抵当権 不動産用語

抵当権の優先弁済権

更新日:


抵当権の優先弁済権について解説しています。

抵当権の優先弁済権について、

  • 抵当権の優先弁済権とは
  • 抵当権の優先弁済効が及ぶ範囲

を解説しています。

まごころう

抵当権の優先弁済効が及ぶ範囲については、

  1. 担保不動産そのもの
  2. 担保不動産の果実
  3. 担保不動産の分離物
  4. 担保不動産の物上代位
  5. 担保不動産の付加一体物

に分けて解説しています。

章中でも注釈を入れていますが、かなりデリケートな話題です。

法解釈によって状況が異なるので、解説している内容は、あくまでも一般論です。

最終的な判断は裁判所に委ねられている点に注意してください。


抵当権の優先弁済権とは

抵当権の中心的な権利として「優先弁済権」があります。

抵当権の優先弁済権とは、抵当権の実行により、

  • 担保不動産の競売により代金を回収すること
    (※競売)
  • 担保不動産の賃料により代金を回収すること
    (※収益執行)
  • 担保不動産の変質により代金を回収すること
    (※物上代位)

のいずれかが行われたときに、

  • ほかの抵当権者
    (※債権者で、抵当権を設定している者)
  • ほかの無担保債権者
    (※債権者だが、抵当権を設定していない者)

よりも優先的に弁済(返済)を受けることができる権利です。

さらに詳しく

優先弁済権の優劣は「抵当権の順位」によって決まります。

抵当権の順位:変更および譲渡と放棄

抵当権の優先弁済効が及ぶ範囲

抵当権の優先弁済効が及ぶ範囲は、

  1. 担保不動産そのもの
  2. 担保不動産の果実
  3. 担保不動産の分離物
  4. 担保不動産の物上代位
  5. 担保不動産の付加一体物

です。

まごころう

抵当権の優先弁済効及ぶ範囲については、かなりデリケートな話題になります。

以下は、あくまでも一般的な考え方であり、ケースごとの裁判所の判断がすべてです。

絶対ではありませんので、留意いただきますようお願いします。

抵当権の優先弁済効がおよぶ範囲:担保不動産

抵当権の優先弁済効は「担保不動産」に及びます。

たとえば、抵当権の実行により「競売」が行われたとします。

競売の結果、担保不動産が5,000万円で売却されたのであれば、

  • 抵当権の順位
  • 債権額

に応じて、5,000万円の範囲内で優先弁済権を主張することができます。

抵当権の優先弁済効がおよぶ範囲:果実

抵当権の優先弁済効は「果実」に及びます。

果実とは、担保不動産の使用・収益によって得られた金銭です。

果実には、

  • 天然果実
  • 法定果実

があります。

民法第88条(天然果実及び法定果実)

物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

民法第88条(天然果実及び法定果実)より引用

天然果実とは、

  • 畑で収穫した野菜
  • 山で収穫した果物
  • 鉱山で採取した石

などです。

ココに注意

法的な解釈にばらつきがあるのですが、原則として、抵当権の優先弁済効は「天然果実」には及びません。

ただし、抵当権の実行などにより「差押え」が行われた場合、抵当権の優先弁済効は「天然果実」にも及ぶ可能性があります。

法定果実とは、賃料のことです。

たとえば、担保不動産が月々10万円で賃貸されているのであれば、賃料という果実が生まれています。

民法第371条

抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

民法第371条より引用

民法第371条では、上記のように定めており、債務不履行があれば、その後に生じた果実について、優先弁済権を主張することができるとしています。

ですので、債務不履行後に優先弁済権を主張することで、賃料による債権の回収が行えます。

抵当権の優先弁済効がおよぶ範囲:分離物

抵当権の優先弁済効は「分離物」に及ぶ可能性があります。

分離物とは、担保不動産に付随していた動産です。

可能性があるとしたのは、

  • 債務者の認知
    (背信的悪意、善意無過失など)
  • 差押えの有無

など、状況によって変わるためです。

たとえば、あなたの家が担保不動産になっていたときに、抵当権の設定後、ホームシアターを設置したとします。

この場合、ホームシアターは担保不動産に設置されているものの、取り外して持ち出すことができるので動産となり「分離物」に該当します。

抵当権の優先弁済効は、

  • 抵当権の実行前に、ホームシアターを持ち出した場合
    →優先弁済効が及ばない可能性が高い
  • 抵当権の実行を知り、あわててホームシアターを持ち出した場合
    →ホームシアターを持ち出した動機などによって、裁判所の判断が変わる

