この記事では「宅建業法:宅地建物取引士の意義・専任取引士の設置・法定事務」について解説しています。
宅建試験合格後、宅地建物取引士の登録をする方がほとんどだと思います。
宅地建物取引士になった後に、宅地建物取引士がどのようなことをするのかについて学習します。
出題頻度はそれなりに高いところなので、意識的におさえるようにしてください。
「専任取引士の設置」と「法廷事務」は出題頻度も高く、若干複雑なので正確な理解を心がけてください。
宅地建物取引士の意義
宅地建物取引士(以下、宅建士とする)とは何か?について解説することは、特にありません。ひとつだけあるとすれば、宅地建物取引士証の交付を受けて、初めて宅建士を名乗れます。宅建に合格しただけでは、宅建士にはなれません。
宅建士として事務を行うまでには、
- 宅地建物取引士試験合格
- 都道府県知事への登録
- 取引士証の交付
というステップがあります。
専任の取引士の設置
宅建業を営む者には、事務所(本店、支店)ごと又は一定の案内所ごとに、法定数の専任の取引士を設置する義務があります。
法定数とは、法律で定められた数です。
専任の取引士とは、取引士として働く人の中でも、ある事務所に専属している取引士です。
事務所(本店、支店)ごと | 業務に従事する者5人に1人以上の割合 |
一定の案内所ごと | 少なくとも1人以上 |
専任の取引士を設置する数は、上の表のように定められています。例えば、社員16人の宅建業者であれば、専任の取引士を4人以上設置しなければいけません。専任の取引士1人ごとに社員5人までしか監督できないと考えてください。
専任の取引士が法定数に不足した場合には、宅建業者は、2週間以内に新たに専任の取引士を補充して、是正後30日以内にその旨の変更届を提出しなければいけません。是正措置をとらなかったときには、業務停止処分・100万円以下の罰金に処せられます。例えば、社員16人の会社に設置していた4人の専任の取引士のうち、1人が辞めてしまったときに是正措置をとる必要があります。
専任の取引士の設置が義務付けられる案内所等
一定の案内所とは、売買契約等を行う案内所と覚えておいてください。
厳密には、売買契約等を行う案内所の中でも、
- 継続的に業務を行うことができる施設のある場所で事務所以外のもの
- 宅建業者が「一団(宅地10区画以上・建物10戸以上)の宅地建物の分譲」を案内所を設置して行う場合、その案内所
- 他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理・媒介を、案内所を設置して行う場合、その案内所
- 宅建業者が業務に関して展示会等の催しを実施する場合、その催しを実施する場所
と決められていますが、覚えるだけ無駄です。
売買契約等を行う案内所のみ、1人以上の専任の取引士を設置する義務があるとだけ覚えておいてください。問題文でややこしい表現が出てきたら、売買契約等を行う案内所かどうかで正誤を判断します。
専任の取引士について
専任の取引士の要件として、
- 常勤(常時勤務できる状態)であること
- 成年者(年齢20歳未満でも婚約した者を含む)であること
があります。
専任とある以上、当然、アルバイトや非常勤等は専任扱いできません。未成年者は、取引士になることはできますが、専任の取引士になることはできないことに注意してください。
ただし、未成年者でも1つだけ例外があります。
基本的に未成年者は宅建業を営むことができません。しかし、保護者から一定の権限を認められ、成年者と同一の行為能力を有する未成年者であれば、宅建業を営むことができます。
成年者と同一の行為能力を有する未成年者で、
- 自らが宅建業者
- 自らが法人の役員
である場合には、専任の取引士になることができます。
専任の取引士の設置
宅建業を営む者は、事務所ごとに
- 常勤(常時勤務できる状態)
- 成年者(年齢20歳未満でも婚約した者を含む)
の条件を満たす専任の取引士を業務に従事する者5人に1人以上の割合で設置する義務があります。
専任の取引士が法定数に不足した場合には、宅建業者は、2週間以内に新たに専任の取引士を補充して、是正後30日以内にその旨の変更届を提出しなければいけません。是正措置をとらなかったときには、業務停止処分・100万円以下の罰金に処せられます。
ただし、未成年者であっても、成年者と同一の行為能力を有する未成年者で、
- 自らが宅建業者
- 自らが法人の役員
である場合には、専任の取引士になることができる。
※一定の営業所等には、1人以上設置する。
宅地建物取引士の業務処理の原則等
宅地建物取引士(以下、宅建士とする)の業務処理の原則等とは、宅建士が業務に従事するうえで守るべき信条(公正誠実義務)について述べたものです。
平成26年の改正法により追加された条文で、比較的新しいことに加えて、宅建士として重要な職業倫理規定に関することなので、出題傾向は高めです。
宅建業法第15条:宅地建物取引士の業務処理の原則(公正誠実義務)
宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。
宅建業法第15条の2:信用失墜行為の禁止
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
宅建業法第15条の3:知識及び能力の維持向上
宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。
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取引士の法定事務
宅地建物取引士(以下、宅建士とする)には、
- 重要事項の説明
※説明を行うときには、取引士証の提示義務がある - 重要事項説明書(35条書面)への記名押印
- 契約成立後に交付すべき書面(37条書面)への記名押印
という法定事務が定められています。
法定事務とは、法により付与されている一定の者にだけ行うことが認められている事務をいいます。なので、上記3つの事務は、宅建士しか行うことは許されません。