中古住宅を購入するときの築年数の決め方について、売却をする場合の考え方を解説しています。
中古住宅を購入後、売却をする場合には、シナリオに合わせて
- 資金計画
- 出口戦略
をしっかりと考える必要があります。
モデルケースを用いて、どういうことを考える必要があるのか詳しく解説しています。
さくっと要点を知る
- 中古住宅の購入後、売却する場合には、資金計画および出口戦略について考える
- 築10年〜15年で売却する場合には、手元資金と住宅ローンの残債のバランスが重要
- 築25年〜35年で売却する場合には、土地の価値と住宅ローンの完済について考える
- 中古住宅の出口戦略は、土地の価値についてしっかりと考えること
さらに詳しく
中古住宅の購入ガイドでは、
- 良い中古住宅の効率的な見つけ方
- 割安・割高をしっかりと見分ける方法
- すこしでも安く中古住宅を購入する方法
- 中古住宅にかかる全費用(購入後も含めて)
- 売却や建て替えに適した費用性の高い築年数
など、より賢く、よりお得に、中古住宅を購入する方法についてまとめています。
中古住宅の購入後、売却する場合のシナリオ
中古住宅の購入後、売却する場合には、
- 資金計画
- 出口戦略
について、しっかりと考える必要があります。
どちらか一方でも欠けていると、思ったように売却が進まず、そのまま住み続けることになります。
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
中古住宅の流動性が有効に働くのは、築10年〜15年までです。
築10年〜15年を超えると、建物の価値(および魅力)がなくなり、買い手が付きにくくなります。
中古住宅の売却後に、
- 新築住宅に住み替える
- 新しい中古住宅に住み替える
- 新しい中古マンションに住み替える
といったプランを検討している場合には、築10年〜15年での売却シナリオを選択するのが利口です。
建物の価値は、甘めに見積もっても、
築年数 | 建物の価値 |
新築当初 | 坪単価50万円 (建物価値:100%) |
築1年 | 坪単価40万円 (建物価値:80%) |
築5年 | 坪単価35万円 (建物価値:70%) |
築10年 | 坪単価30万円 (建物価値:60%) |
築20年 | 坪単価15万円 (建物価値:30%) |
築30年 | 坪単価0万円 (建物価値:0%) |
といった落ち方をします。
築10年〜15年のときには、40%〜50%ほど新築当初に比べて、価値が落ちます。
建物に一定の価値が認められるといっても、市場で魅力的に見えるかどうかは別物です。
中古住宅市場に流通している他の物件と比べて、築年数による優位性が保たれるかどうかが「魅力」に直結します。
今、あなたは中古住宅を探していると思いますが、
- 築10年〜15年の中古住宅
- 築20年〜35年の中古住宅
について、どちらが建物に魅力を感じるかは、言うまでもないでしょう。
売れるかどうかは価格によるとはいえ、築10年〜15年を超えると「建物の魅力」が大幅に減退するのは、避けようのない事実です。
売却をするときに、建物の価値も認められたいのであれば、築10年〜15年での売却を目安にしてください。
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
流動性が有効に働くのが築10年〜15年の中古住宅といえども、築25年〜35年で売却することは可能です。
ただし、築25年〜35年で中古住宅を売却する場合には、
- 建物に魅力はない
- 土地の魅力のみ
で、売却を目指すことを前提に考えてください。
中古住宅の売却後に、賃貸住宅に住み替えるプランを検討している場合には、築25年〜35年での売却シナリオも有効に働きます。
(※資金計画次第では、ほかの選択肢も考えられる。)
たとえば、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 2,250万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 1,250万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 2,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
のような中古住宅を購入したとします。
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合、建物の価値はゼロ円です。
とはいえ、土地は100㎡(30.25坪)あるので、坪74.5万円の土地であれば、
30.25坪 × 74.5万円(坪単価) = およそ2,250万円
の価値があります。
売却にかかる費用として、
- 解体費用
- 税金
- その他費用
などを差し引きしても、2,000万円前後は手元に残る可能性があります。
月々10万円の賃貸住宅であれば、
2,000万円 ÷ 10万円(賃料) ÷ 12ヶ月 = およそ16.5年間
となり、およそ16.5年分の居住費になるので、十分な資金です。
(※資金計画がしっかりとしている場合には、新居購入時の頭金としても十分に有効な金額です。)
シナリオごとに考えたい資金計画および築年数
中古住宅の購入後に、売却をする場合には、
- 築10年〜15年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
- 築25年〜35年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
のいずれのシナリオなのかに合わせて、資金計画および築年数をしっかりと考える必要があります。
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合の資金計画および築年数
