よさそうな中古住宅が見つかったら、いよいよ見学ですね。しかし、見学と言ってもいろいろと不安なことが多いと思います。住宅のことなんてあまりよくわからないし、なんだか営業マンのペースに持っていかれてしまうのではないだろうかなど。せめて、見学のときに注意すべき最低限のことは知っておきたいと思いませんか?
そんなあなたのために、今回は中古住宅を見学するときのためのチェックリストを紹介します。チェックする箇所ごとに、どこに注意して見学すればよいのか、ひとつひとつ解説していきます。この記事のチェック項目を意識することで、中古住宅の購入で落とし穴にはまる確率をグッと引き下げることができます。
また、このチェック項目は住宅性能評価基準書に記載されている内容を参考にして作られています。わたしが、実務で中古住宅の査定を行うときに活用しているものを修正したものです。その中から最重要ポイントを紹介します。見学のときには、最重要ポイントがチェックできるだけでも十分に効果を発揮するので安心してください。
【この記事からわかること】
- 土地のチェックリスト(災害リスク、近隣リスク)
- 建物外観のチェックリスト(基礎、外壁、軒、外構)
- 建物内部のチェックリスト
さらに詳しく
中古住宅の購入ガイドでは、
- 良い中古住宅の効率的な見つけ方
- 割安・割高をしっかりと見分ける方法
- すこしでも安く中古住宅を購入する方法
- 中古住宅にかかる全費用(購入後も含めて)
- 売却や建て替えに適した費用性の高い築年数
など、より賢く、よりお得に、中古住宅を購入する方法についてまとめています。
土地のチェックリスト
まずは、土地のチェックポイントです。新築住宅は土地探しから始めるので、土地もじっくりと検討する方が多いです。しかし、中古住宅選びでは、不思議と土地のことについてないがしろにされがちです。ですが、万が一なにかがあったときに大きな損失を被る可能性が高いのは圧倒的に土地です。
地盤沈下などが起こっている場合には、家ごと沈みます。ほかにも洪水や、境界の問題など、解決困難なトラブルの種が潜んでいます。家が建っているので、地質調査はできません。それでも、現状から確認できることは沢山あるので、必ずチェックするようにしましょう。
災害のリスク
自然災害が発生するかどうかは予測不可能です。ですが、発生したときに安全なところなのか、安全ではないところなのかを知ることはできます。まずは、購入を検討している場所がどんなエリアなのか確認しましょう。
ハザードマップを確認する
ハザードマップは、できれば見学にいく前に確認しましょう。見学が終わってからでも確認はできるのですが、いく前に知っておくと、そういう場所という認識を持ちながら周囲を確認できます。
ハザードマップは、自治体ごとに発表されているので、自治体のホームページを確認しましょう。「物件所在地の自治体名 + ハザードマップ」などで検索をすると出てくることが多いです。ハザードマップを確認することで、洪水や土砂災害のリスクがどのくらいある土地なのかを知ることができます。
マンホール・電柱の陥没
見学に行ったときには、周辺のマンホールや電柱を確認してください。とくにマンホールが道路に対して浮き上がっていたら要注意です。これは地盤沈下のシグナルです。
また電柱は1本だけが傾いているのであれば、問題はありません。ですが、複数本が傾いているときには注意してください。これも軟弱な地盤の危険性が高いというシグナルです。
過去に田んぼだったどうか
過去に田んぼだったかどうかを確認しましょう。営業マンに聞いてもよいですし、自分で登記事項証明書を取得して、地目を確認するとよいでしょう。地目が田から宅地に変更されている場合には、田んぼだった可能性が高いです。
ただし、田んぼだったからと言って2年経過しているかなどはあまり気にする必要はありません。昔は地盤改良技術があまりよくなかったので、田んぼだった地面は2年寝かせて固める必要がありました。しかし、最近は技術革新が進んだので、あまり心配はありません。
そばに崖がないかどうか
付近に崖がないか確認しましょう。切り立った崖の上や、崖のすぐ下に位置しているときは注意しましょう。土砂災害に巻き込まれる危険性が高いです。
また、切土や盛り土をして造成された宅地かどうかにも注意してください。そのような地盤は、とても軟弱になっている可能性が高いです。大雨によって家ごと地滑りしてもおかしくはないので、しっかりとリスクを考えましょう。
近隣トラブルのリスク
