本記事では、
- 建築可能にする裏ワザ・抜け道を使う前に確認すべきこと
- 前面道路が建築基準法上の道路だった場合の裏ワザ・抜け道
- 前面道路が建築基準法上の道路ではなかった場合の裏ワザ・抜け道
- 未接道または接道距離(間口)が2m以下の場合の裏ワザ・抜け道
- 都市計画法上の建築制限を受けている場合の裏ワザ・抜け道
について、事前確認を含めて、ケースごとの裏ワザ・抜け道を紹介しています。
再建築不可の解消については、不可能なケースは多いです。
しかし、ちょっとした対策を講じることで再建築可能になることもありますので、頑張ってみてください。
参考
再建築不可の基本は、以下の記事を参考にしてください。
建築可能にする裏ワザ・抜け道を使う前に確認すべきこと
再建築不可を建築可能にする裏ワザ・抜け道を使う前に、
- 前面道路の幅員は4m以上あるのか?
- 接道部分(間口)は2m以上あるのか?
- 都市計画法上の制限を受けていないのか?
- 前面道路は建築基準法上の道路として認定されているのか?
を確認してください。
確認の際には、
必要書類 | 必須かどうか | 入手場所 | 目的 |
---|---|---|---|
登記事項証明書 または登記事項要約書 |
必須 | 法務局 または登記情報提供サービス |
物件概要の説明 建築概要書などの取得 |
公図 | 必須 | 法務局 または登記情報提供サービス |
物件概要の説明 |
住宅地図 | あるとなお良い | 図書館など ※ 特定行政庁(役所)にも備え付けられている |
物件所在地の説明 |
建物図面 | あるとなお良い | 法務局 または登記情報提供サービス |
物件詳細の説明 |
地積測量図 | あるとなお良い | 法務局 または登記情報提供サービス |
物件詳細の説明 |
を準備し、特定行政庁(役所)の
- 建築基準法について:建築指導課(または類する課)
- 都市計画法について:都市計画課(または類する課)
を訪ねてください。
何が理由で再建築不可に陥っているのかによって、
- 解決方法
- 解決難易度
が、まったく異なります。
適切な方法を選択しなければ、全く意味がないので注意してください。
前面道路が建築基準法上の道路だった場合の裏ワザ・抜け道
前面道路が建築基準法上の道路として認定を受けている場合、セットバックを行うことで再建築不可の状態を解消できます。
セットバックとは、道路幅員を4m以上確保するために、道路中心線から2mまで敷地を後退させることです。
例えば、道路両脇の敷地が、
- 道路中心線から敷地までの距離が1m
- 敷地の接道距離(間口)が10m
であった場合、お互いに敷地を1m下げることで、道路中心線からの距離を2m確保できるので、
- 1m × 10m = 10㎡(およそ3坪)
を犠牲にすることで、前面道路幅員4m以上を確保することができます。
もっとも簡単な解決方法です。
敷地面積を犠牲にしますが、さほど大きな面積にはならないことが多いです。
セットバックによって、
- 再建築不可が解消されること
- 前面道路が広くなり、使い勝手がよくなること
- 立地条件が良くなるので、土地の価値が上がること
などを考えれば、ほとんどの場合、メリットの方が大きいです。
前面道路が建築基準法上の道路ではなかった場合の裏ワザ・抜け道
前面道路が建築基準法上の道路ではなかった場合、
- 建築基準法 第42条1項5号の道路(いわゆる、位置指定道路)
- 建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)
- 建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)
の認定を受けることができれば、再建築不可が解消されます。
難易度としては、
- 建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)
- 建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)
- 建築基準法 第42条1項5号の道路(いわゆる、位置指定道路)
の順番に難しくなっていきますが、
- 建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)
は、根本的な解決ではないので注意が必要です。
建築基準法 第42条1項5号の道路(いわゆる、位置指定道路)として認定を受ける方法
建築基準法 第42条1項5号の道路(いわゆる、位置指定道路)として認定を受ける方法について解説します。
道路工事が完了すると、かなり整った状態になりますが、個人向きの解決方法ではありません。
大規模な宅地開発に長けたデベロッパー(不動産事業者)など、法人向きの解決方法です。
位置指定道路とは?
