本記事では、
- なぜ再建築不可物件で火災が起きた場合、全焼および延焼のリスクが高いのか?
- 再建築不可物件が火災の被害にあった場合に、再建築行為は認められないのか?
- 再建築不可物件でも火災保険に加入することはできるのか?また加入できた場合の補償範囲は?
について解説しています。
後述していますが、日本には失火責任法という法律があり「火災は天災だ」と考えられます。
天災である以上、万が一の際の備えは自分でしなければ誰も守ってくれません。
起きてしまった後では後悔しかできませんので、しっかりと考えてみてください。
なぜ再建築不可物件で火災が起きた場合、全焼および延焼のリスクが高いのか?
再建築不可物件は、再建築不可に陥る諸条件を考えると、相応の築年数が経過した古い木造建物が多く存在します。
また、再建築不可の主な原因は接道義務を満たせていないことが挙げられますが、
- 敷地が建築基準法上の道路に接していること
- 敷地が接している建築基準法上の道路の幅員が4m以上あること
- 建築基準法上の道路に敷地が接している距離(いわゆる、間口)が2m以上あること
上記を満たしていない場合、緊急車両の侵入が困難なため、消火活動が遅くなりがちです。
そのため、火が出た場合、
- 全焼まで発展する可能性がかなり高い
- 延焼により近隣住宅に飛び火する可能性が高い
といったリスクも孕んでいます。
ご自身への被害だけでも甚大なものになりますが、第三者への被害に対して補填の必要が出てくる可能性があります。
簡単に考えていると、想像を超える負担を負いかねないので注意してください。
失火責任法による間接被害にも注意が必要
失火責任法は民法に規定される法律で、
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
と定められています。
要は「火災は天災」との考えに基づいて、火の備えは自分で行いなさいと書いています。
そのため、近くで火が出た結果、延焼により自分の家だけが燃えても、火の備えをしなかった者が悪いとなってしまいます。
(※ 火を出した方に重大な過失が認められる場合は別です。)
先述した通り、再建築不可物件は全焼リスクがかなり高いため、他の家は半焼で済んだにもかかわらず、再建築不可物件のみ全焼したということもありえます。
その場合の責任も基本的には問うことができず、自身で供えなかったあなたが悪いとなってしまうということです。
参考
再建築不可物件が火災の被害にあったとしても、原則として建築行為は認められない
再建築不可物件が火災の被害にあったとしても、「火事にあってかわいそうだから」といった理由で建築が認められることはありません。
再建築不可に陥っている原因が解消されない限りは、再建築不可のままです。
全焼してしまった場合、
- 再建築不可に陥っている原因を解消する
- 新たに土地を探して購入する
などをしない限り、次に住む場所を確保することができません。
相当な負担となりますので、リスクには重々注意して備えてください。
建築確認申請が不要な範囲(リフォームなど)は例外
再建築不可物件が火災の被害にあったとしても、半焼など軽微な被害にとどまった場合は、建築確認申請が不要な行為(リフォームなど)での回復は認められます。
あくまでも建築行為ができないだけなので、建築確認申請不要な行為はすべて大丈夫です。
一定規模以上の増築は建築確認申請が必要になりますので、基本構造を触らず、面積などに増減がなければ大丈夫な可能性が高いです。
違反行為にならないように注意して進めてください。
再建築不可物件こそ、火災保険(および地震保険)にはしっかり加入すべき
記載の通り、再建築不可物件は火災のリスクが非常に高いです。
そのため、再建築不可物件こそ、火災保険(および地震保険)にはしっかり加入すべきだと言えます。
もしものときに、火災保険から保険金が受け取れるのと受け取れないのとでは、その後の選択肢に大きな影響があります。
加入は難しいことではなく、火災保険料の負担も事が起きてしまったときに比べれば軽微な額です。
真剣に検討をしてみてください。
そもそも火災保険(および地震保険)に加入できるのか?できないケースは?
