市街化調整区域の物件は、すべて再建築不可というわけではありません。
特定の条件を満たすことで建築が認められるケースも存在します。
本記事では、
- なぜ市街化調整区域の物件は再建築不可になるのか?
- 市街化調整区域で再建築可能な建物
について解説しています。
市街化調整区域に位置していることは、再建築不可に陥る原因の中でも解決が非常に困難な事例です。
ほとんどの場合は諦めることになるかと思いますが、稀に条件に合致することもありますので、ひとつひとつ洗い出してみてください。
なぜ市街化調整区域の物件は再建築不可になるのか?
市街化調整区域は、都市計画区域内に定められる区域区分のひとつです。
市街化区域(都市として発展させていく区域)の発展を邪魔しないために、市街地化を抑制する区域として定められます。
都市の発展というと、高層ビルが立ち並ぶ商業地をイメージしますが、林業や農業などの第一次産業も都市の発展に必要です。
市街化調整区域では、自然を保護する事で、第一次産業(林業、農業など)に適した環境を整えることを主な目的としています。
市街化調整区域が設定される目的を考えると、
- 商業施設
- 工場
などはもちろんのこと、住宅を建築することで人口が増えることも歓迎されません。
人の往来が増えれば、主にトラクターなどが走る目的で設置される農道が本来の機能を果たせなるなどの支障があります。
市街化調整区域に建物が建っている理由
市街化調整区域であっても、現に建物は建っており、そこに生活する人がいます。
ほとんどの場合、
- 市街化調整区域で農林水産業などを営んでいる方
- 新たに市街化調整区域に指定された方
で、
- 都市計画法 第29条
- 都市計画法 第34条
に定められる特定の建築物のみになります。
市街化調整区域で土地活用を行うことは、かなりハードルが高く、認められないケースが目立ちます。
是が非でも活用方法を模索しなければならない場合には、
- 都市計画法 第29条
- 都市計画法 第34条
からヒントを得るしかないと考えてください。
いわゆる「既存宅地制度(廃止済み)」に近しい内容も存在します。
市街化調整区域で再建築可能な建物
市街化調整区域であっても、一切の建築行為が認められないわけではなく、
- 開発許可
- 建築許可
のいずれかを受ける事ができれば、建築は可能です。
具体的には、
- 都市計画法 第29条に定める許可不要の開発行為
- 都市計画法 第34条に定める立地基準を満たす建築行為
に該当する行為かどうかです。
主に第一次産業を支えるための建築行為に限定されます。
都市計画法 第29条に定める許可不要の開発行為
都市計画法 第29条のうち、
- 都市計画法 第29条第1項第2号
- 都市計画法 第29条第1項第3号
- 都市計画法 第29条第1項第10号
- 都市計画法 第29条第1項第11号
に定める開発行為は許可不要の行為として認められています。
用語補足「開発許可」
開発許可とは、
- 都市計画区域
- 準都市計画区域
- 都市計画区域外
において、都市計画法 第29条に定めにより一定面積以上の開発行為(宅地造成など)を行うときに必要な許可です。
無秩序な乱開発を防ぐことを目的として作られた法律になります。
原則として、市街化調整区域で開発行為を行うときには、面積にかかわらず、すべて開発許可を受ける必要があります。
ただし、例外として、
- 都市計画法 第29条第1項第2号
- 都市計画法 第29条第1項第3号
- 都市計画法 第29条第1項第10号
- 都市計画法 第29条第1項第11号
に定める開発行為は許可がいらないとされています。
逆を言えば、それ以外の行為は余程の理由がない限り認めませんということです。
一般個人ができる規模で言えば、
- 農家住宅
- 50㎡以内の日用品販売店舗
くらいかと考えられます。
都市計画法 第29条第1項第2号
都市計画法 第29条第1項第2号では、
- 農業
- 林業
- 漁業
を営む方の住宅や施設を設置するための開発行為を許可不要と定めています。
例えば、
- 農家住宅
- 畜舎
- 農業用温室
- 育種苗施設
- 家畜人工授精施設
- 搾乳施設
- 集乳施設
- 農作業舎
- 魚類蓄養施設
- 果実集荷施設
- 漁獲物水揚げ荷さばき施設
- 農林漁業の用に供する建築物で建築面積が90㎡以内の建築物
などが挙げられます。
農家住宅でよくある勘違いに「家族が農家であれば建てられるということ?」という内容がありますが、違います。
居住者自身が農林漁業を営む者である必要があり、分家住宅であっても同じです。
都市計画法 第29条第1項第3号
都市計画法 第29条第1項第3号では、公益上必要な建築物を設置するための開発行為を許可不要と定めています。
例えば、
- 駅舎
- 図書館
- 公民館
- 変電所
などが挙げられます。
近隣住民の利便性の向上が期待でき、無秩序で無計画な市街化に繋がる可能性が極めて低い建物の建築が認められています。
都市計画法 第29条第1項第10号
都市計画法 第29条第1項第10号では、非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為を許可不要として定めています。
内容は多岐に渡りますが、安全を守るために必要な応急措置全般を指します。
都市計画法 第29条第1項第11号
都市計画法 第29条第1項第11号では、
- 仮設建築物
- 附属建築物
- 50㎡以内の日用品販売店舗
- 通常の管理行為
- 10㎡以内の改築
- 用途の変更を伴わない改築
などに伴う開発行為を許可不要として定めています。
かなり軽微な変更であれば、特例的に認められていると理解できます。
都市計画法 第34条に定める立地基準を満たす建築行為
都市計画法 第34条のうち、
- 都市計画法 第34条第1号
- 都市計画法 第34条第2号
- 都市計画法 第34条第4号
- 【詳細割愛】都市計画法 第34条第5号(農林業等活性化基盤施設)
- 【詳細割愛】都市計画法 第34条第6号(中小企業共同化施設)