土地は不動性(動かせない)という性質を持っています。それゆえ、近隣住民とトラブルになったときには解決困難なケースが多いです。最初の時点で避けられるトラブルは避けてしまいましょう。
地境鋲があるかどうか
確定測量図や公図を入手して、実際の敷地を測量することはかなり困難だと思います。ですが、現地に見学に行ったときには地境鋲があるかどうか確認しましょう。地境鋲にはいろいろなタイプがありますが、コンクリート製のものや金属のプレート状のものがよくあるものです。
特に注意したいのは、ホームセンターで売っているような木杭やプラスチック杭が打ち込まれているときです。このような地境鋲は、土地家屋調査士が測量をして打ち込んだものではなく、所有者や宅建業者が勝手に打ち込んだものである可能性が高いです。もし、勝手に打ち込んだものである場合には、近隣住民との間に合意が取れていないことがあり、後々トラブルの元になるので地境については、しっかりと権利関係を確認しましょう。
騒音の心配がないかどうか
家は購入したら動かせません。それゆえ、騒音が気になり始めたら、ずっと悩まされ続けます。購入後に発生し始めた騒音で、ひどく悪質でない限り騒音について訴えても勝てないことが多いです。ですので、周辺でうるさそうな施設がないかしっかりと確認しましょう。
幹線道路や工場がうるさいことには、すぐに気が付くでしょう。ですが、気付きにくいのは駐車場や周辺に何もないということが騒音の原因になることです。敷地の隣に月極駐車場があるときには、車の開け閉め音が昼夜鳴り響きくので、デリケートな方には耐えがたいでしょう。また、周辺に何もない場所は風が騒音の原因になるので注意しましょう。
建物外観のチェックリスト
土地のチェックが終わりました。次は建物の外観をチェックしましょう。構造上問題のある欠損(リフォーム費用が膨らむ)を見逃さないように注意しましょう。
基礎のチェックリスト
建物の基礎は、ベースとなる大切なところです。基礎の欠陥が大きくなったときには、建物全体をダメにしてしまいます。恐ろしいリスクがはらんでいるので、見逃さないようにしっかりと確認を行いましょう。
基礎のひび割れ
まず、確認したいのは基礎のひび割れです。ひび割れですが、まったくない基礎を見つけるのは、ほぼ不可能でしょう。素材の性質上、多少のひび割れは起こるものです。ですので、構造上問題のあるひび割れとそうではないひび割れについて説明します。
ヘアークラック
表面のひび割れには、ヘアークラックと呼ばれるものがあります。髪の毛ほどの細いひび割れです。このヘアークラックは仕上げ(化粧)といって、出来上がった基礎の上にモルタルを薄く塗って見栄えをよくしている層にできるものです。なので、構造には直接関係しません。
換気口や開口部付近のひび割れ
換気口や開口部付近のひび割れには注意しましょう。これらの付近には力が集中しやすいため、補強筋(内部補強用の鉄筋)を通常であればいれます。しかし、補強筋がしっかりと入っていないときにはいるひび割れです。
コールドジョイント
工事の途中で、補強の必要があるときにコンクリートを継ぎ足すことがあります。このようなときには、最初のコンクリートと乾燥の進み方が違うためにひび割れが起こります。これがコールドジョイントと呼ばれるものです。
施工ミスによるひび割れ
注意すべきひび割れなのですが、施工時にアンカーボルトや配管の埋め忘れをしてしまい、あとから基礎に穴をあけて埋め込むことがあります。このようなケースでは基礎が傷つきます。周辺に変なひび割れや欠損があるときは注意が必要です。
ひび割れを見分ける方法
悪いひび割れは、
- 基礎の表側だけでなく、裏側まで貫通しているひび割れ
- ひび割れの幅が3mmを超えているもの
- 一か所が起点になっている複数本のひび割れ
です。
構造上の問題になるひび割れの可能性が高いです。基礎の修復は難しいので、できるかぎりしっかりと確認しましょう。
基礎の傾き
目視で基礎が明らかに傾いているときには注意してください。土台から傾いているということなので、中はさらに傾いている可能性が高いです。家の傾きは、住み始めると意外と気になります。
基礎周辺の蟻道
蟻道とは、シロアリが侵入するときに作られる、シロアリ特有の道です。シロアリは光や乾燥を嫌います。なので、自分の糞や土を使ってトンネルを作りながら進んでいきます。これは床裏でもそうなのですが、基礎表面に蟻道と思われるトンネル状の茶色いラインがあったらシロアリが侵入しているサインです。
外壁のチェックリスト
外壁は、雨風から構造躯体を守る役割を担っています。防御壁となるところなので、欠損があると建物の内部にダメージが向かいます。構造内部の欠損も大規模な工事になりやすいので、十分に注意が必要です。
