土地の収用は、一度効力を発揮すると関係者に大きな影響を与える法的行為です。そのため、収用が行われる前には然るべき手順を踏む必要があります。万が一、落ち度があったために、知らぬ間に収用が決められてしまったとなっては、収用される側とする側で争いに発展するのは明らかです。
今回の記事では、土地収用の手続きから「事業認定の申請」について解説します。土地収用の手続きにおいて、一番最初のステップです。なにごとも最初が肝心というように、関係者への事前説明など重要なイベントが詰まっています。
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・事業認定の申請とは
・事業認定の申請にかかる手続き
事業認定の申請
土地収用では、まず「事業認定の申請」が行われます。都市計画事業の認定を受けないことには、何のために土地収用をするのかわかりません。
事業認定庁
起業者は、公共の利益となる事業を施工するために、土地を収用しようとする場合には、事業の認定を受けなければいけません。都市計画事業の規模によっては、主軸となる事業以外にも細かな事業を行う必要があります。事業内容が多岐にわたる場合、すべての事業について事業の認定を受ける必要があります。
- 認定を行う機関は、国土交通大臣か都道府県知事です。以下のような事業では、国土交通大臣が認定を行います。
- 国または都道府県が起業者である事業
- 起業地(事業を施工する土地)が2以上の都道府県の区域にわたる事業
- 一つの都道府県の区域を越え、または道の区域の全部にわたり利害の影響を及ぼす事業などで一定のもの
「一つの都道府県の区域を越え、または道の区域の全部にわたり利害の影B響を及ぼす事業などで一定のもの」については「結局どういうもの?」という疑問に思うでしょう。これについては、衆議院会議録情報 第024回国会 建設・法務委員会連合審査会 第1号でも論じられており、定義は難しいです。参考までに、条文内で定義されているものを記載します。
- 道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第二条第四項 に規定する会社が行う同法による高速道路に関する事業
- 鉄道事業法による鉄道事業者がその鉄道事業(当該事業に係る路線又はその路線及び当該鉄道事業者若しくは当該鉄道事業者がその路線に係る鉄道線路を譲渡し、若しくは使用させる鉄道事業者が運送を行う上でその路線と密接に関連する他の路線が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)の用に供する施設に関する事業
- 港湾法による港湾施設で国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾に係るものに関する事業
- 航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するものに関する事業
- 電気通信事業法第百二十条第一項に規定する認定電気通信事業者が同項 に規定する認定電気通信事業(その業務区域が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)の用に供する施設に関する事業
- 日本放送協会が放送事業の用に供する放送設備に関する事業
- 電気事業法による一般送配電事業(供給区域が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)、送電事業(供給の相手方たる一般送配電事業者の供給区域が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)、特定送配電事業(供給地点が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)又は発電事業(当該事業の用に供する電気工作物と電気的に接続する電線路が一の都府県の区域内にとどまるものを除く。)の用に供する電気工作物に関する事業
- イからトまでに掲げる事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所又は宿舎その他の施設に関する事業
ここまでに紹介した事業以外は、事業認定を都道府県知事が行います。ただし、起業者は一定の条件下において、国土交通大臣に対して事業の認定を申請する権利があります。国土交通大臣に対して直接申請を行う場合には、都道府県知事に通知をする必要があります。
以下が、条件です。
- 知事が事業の認定を拒否したとき
- 知事が事業認定申請書を受理した日から3か月を経過しても事業の認定に関する処分を行わないとき
事業認定の申請にかかる手続き
説明会
起業者は、事業認定を受けようとするときは、あらかじめ、説明会の開催その他の措置を講じて、事業の目的及び内容について、利害関係者に説明しなければいけません。事前説明会を開催するときには、利害関係者の参加しやすさを考慮して、開催場所や時間を決めなければいけません。
当然、事前説明会の開催は周知する必要があります。遅くとも事前説明会を開催する8日前までに、以下の内容と一緒に事業予定地のある地域の新聞に公告をします。
- 起業者の名称および住所
- 事業の種類
- 事業の施工を予定する土地(事業区域)の所在
- 事前説明会の場所および日時
また、事業について、権利の提供に同意が得られていないこともあります。同意が得られていないときには、対象の権利者に対して遅くとも事前説明会開催の8日前までに通知を発送しなければいけません。
事前説明会は、開催しなかったときや、開催の手続きに瑕疵(手落ち)があった場合には、事業認定の申請が認めてもらえません。当然ですが、事前説明会後に事業計画に大幅な変更があったときには、あらためて事前説明会を開催する必要があります。
事業認定申請書
起業者は、事業の認定を受けようとするときは、事業認定申請書と一定の添付書類を国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければいけません。事業認定申請書には、起業者の名称、事業の種類、収用または使用の別を明らかにした起業地、事業の認定を申請する理由を記載します。
提出した事業認定申請書・添付書類に欠陥がある場合には、補正をする必要があります。とはいえ、簡単に修正できるものではないので、国土交通大臣または都道府県知事は、相当な期間を定めて補正させるとされています。補正をしない場合には、却下されます。
その他の注意点
以下に、その他の注意点を記載します。
- 必要があると認められるときには、学識経験者の意見を求めることができる。
- 利害関係者から請求があったときそのほか必要があると認めるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない。
- 認定要件に該当しないことが明らかな場合を除き、市町村長に事業認定申請書などの写しを送付する。
- 市町村長は、一定事項を公告し、受け取った書類を2週間縦覧に供する。
- 利害関係者は、縦覧期間内に、知事に意見書を提出できる。