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合には、築5年〜10年の中古住宅を購入します。
築1年の中古住宅であっても問題はないのですが、「売れ残りの建売住宅」である可能性があり、リスクを伴います。
築1年の中古住宅を購入する場合には、「訳あり中古住宅」以外の購入は避けてください。
(※家主の急な転勤などで、売却せざるを得ない中古住宅)
さらに詳しく
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合には、住宅ローンの残債に十分に注意してください。
たとえば、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 2,250万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 1,250万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 2,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
建物が新築された日 | 平成10年4月1日 |
築年数 | 築10年 |
住宅ローンに関する条件 | |
借入金額 | 2,500万円 |
借入期間 | 20年 |
借入金利 | 1.05% |
団体信用生命保険 | 機構団体信用生命保険 |
借入金融機関 | ARUHI(フラット35S) |
といった条件の中古住宅を購入したとします。
上記の中古住宅を築15年のとき(購入から5年後)に売却した場合、
- 土地の価格:2,250万円
- 建物の価格:900万円前後
となり、総額3,150万円前後での売却になる可能性が高いと考えられます。
売却にかかる費用を差し引くと、2,900万円前後が手元に残ります。
5年後の住宅ローンの残債は、およそ1,850万円なので、
2,900万円(売却後の手元資金) - 1,850万円(住宅ローンの残債) = 1,150万円
となり、あなたが自由に使える手元資金は1,150万円になります。
自由に使える手元資金1,150万円のうち、
- 150万円を新規購入の諸費用
- 1,000万円を新規借り入れの頭金
にあてることができれば、ほぼ同条件で新たに住宅を購入することが可能です。
しかし、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 2,250万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 1,250万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 2,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
建物が新築された日 | 平成10年4月1日 |
築年数 | 築10年 |
住宅ローンに関する条件 | |
借入金額 | 3,500万円 |
借入期間 | 25年 |
借入金利 | 1.05% |
団体信用生命保険 | 機構団体信用生命保険 |
借入金融機関 | ARUHI(フラット35S) |
といった条件で中古住宅を購入している場合には、
- 売却後の手元資金:2,900万円前後
- 売却時の住宅ローン残債:2,750万円前後
なので、
2,900万円(売却後の手元資金) - 2,750万円(住宅ローンの残債) = 150万円
となり、あなたが自由に使える手元資金は150万円になります。
自由に使える手元資金が150万円しかない場合、新規購入の諸費用分にしかなりません。
最初に中古住宅を購入した年齢が30歳だった場合、5年後の売却時点では35歳になっています。
35歳のときに、頭金なしで同条件の住宅ローンを組めるかというと、かなり厳しいと言わざるを得ません。
また、最悪の場合、住宅ローンの残債を売却資金で賄うことができず、売却そのものを諦めなければならないことも考えられます。
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合には、
- 想定売却価格(および手元資金)
- 住宅ローンの残債
- 新規借り入れ時の年齢
などを考慮して、無理のないプランを立ててください。
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合の資金計画および築年数
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合には、あまり築年数にこだわる必要はありません。
(とはいえ、築10年〜15年前後がベストと考えられる。)
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合には、築年数にこだわるよりも、
- 住宅ローンが完済できていること(売却時)
- 土地に価値があること
を意識してください。
たとえば、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 2,250万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 1,250万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 2,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
建物が新築された日 | 平成10年4月1日 |
築年数 | 築10年 |
住宅ローンに関する条件 | |
借入金額 | 2,500万円 |
