土地収用法 不動産の法律

土地収用法とは:概要と損失補償

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北海道新幹線や北陸新幹線について、計画を前倒しして、早期実現を目指す!といった見出しが世間を賑わすことが増えました。具体的には計画の前倒しって何をするの?という風に思われる方もいるでしょう。このような大規模な事業を進めるのに重要なのは用地買収と土地収用です。

今回の記事では、土地収用の概要と補償内容について解説します。先に用地買収交渉がまとまらなかった結果、土地収用法による最終手段となります。あまり明るい印象はもともと持ち合わせていない言葉ですが、収用される側にとっては「用地買収交渉に応じればよかった...。」となるのが一般的です。

この記事からわかること

  • 土地収用法の概要
  • 土地収用法の関係者
  • 土地収用法による補償内容

土地収用法とは

土地収用法は、一定の目的・条件下において、土地を収用または使用することができるということを定めている法律です。収用とは、国が「公共のために使うこと」を目的として取りおさめることをいいます。強制的に没収される印象を持っている方もいるかもしれませんが、然るべき手順と補償がされます。

目的ですが、公共の利益となる事業のために土地を必要とする場合に限っています。例えば、新幹線の沿線をしたいが用地買収がうまく進まないというときには、土地収用法による用地取得が行われたりします。

また、条件としては、対象の土地を当該事業の用に供することが土地の利用上適正かつ合理的であるときにのみ収用が認められます。新幹線のためとはいえ「その土地じゃなくてもいいし、その土地は今の使い方のほうがいいよね」という場合には認められないということです。

土地収用ができる事業

土地収用法には51種類が定められていますが、以下が主な事業(第3条各号の事業)です。

  • 道路法による道路、駐車場法による路外駐車場
  • 河川法による河川、堤防、護岸、ダム、水路、貯水池
  • 砂防法による砂防設備
  • 運河法による運河施設
  • 国、地方公共団体等が設置する農業用道路
  • 鉄道事業法による鉄道事業者、索道事業者の一般需要向け施設
  • 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が設置する鉄道施設
  • 石油パイプライン事業の施設
  • 一般乗合旅客自動車運送事業、一般路線貨物自動車運送事業等
  • 港湾施設、漁港施設、海岸保全施設、航路標識、水路測量標
  • 飛行機、航空保安施設、気象施設
  • 電気通信設備、放送設備
  • 電気事業法による電気工作物、電源開発株式会社が設置する発電施設又は送電変電施設
  • ガス事業法によるガス工作物
  • 水道法による水道、工業用水道事業、又は下水道法による公共下水道
  • 消防法、木防法により設置する施設
  • 学校教育法による学校、社会教育法による公民館、博物館、図書館法による図書館、社会福祉事業法又は職業能力開発促進法による施設
  • 健康保険組合その他の設置する病院、保健所法による保健所
  • 火葬場、と畜場、産業廃棄物処理施設その他
  • 中央卸売市場、地方卸売市場
  • 自然公園法、自然環境保全法による事業
  • 国、地方公共団体、地方住宅供給公社が行う50戸以上の分譲又は賃貸住宅団地
  • 国、地方公共団体が設置する庁舎、公園、広場、墓地

収用の対象

以下は、土地収用法によって収用できるものです。

  • 土地
  • 土地に関する所有権以外の権利
  • 鉱業権、温泉利用権、漁業権等
  • 立木・建物その他の定着物件
  • 定着物件に関する所有権以外の権利
  • 土石砂れき

立木・建物その他の定着物件については、建物ごと収用したほうが公共の利益になる事業であると認められるときに限り、収用できます。通常は、土地のみを収用し、建物は移転の補償が行われます。また、すでに他の公共の事業に使用されている土地は、よほどの必要性が認められない限り収用はできません。

土地収用の当事者

土地収用では、収用する側と収用される側がいます。収用に係る損失補償に関して、当事者になるものについて解説します。

起業者(収用者)

事業を行うもののことを起業者といい、起業者が土地の収用を行うので「起業者=収容者」となります。土地・権利などの収用を必要とする公共の利益となる事業を行う者などと表現されます。基本的には、国、地方公共団体や公団ですが、限定はされていません。

土地所有者(被収用者)

土地収用法によって、土地が収用される人のことをいいます。あくまでも土地の所有者であり、先述した建物の所有者は、ここでは含まれていません。土地収用法の主たる目的物は、あくまでも「土地」であり、その他は定着物でしかありません。

関係人

収用する土地について所有権以外の権利を有する者およびその土地にある物件に関して所有権およびその他の権利を有する者を指します。所有権以外の権利とは、抵当権や賃借権などをいいます。例えば、銀行の抵当に入っている土地であったときには、銀行にも何らかの補償が行われるべきです。

また、その土地にある物件に関して所有権およびその他の権利を有する者とは、土地の上に立っている建物の所有者などを指します。もちろん、借家人のように建物賃借権を持っている人も含まれています。買戻権や差押債権については、登記されていない限り関係人に含まれないので注意が必要です。

関係人については、事業認定の告示がなされたときに固定されます。事業認定の告示後に新たに権利を取得した者は関係人には含まれず、補償の対象とはなれません。ただし、既存の権利を相続や贈与などによって承継した者は関係人に含まれます。

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