位置指定道路は、建築基準法 第42条1項5号に定められる基準を満たし、特定行政庁からその位置の指定を受けた道路です。
位置指定道路は、比較的規模の大きい宅地分譲などを行った際に設置されることが多いです。
計画的に設置される道路なので、ぱっと見は普通の道路変わらず、使いやすさも変わりません。
位置指定道路の新設に求められる要件
位置指定道路に求められる要件は、
- 通り抜けが可能であること
(行き止まりの場合には、全長35m以内であること) - 道路幅員が4.0m以上であること
- 排水設備が整備されていること
- 道路の両端に隅切りを設けていること
- 道路形態および道路境界が明確であること
などが挙げられます。
上記は基本原則ですので、具体的な判断は特定行政庁によって差異があります。
設置の際には、特定行政庁の担当者に細かく確認を行い、慎重に進めてください。
位置指定道路として認定を受けるまでの流れ
位置指定道路として認定を受けるまでの流れは、
- 事前相談
計画について、事前に特定行政庁と内容のすり合わせを行います。 - 協議
計画の詳細を関係権利者と協議し、土地測量などを含めて、申請用の正確な内容を仕上げます。 - 申請
申請書など必要書類を整えて、特定行政庁に申請を提出します。
※ 関係権利者全員の承諾書や印鑑証明書などが必要です。 - 工事着手
申請通りに工事を行います。 - 現場検査
申請通りに工事が完了したか確認を受けます。 - 指定・告示
位置指定道路として指定を受け、公に告示されます。
です。
事前相談の段階で、
- 特定行政庁
- 関係権利者
と計画内容をしっかりと擦り合わせておくことが最も重要です。
適切な事前相談を行わずに話を進めてしまうと、話が頓挫し、余計な費用と時間ばかり費やすことになります。
位置指定道路による解決の問題点
位置指定道路による解決の問題点は、
- 時間がかかる
- 費用がかかる
- 関係権利者の調整が難航しやすい
です。
位置指定道路として認定を受けるまでには、相応の時間がかかり、年単位の話になることも珍しくありません。
また、道路の開通は大規模な土木工事なので、数千万円規模の費用がかかることも当然あります。
加えて、道路に面する敷地が増えるほど、関係権利者も増えていくので、多方面から承諾を得るまでの調整が難航することも考えられます。
位置指定道路による解決方法は、個人が自力で行うことはほぼ不可能だと考えてください。
建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)として認定を受ける方法
建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)として認定を受ける方法について解説します。
整備された状況に至るまでには時間を要しますが、状況次第では、あまり費用をかけずに取り組めるので、個人が実行できる可能性のある解決方法です。
将来にわたって建築基準法上の道路として取り扱われるため、今後のことも安心ができます。
みなし道路または2項道路とは?