借入期間 | 20年 |
借入金利 | 1.05% |
団体信用生命保険 | 機構団体信用生命保険 |
借入金融機関 | ARUHI(フラット35S) |
といった条件の中古住宅を購入したとします。
上記の中古住宅を築35年のとき(購入から25年後)に売却した場合、
- 土地の価格:2,250万円
- 建物の価格:ゼロ円
となり、総額2,250万円前後での売却になる可能性が高いと考えられます。
売却にかかる費用を差し引くと、2,000万円前後が手元に残ります。
20年後には、住宅ローンは完済できているので、あなたが自由に使える手元資金は2,000万円です。
自由に使える手元資金が2,000万円あるのであれば、
- 16.5年分の居住費にする(賃貸・賃料10万円の場合)
- 2,000万円前後の中古住宅(およびマンション)に住み替える
といった選択を取ることが可能です。
しかし、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 2,250万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 1,250万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 2,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
建物が新築された日 | 平成10年4月1日 |
築年数 | 築10年 |
住宅ローンに関する条件 | |
借入金額 | 3,500万円 |
借入期間 | 35年 |
借入金利 | 1.05% |
団体信用生命保険 | 機構団体信用生命保険 |
借入金融機関 | ARUHI(フラット35S) |
といった条件で中古住宅を購入している場合には、
- 売却後の手元資金:2,000万円前後
- 売却時の住宅ローン残債:650万円前後
なので、
2,000万円(売却後の手元資金) - 650万円(住宅ローンの残債) = 1,350万円
となり、あなたが自由に使える手元資金は1,500万円になります。
月々10万円の賃貸住宅に住み替えるのであれば、
1,350万円 ÷ 10万円 ÷ 12ヶ月 = 11.25年分
となり、居住費におよそ5年分の差が出ます。
最初に中古住宅を購入した年齢が30歳だった場合、25年後の売却時点では55歳になっています。
借り入れ時の年齢が55歳である場合、諸費用を差し引きして、1,250万円を頭金にできたとしても、
3,000万円(住み替え予定の住宅) - 1,250万円(売却後の手元資金) = 1,750万円(新規借り入れ額)
となり、
- 借り入れができない可能性
- 借り入れができても返済の負担が大きい可能性
(※返済期間10年・金利1.05%の場合、月々返済額は153,687円)
があります。
仮に退職金に期待ができるとしても、ほとんどが居住費に消えてしまうので、老後資金に不安が残ります。
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合には、
- 土地の価値
- 住宅ローンの完済
などを考慮して、無理のないプランを立ててください。
いずれのシナリオでも絶対に考えておきたい出口戦略
出口戦略とは、最悪のプランを想定して、経済的損失を最小限に抑えるための戦略です。
中古住宅の場合、土地を最重視することが、そのまま出口戦略になります。
すでに紹介した、
- 築10年〜15年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
- 築25年〜35年で中古住宅を売却する場合のシナリオ
のいずれの場合にも、土地の価値が重要な役割を担っています。
築10年〜15年で中古住宅を売却する場合の失敗シナリオでは、売却した結果、自由に使える手元資金が150万円になりました。
築25年〜35年で中古住宅を売却する場合の失敗シナリオでは、売却した結果、自由に使える手元資金が1,250万円になりました。
しかし、いずれのシナリオであっても、土地の価値がしっかりと担保されているので、売却はできています。
自己資金にあわせて、最適な賃料の賃貸住宅を選ぶことができれば、住む家に困ることはないでしょう。
しかし、
土地に関する条件 | |
土地の代金(契約書記載金額) | 1,000万円 |
土地の面積 | 100㎡ |
建物に関する条件 | |
建物の代金(契約書記載金額) | 2,500万円 |
建物の再調達価格(再建築価値) | 3,000万円 |
建物の床面積 | 100㎡ |
建物が新築された日 | 平成10年4月1日 |
築年数 | 築10年 |
住宅ローンに関する条件 | |
借入金額 | 3,500万円 |
借入期間 | 35年 |
借入金利 | 1.05% |
団体信用生命保険 | 機構団体信用生命保険 |
借入金融機関 | ARUHI(フラット35S) |
といった条件で中古住宅を購入している場合には、
築10年で売却するシナリオ | 築35年で売却するシナリオ | |
予想売却価格 | 2,800万円前後 (土地:1,000万円、建物:1,800万円) |
1,000万円前後 (土地:1,000万円、建物:ゼロ円) |
住宅ローンの残債 | 3,000万円前後 | 650万円 |
売却時の年齢 | 35歳 | 55歳 |
手元に残る資金 | マイナス200万円 (貯金などを切りくずさなければ、売却ができない) |
350万円 (賃貸・賃料10万円であれば、およそ3年分の居住費) |
となり、いずれも不本意な結果になります。
中古住宅の購入後に、売却する場合には、
- シナリオに合わせた資金計画
- 土地を最重視する出口戦略
について、しっかりと考えるようにしてください。