となります。

抵当権の優先弁済効がおよぶ範囲:物上代位

抵当権の優先弁済効は「物上代位」に及ぶ可能性があります。

物上代位とは、

  • 担保不動産が火事で全焼したことで得ることができる火災保険金
    (※保険金請求権)
  • 担保不動産を抵当権が設定されたまま売却したことで得ることができる売却益
    (※代金支払い請求権)
  • 担保不動産を抵当権が設定されたまま賃貸したことで得ることができる賃料収入
    (※賃料支払い請求権)

について、担保不動産に代わって債権額の回収に充当することです。

抵当権の優先弁済効を「物上代位」に及ぼすためには、支払われる金銭が債務者に渡される前に差押えを行う必要があります。

つまり、

  • 火災の事実を知り、さきに火災保険金を差押えたとき
    →抵当権の優先弁済効を主張することができる
  • 火災の事実を知ったが、火災保険金は支払われたあとだったとき
    →抵当権の優先弁済効を主張することができない

となります。

抵当権の優先弁済効がおよぶ範囲:付加一体物

抵当権の優先弁済効は「付加一体物」に及ぶ可能性があります。

付加一体物とは、担保不動産に備え付けられ(付加)、一体となっている資産です。

付加一体物には、

  • 従物
  • 付合物
  • 従たる権利

があるので、それぞれ解説します。

ココに注意

付加一体物については、特約が設定されている場合の例外があります。

抵当権設定契約において、担保不動産から分離することが可能な動産については、抵当権の対象としない旨の特約を定めることができます。
(※分離できないものについては、特約を定めることはできるが、特約は無効になる。)

特約が定められている場合、特約に従って、抵当権の優先弁済効は及びません。

従物

従物とは、担保不動産と完全に結合していないものの、担保不動産と結合して使用されることで価値を発揮する資産です。

たとえば、

  • 物置
  • エアコン

などがあります。

債務者に所有権がある従物については、抵当権の優先弁済効が及ぶ可能性があります。

担保不動産(主物)と従物の価値の大小は、基本的に関係がありません。

たとえば、物置が担保不動産であったときに、

  • 物置の価値:50万円
  • 物置に保管されているダイヤモンド:1億円

であったとしても、ダイヤモンド(従物)の所有者が債務者である場合には、抵当権の優先弁済効が及ぶ可能性があります。

ココに注意

債務者に所有権がない従物には、抵当権の優先弁済効が及ばない可能性が高いです。

たとえば、担保不動産が賃貸住宅であるときに、

  • 債務者(家主)が取り付けたエアコン
    →抵当権の優先弁済効が及ぶ可能性が高い
  • 債務者ではない者(賃借人)が取り付けたエアコン
    →抵当権の優先弁済効力が及ばない可能性が高い

となります。

付合物

付合物とは、担保不動産と結合しており、担保不動産の価値に組み込まれている資産です。

たとえば、

  • 樹木
  • フローリング

などがあります。

債務者に所有権がある付合物については、抵当権の優先弁済効が及ぶ可能性が高いです。

担保不動産(主物)と付合物の価値の大小は、基本的に関係がありません。

たとえば、土地が担保不動産であったときに、

  • 土地の価値:100万円
  • 土地に茂る桃の木:3,000万円

であったとしても、桃の木(付合物)の所有者が債務者である場合には、抵当権の優先弁済効が及ぶ可能性が高いです。

ココに注意

日本の場合、

  • 土地
  • 建物

は別ものとして考えられます。

ですので、桃の木の例では、建物だけに抵当権が設定されている場合、原則として、桃の木に抵当権の優先弁済効は及びません。

従たる権利

従たる権利とは、担保不動産に付着するあらゆる権利です。

たとえば、

  • 土地の地役権
  • 土地の賃借権
  • 建物の賃借権

などがあります。

担保不動産(主物)と従たる権利の価値の大小は、基本的に関係がありません。

土地の賃借権などは、土地に建っている建物よりも価値が高いことが一般的ですが、当然に抵当権の優先弁済効が及ぶと考えられます。


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