本記事では、
- なぜ道路幅員が4m未満だと再建築不可になる可能性があるのか?
- 道路幅員が足りないことによって再建築不可物件になっているのか確認する方法
- 道路幅員が足りないことによって再建築不可物件になっている場合の解決方法
について解説しています。
前面道路幅員が足りないことによって再建築不可に陥っている場合、解決が困難なケースもありますが、簡単に解決できることが多いです。
解決に向けて、諦めずに一歩ずつ進めていきましょう。
なぜ道路幅員が4m未満だと再建築不可になる可能性があるのか?
建物を建てるときには、建築基準法に定められた接道義務を満たす必要があります。
接道義務では、
- 敷地が建築基準法上の道路に接していること
- 敷地が接している建築基準法上の道路の幅員が4m以上あること
- 建築基準法上の道路に敷地が接している距離(いわゆる、間口)が2m以上あること
を求められますが、道路幅員が4m未満であった場合、
- 敷地が接している建築基準法上の道路の幅員が4m以上あること
を満たすことができないので、再建築不可物件になる可能性があります。
緊急時に救助車両などの通行が妨げられないようにすることで、国民の安全を守ることが接道義務の目的です。
一般的な車の幅は2m前後ですが、道路幅員が4m未満であった場合、すれ違いなどが著しく困難になります。
安全上の都合により前面道路の幅員が4m未満の場合には、再建築不可になる可能性が出てきます。
ただし、前面道路幅員が4m未満であった場合に、すべてが再建築不可になるわけではなく、救済措置も用意されています。
道路幅員が足りないことによって再建築不可物件になっているのか確認する方法
道路幅員が足りないことによって再建築不可になっているのか確認するには、管轄の特定行政庁にある建築指導課(または類する課)に問い合わせてください。
確認する内容は、
- 前面道路が建築基準法上の道路として認定されているか?
- 道路台帳などに記載されている前面道路が幅員が4m以上あるか?
です。
確認するときには、
登記事項証明書 または登記事項要約書 |
法務局 または登記情報提供サービス |
公図 | 法務局 または登記情報提供サービス |
住宅地図 | 図書館など ※ 特定行政庁(役所)にも備え付けられている |
建物図面 | 法務局 または登記情報提供サービス |
地積測量図 | 法務局 または登記情報提供サービス |
などを用意して、直接足を運び、再建築可能か教えてほしいと聞くだけで大丈夫です。
詳細は後述しますが、
- 前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合:比較的簡単に解決できる
- 前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けていない場合:解決が困難なケースがある
となります。
道路幅員が足りないことによって再建築不可物件になっている場合の解決方法
道路幅員が足りないことによって再建築不可物件になっている場合の解決方法を、
- 前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合
- 前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けていない場合
に分けて解説します。
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合、セットバックを行うことで再建築不可の状態を解消できます。
セットバックとは、道路幅員を4m以上確保するために、道路中心線から2mまで敷地を後退させることです。
例えば、道路両脇の敷地が、
- 道路中心線から敷地までの距離が1m
- 敷地の接道距離(間口)が10m
であった場合、お互いに敷地を1m下げることで、道路中心線からの距離を2m確保できるので、
- 1m × 10m = 10㎡(およそ3坪)
を犠牲にすることで、前面道路幅員4m以上を確保することができます。
セットバックで道路として提供した敷地は、車両の通行を妨げてはいけないので、原則として何も設置することはできません。
自分の敷地で所有権があるにも関わらず、使用制限を受けることに抵抗を覚える方もいると思います。
しかし、
- 再建築不可ではなくなる
- 前面道路が広くなり使いやすくなる
など得られるメリット(利便性や地価向上)を考えれば十分にリターンを得ることができます。
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けていない場合
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けていない場合には、
- 建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)として認定を受ける方法
- 建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)として認定を受ける方法
- 隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入する方法
- 隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を借りる方法(建築確認申請上)
のいずれかによって再建築不可状態の解消を目指します。
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合は、セットバックをするかしないかなので、話は簡単でした。
しかし、前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けていない場合、他人からも理解や協力を得る必要があり、解決が困難になるケースが増えます。
建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)として認定を受ける方法
建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)として認定を受ける方法について解説します。
整備された状況に至るまでには時間を要しますが、状況次第では、あまり費用をかけずに取り組めるので、個人が実行できる可能性のある解決方法です。
将来にわたって建築基準法上の道路として取り扱われるため、今後のことも安心ができます。
みなし道路または2項道路とは?