建築基準法 第42条2項の規定に合致し、認められた道路を、
- みなし道路
- 2項道路
と言います。
※ 呼び方がが違いますが、同じ道路を指しています。
建築基準法は昭和25年11月23日に施行されましたが、建築基準法施行当時、すでに市街地になっていたところ(既成市街地)がたくさんありました。
規制市街地化していたところでは、道路幅員が建築基準法上の道路に求められる4mに満たない細い道路がたくさんあり、すぐに是正することはできません。
一定の条件のもと、建築基準法上の道路として認めるのが「建築基準法 第42条2項の道路(いわゆる、みなし道路または2項道路)になります。
日本の道路のおよそ3割を占めると言われます。
すべてを再建築不可にした場合、大きな混乱を招くので、救済措置として用意されました。
みなし道路または2項道路の新設に求められる要件
地域により差異がありますが、みなし道路または2項道路の新設に求められる要件は、
- 道路幅員が1.8m以上あること(車両の通行性)
- 建築基準法施行(昭和25年)以前から存在し、すでに建物が建ち並んでいたこと
などです。
新しい道路やあぜ道のような整備が不十分な道路は認められません。
みなし道路または2項道路として認定を受けるまでの流れ
みなし道路または2項道路として認定を受けるまでの流れは、
- 事前相談
申請内容について、事前に特定行政庁とすり合わせを行います。 - 協議
申請内容について関係権利者と協議し、申請用の正確な内容を仕上げます。 - 申請
申請書など必要書類を整えて、特定行政庁に申請します。 - 現場確認
特定行政庁の担当者が申請内容と現場を照らし合わせて、問題がないか確認します。 - 指定・告示
みなし道路または2項道路として指定を受け、公に告示されます。
です。
ほとんどの場合、セットバックが関係します。
事前相談の段階で、関係権利者(道沿いの他の家の方々)に内容をしっかりと説明しておいてもよいかもしれません。
道路を拡幅するために敷地面積を犠牲にすることが多いので、利害が一致しないトラブルが想定されます。
参考
みなし道路または2項道路による解決の問題点
みなし道路または2項道路よる解決の問題点は、
- セットバックを行わなければいけない可能性があること
- 関係権利者が多くなりがちで、権利者間の意見調整に時間を要すること
です。
今すぐ行わなければいけないわけではないですが、将来的に可能なタイミングでセットバックしなければいけないことが確定します。
セットバックがとても厄介で、
- 角地など、ほかの道路で接道義務を満たしている方
- 敷地にゆとりがあり、前面道路の細さに不便を感じていない方
から理解を得ることが難しい傾向にあります。
用語補足「セットバック」
セットバックとは、道路幅員を4m以上確保するために、道路中心線から2mまで敷地を後退させることです。
例えば、道路両脇の敷地が、
- 道路中心線から敷地までの距離が1m
- 敷地の接道距離(間口)が10m
であった場合、お互いに敷地を1m下げることで、道路中心線からの距離を2m確保できるので、
- 1m × 10m = 10㎡(およそ3坪)
を犠牲にすることで、前面道路幅員4m以上を確保することができます。
建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)として認定を受ける方法
建築基準法 第43条2項2号の道路(いわゆる、43条但し書きの道路)として認定を受ける方法について解説します。
最も負担が少なく、個人でも簡単にできる解決方法です。
ただし、暫定的な処置であり、現況から道路状況が改善されることはありません。
建築基準法上の道路として将来にわたって認められるわけではなく、一時的な認可になる点には注意してください。
43条但し書きの道路とは?
特定の建築計画において、特別に接道義務を満たせる道路として許可を得た道路が「43条但し書きの道路」です。
大前提として、43条但し書きの道路は「建築基準法上の道路」ではありません。
特定の建築計画に限り「建築基準法上の道路に準ずる道路として活用してもいいですよ。」と認められた道路です。
43条但し書きの道路の新設に求められる要件
43条但し書きの道路の新設に求められる要件は、
- 敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地があること
- 敷地が農道その他これに類する公共の用に供する道に2m以上接していること
- 敷地が建築物の用途・規模・位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する道路に有効に接していること
です。
建築基準法上の道路に求められるように、緊急時の安全が確保されているかが重要になります。
43条但し書きの道路として認定を受けるまでの流れ
43条但し書きの道路として認定を受けるまでの流れは、
- 事前相談
申請内容について、事前に特定行政庁とすり合わせを行います。 - 申請