外壁のひび割れ
外壁もひび割れの確認は重要です。基礎のひび割れと同じように、ヘアークラックはあまり気にする必要がありません。しかし、外壁のひび割れにも悪いひび割れがあります。乾燥クラック・構造クラック・縁切れによるクラックと呼ばれるものです。
すべて表面で起きているものではなく、内側で発生したクラックが表面に出てきているものです。簡易的な見分け方としては、基礎のひび割れ同様に、その太さや発生状態によって見分けます。
外壁のシーリング材の破断
サイディングをつなぐジョイント部分には、シーリング材が使われています。シーリング材は経年劣化によって硬化していきます。その過程で接着部分から剥がれてしまったり、割れて断絶してしまったりします。
もし、シーリング材がかけているようなところがあれば、そこから漏水する可能性があります。さらにシーリング材の欠損が以前から起こっているような場合は、すでに漏水しているかもしれないので注意しましょう。
軒のチェックリスト
軒は外壁同様に防御壁の役割があります。しかしながら、建物のもっとも高い位置にあるので、点検がしにくいところでもあります。双眼鏡などを用意して確認する価値はありますので、準備を整えましょう。
軒裏のひび割れ
軒裏のひび割れや、穴は注意してください。ひび割れの場合には、漏水や雨水の吹き込みによる内部腐食の可能性があります。屋根裏や壁の間が腐食するとリフォームは非常に困難で、高額になりがちです。
穴の場合には、漏水や雨水の吹き込みによる損失の可能性も拡大しますが、それより問題なのは動物です。鳥やコウモリが侵入して巣を作っているケースは、よく聞く話です。大きな穴の場合には、タヌキが巣を作って、家の中の食料を漁ることもあります。
軒裏の漏水痕
軒裏に染みのような痕が広がっていることがあります。これは漏水によって木が変色したことによるもので、漏水痕といいます。修復されていることもありますが、漏水があったことの証明なので気をつけましょう。
軒裏換気口の状態
サイディングと構造壁の間には隙間があります。これは風を通すことで、湿気がこもらないようにしているからです。湿気がこもると、腐食が起こり、家が内部からボロボロになってしまいます。
軒裏換気口の状態がなぜ重要かというと、軒裏換気口が排気口になっているからです。排気口が詰まっていると、うまく換気が行われません。すると、次第に家が傷んでしまうのです。
軒先の越境
軒先の越境は、必ず確認しましょう。昔からの市街地で、少し混み合っているような場所ではありがちです。樹木の越境も問題ですが、軒先の越境では単純に切ればいいというものではありません。リフォーム可能だとしても費用がかかりますし、リフォームができない屋根ということもあります。
不動産屋さんに、昔から越境していてトラブルにもなっていないので大丈夫ですなどの説明を受けても、真に受けないでください。問題が起こっていなかったとしても、それは売主と隣家だから起こっていないだけかもしれません。新しく越してきたあなたと隣家の相性がよいとは限りません。
軒先の越境を確認するには、敷地境界を明確にする必要があります。最新の地積測量図を見せてもらうようにしてください。木杭やプラスチック杭を不動産屋さんが勝手に設置していたり、思い込みでここだろうと思っていると、ひどい目にあいます。
外構のチェックリスト
外構は忘れがちな重要箇所のひとつです。予想外のトラブルに巻き込まれるリスクがあります。補修するとなると土木工事になるので、手間もお金もかかります。しっかり確認しましょう。
アプローチ部の水はけ
家の正面玄関付近で水がたまりやすいところがないか確認しましょう。慢性的に家に水がついているような状態は問題外ですが、敷地境界のところで水がたまっているのも注意が必要です。このような土地では、虫がわきやすく、梅雨の時期にはハエ、夏には蚊などに悩まされます。
駐車のしやすさ
特に大型車を複数台所有しているなら、必ず駐車してみましょう。駐車がしにくい家は想像以上にストレスがたまります。場合によっては、運転ミスによって家や車を傷つけてしまうことにも繋がります。
出庫時の見渡しのよさ
駐車のしやすさに似ていますが、出庫時に見渡しがよいかも大事です。カーポートにカーブミラーを設置している家を見たことがありませんか?お子さんがいる方は必ず確認してください。
建物内部のチェックリスト
いよいよ建物内部に入ってきました。気合を入れて確認するぞ!と意気込んでいるかもしれません。ですが、物件の確認はほとんど終わっています。正確には、どうにもならないトラブルに発展する問題の確認は、ほぼ終わりです。
