倍以下で、当該地区について都市計画で定める割合 |
用途地域の指定のない区域 | 50% 80% 100% 200% 300% 400% |
容積率の上限は、これらの数字の中から各自治体の都市計画課によって決定されます。正しい容積率を知るときには、かならず確認するようにしましょう。
容積率と前面道路幅員
都市計画課で、そこの容積率は○○%までと定められていますと言われました。さて、これで安心!と思ったら大間違いです。その土地の前面道路幅員を調べてください。
まず前面道路幅員の調べ方ですが、市が管轄している道であれば、市の監理課(もしくは道路課)に直接訪問します。県が管轄している道であれば、県の土木課(もしくは土木事務所)に直接訪問します。道路幅員については、高確率で電話では教えてくれません。
道路幅員と容積率の関係についてですが、前面道路の幅員が12m未満であるときには注意してください。この時には、「前面道路幅員によって定められる容積率」と「都市計画によって定められる容積率」の小さいほうが適用されます。以下が計算方法です。
[aside type="normal"]前面道路幅員による容積率制限の計算式
道路幅員(m) × 法廷乗数[/aside]
法廷乗数は、用途地域に応じて以下の表を参考にしてください。
地域・区域 | 法廷乗数 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 |
40% |
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域 第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 |
40%(行政が指定している地域では、60%) |
その他 | 60%(行政が指定している地域では、40% or 80%) |
これらを用いて計算した結果、都市計画で定められている容積率より小さい数字が出れば、その数字が正しい容積率になります。都市計画で定められている容積率が200%のときに、前面道路幅員による容積率が160%であれば、160%が適用されます。
容積率オーバーの物件
稀に容積率をオーバーしている物件が、中古住宅市場に売りに出されます。このような物件がなぜ出てくるのか?についてです。
基本的に容積率オーバーの物件が建築されることは、新築時ではありえません。建物を新築するときには、自治体から建築確認を受けることになるので、違法建築物は許可が下りないようになっています。しかし、これは新築時のみの話です。
新築時には、容積率の要件を満たしていた建物であっても、時間の経過によって容積率が改訂されオーバーすることになったということがひとつあります。不可抗力ですので、所有者には責任はありません。ですが、既存不適格建築物には違いないという点で注意が必要です。
もうひとつは、リフォームを行ったことで容積率をオーバーしてしまうケースです。リフォーム業者が適当であったり、自分で改築などを行ったしまった場合に、結果として容積率をオーバーしたという事態になったりします。特に気を付けたいのは、ベランダをリフォームしてサンルームにしたというときです。
ベランダは、容積率の床面積に含まれません。しかし、これをサンルームにしてしまうと床面積に含まれるようになってしまいます。固定資産税を減らすテクニックにも繋がるのですが、素人には気付きにくい部分です。
このような容積率オーバーしている物件はなにが問題なのでしょうか?答えは、融資を受けにくいということです。過程がどうあれ、違法建築物です。そのようなものを担保として受け入れてくれることは、ほぼありません。
また違法建築物ですから、何らかの事情で行政指導を受けて修復しなければいけないことになるケースも考えられます。その時の費用は、もちろんあなたが持つことになります。購入を検討している方は、十分に注意しましょう。
容積率と地下
建物を建築するときに、地下室はどうなるのでしょうか?答えは、一定の上限まで容積率の緩和を受けることができます。ただし、条件を満たしていればです。以下が条件です。
[aside type="normal"]地下室の容積率緩和条件
- 地階であること
- 地盤面(地表)から地階の天井が1m以下の距離であること
- 住居として使用されること[/aside]
以上の条件を満たす地下室では、容積率の緩和が適用されます。緩和されるのは、住宅の延べ床面積の1/3までです。延べ床面積の1/3より地下室が小さければ、すべて除外され、大きければ1/3までの分が除外されます。
例えば、地上1階・2階と地下1階をもつ建物があったとします。このとき、各階の床面積がすべて同じであった場合、地下室はすべて容積率算定床面積から除外されます。
まとめ
容積率は、敷地の面積に対する建物の床面積の割合です。建物を建築するときは、指定された容積率におさまるように建築しなければいけません。指定容積率と前面道路幅員による容積率に注意しましょう。
容積率を調べるときは、住宅地図を活用するのがもっともはやいです。手元にない場合は、市町村の都市計画課か建築指導課に電話をしましょう。用途地域の境い目にあるときは、直接訪問するのが無難です。
容積率は、行政が指定している制限と、前面道路幅員による制限があります。どちらか小さいほうが適用されるので、両方とも調べる必要があります。道路幅員は電話では教えてもらえないことが多いので、直接管轄の役所に訪問しましょう。
容積率オーバーしている物件が中古住宅市場で出回ることがあります。このような物件は、既存不適格建築物であり、違法物件です。融資が受けられないことが多いので、購入するときには十分に注意しましょう。
地下室については、一定の条件を満たしていれば容積率の緩和が受けられます。地下室すべてが除外されることもあるので、しっかりと調べて建築プランに反映しましょう。