必要書類を整えて、特定行政庁に申請します。 - 審査
内容に応じて建築審査会の審査を受け、問題がないか確認を受けます。 - 認定
42条但し書きの道路として認定を受けます。
です。
事前相談や協議段階で、認定を得られるか概ね教えてもらえます。
問題がなさそうであれば、書類を整えて申請する流れです。
43条但し書きの道路による解決の問題点
43条但し書きの道路よる解決の問題点は、あくまでも一時的な認定であり、将来にわたって認められていないことです。
特定の建築計画について許可を得ただけなので、
- 新たに建物を建てるとき
- 既存の建物を増築するとき
※ 場合によっては改築も含む
には、改めて認定を受けなければいけません。
将来、同じように認定を受けられるとは限らず、周辺環境の変化により認定が受けられなくなることもあり得ます。
43条但し書きの道路を安心材料として不動産取引を行う場合、十分にリスクに注意してください。
未接道または接道距離(間口)が2m以下の場合の裏ワザ・抜け道
未接道または接道距離(間口)が2m以下の場合の裏ワザ・抜け道は、
- 隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入する
- 隣地所有者から接道義務を満たすために必要な建築確認申請上の敷地を借りる
のいずれかです。
隣地所有者にも生活があるので、
- 老夫婦が暮らしていて、近々子供たちの家に引っ越す予定をしている
- 長い間、空き家状態が続いていて、所有者も県外にいるため不要になっている
など、特別な事情がない限り、成立が困難です。
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入する
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な敷地を購入することで、未接道を解消することができます。
当然ですが、
- 未接道の敷地
- 購入する敷地
は、繋がっている必要があります。
ですので、隣地所有者から購入する以外に選択肢はありません。
そのため、
- どの隣地所有者も譲ることができる余裕のある敷地がない
- 敷地に余裕はあるが、敷地を譲ることで、隣地所有者に不都合がある(既存不適格建築物など)
といった問題も起こり得ますし、
- そもそも売りたくないと断られる
- お願いをする立場なので、足元を見られて高値を提示される
といったことも起こります。
隣地所有者から接道義務を満たすために必要な建築確認申請上の敷地を借りる
建物を建てるときには、建築確認申請を特定行政庁に提出し、許可を受けなければいけません。
建築確認申請では、
- 建物の敷地
- 建物の配置
などを申請書に記載しますが、建物の敷地は、申請者と所有者が一致していなくても問題がありません。
そのため、接道義務を満たすために必要な敷地だけを隣地所有者から建築確認申請上だけ借りることができれば建築可能になります。
ただし、敷地を貸してしまった場合、新築した建物が取り壊されない限り、貸した敷地は確認申請上の敷地として活用できなくなります。
ですので、貸した敷地の所有権は隣地所有者にあるにもかかわらず、
- 緊急車両の侵入を妨げないために、隣地所有者は敷地利用の幅をかなり制限される
- 隣接地所有者が増築する時に、貸した敷地は自己の敷地として申請を出せなくなる
などの弊害が生まれてしまうので、隣地所有者から協力を得ることが難しい傾向にあります。
都市計画法上の建築制限を受けている場合の裏ワザ・抜け道
都市計画法上の建築制限を受けている場合、建築可能にすることはほぼ不可能です。
可能性があるとすれば、
- 既存宅地制度(廃止)の扱いを受けることができないか相談する
ですが、ほぼほぼできないと思ってください。
そもそもが建物を建てることを認めていない地域なので、例外的に認めてもらうことは厳しいです。
既存宅地制度(廃止)の扱いを受けることができないか相談する
都市計画法により
- 市街化区域
- 市街化調整区域
などの区域区分が分けられることを「線引き」といいます。
平成13年ごろまでは既存宅地制度により、
- 線引きの日(線引きが行われた日)以前からすでに宅地
- 都道府県知事の確認を受けた土地
を満たしている場合には、許可不要で建物を建てることができました。
しかし、平成13年ごろに既存宅地制度が廃止され、市街化調整区域に位置する場合には、いかなる土地であっても個別に許可を得なければいけなくなりました。
既存宅地制度は廃止されたのですが、実務上、概念は残っています。
特定行政庁に相談や申請を行う必要はありますが、許可基準に既存宅地制度の概念が用いられることが多いです。
線引きの日は地域によって異なるため、自治体ごとに調べる必要はありますが、もし該当しそうであれば、相談してみると良いでしょう。
ただし、必ずしも認められるわけではないので、期待はしすぎないようにしてください。
再建築不可について