建築基準法 第42条2項の規定に合致し、認められた道路を、
- みなし道路
- 2項道路
と言います。
※ 呼び方がが違いますが、同じ道路を指しています。
建築基準法は昭和25年11月23日に施行されましたが、建築基準法施行当時、すでに市街地になっていたところ(既成市街地)がたくさんありました。
規制市街地化していたところでは、道路幅員が建築基準法上の道路に求められる4mに満たない細い道路がたくさんあり、すぐに是正することはできません。
一定の条件のもと、建築基準法上の道路として認めるのが「建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)になります。
日本の道路のおよそ3割を占めると言われます。
すべてを再建築不可にした場合、大きな混乱を招くので、救済措置として用意されました。
みなし道路または2項道路の新設に求められる要件
地域により差異がありますが、みなし道路または2項道路の新設に求められる要件は、
- 道路幅員が1.8m以上あること(車両の通行性)
- 建築基準法施行(昭和25年)以前から存在し、すでに建物が建ち並んでいたこと
などです。
新しい道路やあぜ道のような整備が不十分な道路は認められません。
みなし道路または2項道路として認定を受けるまでの流れ
みなし道路または2項道路として認定を受けるまでの流れは、
- 事前相談
申請内容について、事前に特定行政庁とすり合わせを行います。 - 協議
申請内容について関係権利者と協議し、申請用の正確な内容を仕上げます。 - 申請
申請書など必要書類を整えて、特定行政庁に申請します。 - 現場確認
特定行政庁の担当者が申請内容と現場を照らし合わせて、問題がないか確認します。 - 指定・告示
みなし道路または2項道路として指定を受け、公に告示されます。
です。
ほとんどの場合、セットバックが関係します。
事前相談の段階で、関係権利者(道沿いの他の家の方々)に内容をしっかりと説明しておいてもよいかもしれません。
道路を拡幅するために敷地面積を犠牲にすることが多いので、利害が一致しないトラブルが想定されます。
参考
みなし道路または2項道路による解決の問題点
みなし道路または2項道路よる解決の問題点は、
- セットバックを行わなければいけない可能性があること
- 関係権利者が多くなりがちで、権利者間の意見調整に時間を要すること
です。
今すぐ行わなければいけないわけではないですが、将来的に可能なタイミングでセットバックしなければいけないことが確定します。
セットバックがとても厄介で、
- 角地など、ほかの道路で接道義務を満たしている方
- 敷地にゆとりがあり、前面道路の細さに不便を感じていない方
から理解を得ることが難しい傾向にあります。
用語補足「セットバック」
セットバックとは、道路幅員を4m以上確保するために、道路中心線から2mまで敷地を後退させることです。
例えば、道路両脇の敷地が、
- 道路中心線から敷地までの距離が1m
- 敷地の接道距離(間口)が10m
であった場合、お互いに敷地を1m下げることで、道路中心線からの距離を2m確保できるので、
- 1m × 10m = 10㎡(およそ3坪)
を犠牲にすることで、前面道路幅員4m以上を確保することができます。
建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)として認定を受ける方法
建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)として認定を受ける方法について解説します。
最も負担が少なく、個人でも簡単にできる解決方法です。
ただし、暫定的な処置であり、現況から道路状況が改善されることはありません。
建築基準法上の道路として将来にわたって認められるわけではなく、一時的な認可になる点には注意してください。
43条但し書きの道路とは?
特定の建築計画において、特別に接道義務を満たせる道路として許可を得た道路が「43条但し書きの道路」です。
大前提として、43条但し書きの道路は「建築基準法上の道路」ではありません。
特定の建築計画に限り「建築基準法上の道路に準ずる道路として活用してもいいですよ。」と認められた道路です。
43条但し書きの道路の新設に求められる要件
43条但し書きの道路の新設に求められる要件は、
- 敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地があること
- 敷地が農道その他これに類する公共の用に供する道に2m以上接していること
- 敷地が建築物の用途・規模・位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する道路に有効に接していること
です。
建築基準法上の道路に求められるように、緊急時の安全が確保されているかが重要になります。
43条但し書きの道路として認定を受けるまでの流れ
43条但し書きの道路として認定を受けるまでの流れは、
- 事前相談
申請内容について、事前に特定行政庁とすり合わせを行います。 - 申請
必要書類を整えて、特定行政庁に申請します。 - 審査
内容に応じて建築審査会の審査を受け、問題がないか確認を受けます。 - 認定
42条但し書きの道路として認定を受けます。
です。
事前相談や協議段階で、認定を得られるか概ね教えてもらえます。
問題がなさそうであれば、書類を整えて申請する流れです。
43条但し書きの道路による解決の問題点
43条但し書きの道路よる解決の問題点は、あくまでも一時的な認定であり、将来にわたって認められていないことです。
特定の建築計画について許可を得ただけなので、
- 新たに建物を建てるとき
- 既存の建物を増築するとき
※ 場合によっては改築も含む
には、改めて認定を受けなければいけません。
将来、同じように認定を受けられるとは限らず、周辺環境の変化により認定が受けられなくなることもあり得ます。
43条但し書きの道路を安心材料として不動産取引を行う場合、十分にリスクに注意してください。
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入する
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入することで、未接道を解消することができます。
当然ですが、
- 未接道の敷地
- 購入する敷地
は、繋がっている必要があります。
ですので、隣地所有者から購入する以外に選択肢はありません。
そのため、
- どの隣地所有者も譲ることができる余裕のある敷地がない
- 敷地に余裕はあるが、敷地を譲ることで、隣地所有者に不都合がある(既存不適格建築物など)
といった問題も起こり得ますし、
- そもそも売りたくないと断られる
- お願いをする立場なので、足元を見られて高値を提示される
といったことも起こります。
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な建築確認申請上の敷地を借りる
建物を建てるときには、建築確認申請を特定行政庁に提出し、許可を受けなければいけません。
建築確認申請では、
- 建物の敷地
- 建物の配置
などを申請書に記載しますが、建物の敷地は、申請者と所有者が一致していなくても問題がありません。
そのため、接道義務を満たすために必要な敷地だけを隣地所有者から建築確認申請上だけ借りることができれば建築可能になります。
ただし、敷地を貸してしまった場合、新築した建物が取り壊されない限り、貸した敷地は確認申請上の敷地として活用できなくなります。
ですので、貸した敷地の所有権は隣地所有者にあるにもかかわらず、
- 緊急車両の侵入を妨げないために、隣地所有者は敷地利用の幅をかなり制限される
- 隣接地所有者が増築する時に、貸した敷地は自己の敷地として申請を出せなくなる
などの弊害が生まれてしまうので、隣地所有者から協力を得ることが難しい傾向にあります。
再建築不可について