- 【詳細割愛】都市計画法 第34条第7号(既存工場関連施設)
- 【詳細割愛】都市計画法 第34条第8号(火薬庫等)
- 都市計画法 第34条第9号
- 都市計画法 第34条第10号
- 都市計画法 第34条第11号
- 都市計画法 第34条第12号
- 都市計画法 第34条第13号
- 都市計画法 第34条第14号
に定める行為は、開発許可または建築許可を受ける事で行える行為として定められています。
都市計画法 第34条の各号に定められる行為は、各種申請を提出して、許可を受ける必要がありますが、認められる可能性があります。
都市計画法 第34条第1号
都市計画法 第34条第1号では、
- 保育所
- 学校
- 診療所
- 助産所
- 社会福祉施設
- ゆうちょ銀行
- かんぽ生命
- コンビニエンスストア
- 理容・美容店
- コインランドリー
- プロパンガス販売所
- 施術所
- 自動車修理工場
- ガソリンスタンド
- 自動車用液化ガススタンド
- 農林漁業団体事務所
- 農機具修理施設
- 農林漁業家生活改善施設
- 食堂・レストラン・喫茶店・カフェ(酒類提供を主とするものを除く)
など、
- 主に周辺地域に居住している人が利用する政令で定める公益条必要な建築物
- 周辺地域に居住している人の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理などを営むための建築物
を建てるための開発行為を定めています。
田んぼしかないようなエリアを思い浮かべると、ゆうちょ銀行しかない気がしないでしょうか。
一般個人であれば、
- コンビニエンスストア
- 理容・美容店
- コインランドリー
- プロパンガス販売所
- 施術所
- 自動車修理工場
- ガソリンスタンド
- 食堂・レストラン・喫茶店・カフェ(酒類提供を主とするものを除く)
などは、経営目的で建てることが認められるかもしれません。
都市計画法 第34条第2号
都市計画法 第34条第2号では、
- セメント工場(鉱物資源の有効な利用上必要なものに限る)
- 展望台・宿泊施設・休憩施設(観光資源の鑑賞等のため必要なものに限る)
など、
- 鉱物資源や観光資源など資源の有効な利用上必要な施設
- 第一種特定工作物
の建築および当該行為に伴う開発行為が定められています。
用語補足「第一種特定工作物」
第一種特定工作物とは、
- コンクリートプラント
- アスファルトプラント
- クラッシャープラント
- 危険物の貯蔵または処理に供する工作物
など、都市計画法に定める周辺地域の環境に悪影響をもたらす恐れのある工作物です。
都市計画法 第34条第4号
都市計画法 第34条第4号では、産地においてすみやかに処理加工等を行う必要がある場合に限り、
- 畜産食料品製造業
- 水産食料品製造業
- 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
- 動植物油脂製造業
- 精穀・製粉業
- 砂糖製造業
- 配合飼料製造業
- 製茶業
- 澱粉製造業
- 一般製材業
の用に供する建築物を定めています。
農林水産業を営む方々の助けになる施設のみと考えてください。
都市計画法 第34条第9号
都市計画法 第34条第9号では、
- 道路管理施設
- ドライブイン
- ガソリンスタンド
- 自動車用液化石油ガススタンド
- 自動車用天然ガス燃料供給施設
- 自動車用水素スタンド
- 自動車用充電設備施設
- 火薬類製造所
など、沿道サービス施設を定めています。
一般個人であれば、
- ガソリンスタンド
- 自動車用水素スタンド
- 自動車用充電設備施設
などは、経営目的で建てることが認められるかもしれません。
都市計画法 第34条第10号および第11号
都市計画法 第34条第10号および第11号では、
- 地区計画
- 集落地区計画
- 区域指定型制度
の区域内における、
- 一戸建ての住宅
- 共同住宅及び長屋
- 小規模な店舗
などの建築が定められています。
かなり限定的な区域のみになりますが、
- 地区計画
- 集落地区計画
- 区域指定型制度
が施行されているエリアは市街化区域近辺に位置している傾向にあり、一般個人でも賃貸経営などの収支が合うケースが存在します。
都市計画法 第34条第12号
都市計画法 第34条第12号では、
- 分家住宅
- 既存集落内の自己用住宅
- 収用対象事業による代替建築物
- 災害危険区域から移転する建築物
- 自治会施設
- 区域指定型制度の指定区域内の建築物
などが定められています。
農家住宅と同様、分家住宅の世帯主は農林水産業を営む者であることが前提です。
都市計画法 第34条第13号
都市計画法 第34条第13号では、新たな線引きで市街化調整区域に指定されたことにより既存権利を失った方が、線引きの日から5年以内に既存権利届により建築する建築物を定めています。
今までは市街化区域などに位置して、自由な建築を認められていたにもかかわらず、都市計画の変更により市街化調整区域に指定されてしまった場合、大きくマイナスの影響を受けます。
そのような方を救済する目的で定められている内容です。
都市計画法 第34条第14号
都市計画法 第34条第14号では、
- 社寺仏閣及び納骨堂
- 研究対象が市街化調整区域に存在する研究施設
- 事業所等の従業者のための住宅・寮等
- 公営住宅
- 既存建築物の建替・増築
- 市街化区域に存する災害危険区域等に存する建築物の移転
- レクリエーション施設を構成する建築物
- 指定既存集落内の小規模な工場等
- 指定区域内における特定流通業務施設
- 社会福祉施設
- 相当期間適正に利用された建築物の用途変更
- 定住化対策として行われる賃貸住宅への用途変更
- 地域産業振興施設
- 既存の土地利用を適正に行うため最低限必要な管理施設
の設置で、市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当であると開発審査会が承認したものが定められています。
再建築不可について