再建築不可物件であっても、火災保険(および地震保険)に加入できます。
再建築不可が理由で火災保険の加入を断れれることは考えにくく、築年数が50年以内であれば、基本的に問題ありません。
築年数が50年前後になってくると、火災保険会社側から加入を断られることがあります。
老朽化に伴い、災害リスクが許容できる範囲を超えているためです。
癌の診断を受けた方が、直後にガン保険に加入するのが難しいのと同じです。
火災保険の主な補償範囲
火災保険では、
- 火災、落雷、破裂、爆発
- 風災、雹災、雪災
- 水濡れ
- 盗難破損
- 汚損
について、免責金額を超える被害が発生した場合には、保険適用が認められます。
(※ 火災保険に付随するオプションや保険会社により扱いが異なる点には注意してください。)
延焼(近隣からの貰い火)によって被害が発生した場合も補償の対象です。
火災保険は災害全般に対する備えができ、広くリスクヘッジが行えます。
注意ポイント
火災保険の補償内容は、保険会社や付随するオプションによって異なりますので、必ず詳細を確認してから契約しましょう。
火災・落雷・破裂・爆発
火災保険のメインになる補償項目で、
- 火災(消防活動による水ぬれを含む)
- 落雷
- 破裂・爆発
による被害に対して火災保険が適用されます。
保険対象からの出火はもちろん、延焼(貰い火)による被害についても補償対象になります。
風災・雹災・雪災
異常気象による被害が増えているかと思いますが、
- 台風
- 旋風
- 竜巻
- 暴風等
- 雹災
- 豪雪、雪崩等の雪災
による被害に対して火災保険が適用されます。
強い風により物が飛んできた場合などに適用されます。
水災
日本各地で「線状降水帯の発生により〜」といったニュースを耳にする事が増えましたが、
- 台風
- 暴風雨
- 豪雨
によって
- 洪水
- 融雪洪水
- 高潮
- 土砂崩れ
- 落石
が発生し、
- 床上浸水
- 地盤面より45cmを超える浸水
の被害があった場合に火災保険が適用されます。
異常気象により局地的な大雨が多発しています。
一昔前であれば、ハザードマップが白いから大丈夫と思えたような場所であっても、局地的な大雨はいつどこに降るかわからないので安心ができません。
水濡れ
設備不良による被害ですが、
- 給排水設備の破損もしくは詰まりにより発生した漏水
- 放水等または他人の戸室で発生した漏水
- 放水等による水ぬれ
の被害に対して火災保険が適用されます。
戸建では起こり得ないですが、マンションの場合には上階の給排水菅から漏水して雨漏りが発生するケースがあります。
また、消火活動の一環として大量の放水が行われますが、その放水により建物に被害があった場合などです。
盗難
治安の悪い事件が目立ちますが、
- 強盗
- 窃盗
による被害に対して火災保険が適用されます。
家財保険をつけている場合は別ですが、火災保険で補償しているのは建物への被害のみです。
破損・汚損
不測かつ突発的な事故をいい、
- 引越し時に家具をぶつけてしまい、壁に穴があいたとき
- 自動車が突っ込んできて、家が壊れたとき
などの被害に対して火災保険が適用されます。
破損・汚損は意外と広い範囲で適用されるので、入っておいて損のない補償範囲だと思います。
家財がついていると、より一層安心できますので、じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。
火災保険が適用されない範囲
火災保険は範囲が広いですが、
- 地震によって発生した火災による被害
- 保険契約者本人または親族などが故意に与えた被害
は、火災保険の適用から外れます。
地震が原因で受けた被害は「地震保険」を活用します。
また、わざと家に火をつけたなどの被害については、当然ながら火災保険が適用されません。
そもそも、犯罪です。
地震保険の主な補償範囲
地震保険では、
- 地震による火災
- 地震による建物の損壊
- 地震による津波
- 地震による家財の損壊(家財保険に加入している場合に限る)
について、
- 全損
建物の時価額の50%以上、または焼失もしくは流失した部分の延床面積の70%以上となった場合 - 大半損
建物の時価額の40%以上50%未満、または焼失もしくは流失した部分の延床面積の50%以上70%未満となった場合 - 小半損
建物の時価額の20%以上40%未満、または焼失もしくは流失した部分の延床面積の20%以上50%未満となった場合 - 一部損
建物の時価額の3%以上20%未満、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、建物の損害が全損、大半損、小半損に至らない場合
などの被害規模に応じて地震保険が適用されます。
いずれも時価額を限度として、
- 全損:地震保険金額の100%
- 大半損:地震保険金額の60%
- 小半損:地震保険金額の30%
- 一部損:地震保険金額の5%
となります。
注意ポイント
地震保険は、国と民間の保険会社が共同で運営しているため、原則として、すべての保険会社で内容が共通しています。
地震保険が適用されない範囲
地震保険では、
- 紛失や盗難による被害
- 建物に付随する工作物(門や塀など)
- 地震発生から10日以上経過したのちに発生した被害
は、地震保険の適用から外れます。
基本的に、地震保険の内容は各社一緒になりますが、若干の違いは存在します。
自動車や貴重品などは家財をセットにしていても範囲から外れるケースなど種々存在しますので、しっかりと内容を確認しておきましょう。
再建築不可について