解決困難な不動産トラブルは、建物内部ではなく、建物外部で起きていることがほとんどです。建物内部については、トイレが和式だから嫌とか、お風呂がボロボロで嫌など、リフォームで対応できる問題がほとんどです。ですが、これまで紹介してきた問題は、リフォームで解決不可能なものや、解決できたとしても、かなりの高額になるものばかりです。
建物の中については、あなたが気になったことが許せるか許せないかで考えていいです。それでも、ここだけは確認してください!というものだけご紹介します。他の部分は、ほとんどが好みの問題です。
建物内部共通のチェックリスト
窓周辺のカビ
窓の周辺に発生しているカビには注意してください。慢性的な結露が起きている証拠です。ペアガラスにすることで結露を防ぐことはできますが、今まで結露し続けたことで発生していたカビによる腐食は戻しようがありません。
カビによる被害は、建物内部に侵入していることが多いです。一度侵入したカビは、どんどん広がって家を腐らせるので注意しましょう。また、カビは健康にもよくありません。
押入れの漏水痕
押入れを開くと、天井や壁に漏水痕が見つかることがあります。ひどいときにはカビがはびこっているということもあります。押入れで発生している雨漏りは、建物外部から建物内部にかなり深く侵入してしまっている雨漏りです。水の通過した部分は傷んでいる可能性が高いので、気をつけましょう。
壁や天井の亀裂
壁面に亀裂が入っているか確認しましょう。壁面に亀裂が走っている場合、慎重になってください。石膏ボードという防火のためのパネルが、下地の木材に引っ張られたことで亀裂が生じてクロスが避けているということがあります。この亀裂はクロスの張替え補修などで対応できます。
ですが、鉛筆の芯が入りそうなほど太い亀裂はアウトです。この亀裂は建築に問題があり、のちのち構造上の問題に発展する恐れがあります。補修するにしてもかなり大きな工事になりやすいです。
床の水平
床の水平が保たれているか確認しましょう。ビー玉を3つ持っていくのがいいです。傾きの問題は根本的な解決はしにくく、その場しのぎの工事になりがちです。
とはいえ、まったくビー玉が動かないような物件は少ないです。なので、置いてすぐに動き始め、加速していくような動きか確認してください。勢いのある動きをするときには注意しましょう。
ベランダ(バルコニー)の床
ベランダやバルコニーには、防水処理がされています。ですが、この防水処理は経年劣化で乖離していきます。劣化がひどく、水がしみこんでしまっているときには、コンクリートや構造部分を傷めていることがあります。補修は高額になりがちなので、気をつけましょう。
チェックポイントのまとめ:土地編
以下に土地のチェックポイントをまとめます。
チェックポイントのまとめ:土地編
- ハザードマップを確認する
- マンホール、電柱の陥没
- 地境鋲があるかどうか
- 騒音の心配がないかどうか
- 過去に田んぼだったかどうか
- そばに崖がないかどうか
このほかにも、最近であれば空き家がないか確認するとよいでしょう。空き家問題はとても深刻な問題になっています。先日は、仙台市青葉区国見ヶ岡の木造2階建ての空き家から手りゅう弾や拳銃のようなものが見つかったという事件がありました。犯罪などに巻き込まれるリスクがあるので注意したいですね。
チェックポイントのまとめ:外観編
以下に外観のチェックポイントをまとめます。
チェックポイントのまとめ:外観編
- 基礎のひび割れ
- 基礎の傾き
- 基礎周辺の蟻道
- 外壁のひび割れ
- 外壁のシーリング材の破断
- 軒裏のひび割れ
- 軒裏の漏水痕
- 軒裏換気口の状態
- 軒先の越境
- アプローチ部の水はけ
- 駐車のしやすさ
- 出庫時の見渡しのよさ
チェックポイントのまとめ:建物内部編
以下に建物内部のチェックポイントをまとめます。
チェックポイントのまとめ:建物内部編
- 窓周辺のカビ
- 押入れの漏水痕
- 壁や天井の亀裂
- 床の水平
- ベランダ(バルコニー)の床
まとめ
中古住宅を見学するときには、絶対に確認すべきところがあります。どうしても建物の中に目が行きがちですが、重要なのは土地と建物の外観からわかる箇所です。解決不可能な問題が潜んでいることがありますので、注意しましょう。
中古住宅選びは、住宅選びだけでなく、土地選びの側面もあります。みなさん、忘れがちですが本当に解決が難しい問題は土地に潜んでいるので、注意しましょう。