前回の記事では、不動産投資のリスクについてお話しました。今回は不動産の価格についてのお話です。どのようなプロセスで不動産の価格が決まるのか、説明ができますか?
不動産の価格が決まるプロセスについて理解をしておくと、その値段が妥当なのか逆算することもできるようになります。また、欲しい物件が出てきたときに、その物件が高いのか安いのかをアバウトに把握できるようになります。もちろん、値引き交渉も有利に進めることができますので、重要なことです。
不動産の価格決定プロセスは、基本的に新築でも中古でも一緒です。売主が不動産業者だからといって適正価格になっているわけではありません。むしろ、利益が過分に乗っていることもあります。十分に注意しましょう。
【この記事からわかること】
- 不動産価格の決まり方
- 不動産価格の決定プロセス
- 不動産価格が不当に水増しされる理由
- 不動産売却価格の決まり方
不動産価格は売主が決める
不動産価格は売主が決める
まず不動産価格は売主が決めます。より正しくは、不動産の売り出し価格は売主が決めます。考えてみれば当たり前なのですが、一般的に不動産価格を決めているのは不動産屋だと思われがちです。
不動産屋が決めようが、売主が決めようが関係ないじゃないかと思われるかもしれませんが、これは大きな違いです。不動産の価格とは、絶対的な正解というものが存在しません。プロでも適正な価格を割り出すのは難しいのです。
その不動産価格をプロの不動産会社ではなく、個人の売主が決めているわけですから、価格については疑ってかかるべきなのです。このことを知らずに不動産価格を鵜呑みにしてしまうと、どんなにいい物件を見つけても買い物が上手にできず、割高な不動産を掴むことになってしまいます。リフォーム費用など実態を伴うコスト高とは違って、適正価格との乖離によるコスト高は、ただの無駄遣いです。
不動産会社に査定を依頼する
不動産の売り出し価格を決めるのは売主だとお話しました。とはいえ、何も相談せずに決める(決められる)方は稀です。ですので、皆さん一度は不動産会社に査定を依頼します。
最近は不動産会社に直接依頼せずに、インターネットを利用した査定依頼サービスを活用する人も増えています。古い中古住宅の売り方の解説記事でも同じようなことを解説させていただきましたが、物件の適正価格を割り出し、高値で売るには複数社の査定は必須です。たくさんの業者とスケジュール合わせや連絡の取り合いなどをする手間が省けるという意味では、一度活用する価値は十分あります。
査定を依頼すると、不動産会社の査定部門の方が物件を確認しにきます。現地での査定は、長くて2時間程度でしょう。早ければ30分ほどで完了してしまいます。
査定書と希望価格を照らし合わせる
査定が終わったら、不動産会社から査定書が提出されます。ほとんどの売主は、査定書で提示された価格を売り出し価格とします。一応、プロが査定した価格なので市場価格からあまりにも乖離した価格にはなっていません。ですが、買主となるあなたは鵜呑みにしてはいけません。
不動産価格の代表的な3つの水増し
不動産価格の代表的な3つの水増し
前の章の最後で、プロが査定した価格だといっても鵜呑みにしてはいけないといいました。これについては、理由は知らなくても鵜呑みにしなければいいのかというとそうではありません。むしろ、価格交渉などを行う上では、理由を知っている必要があります。
売主側の都合や、不動産屋の都合で価格が水増しされていることはよくあることです。ここでは代表的な3つの水増しについて解説します。この水増し分は無駄なコストでしかないので、絶対にカットするようにしましょう。
残債による価格の水増し
まず売主の都合で水増しが行われているときに最も多いのが、残債による水増しです。残債とは、住宅ローンなどの借金が残っている額のことです。残債が残っていると抵当権抹消登記が行えないので、実質的に売ることができないという背景があります。
たとえば、あるマンションの1室を売ろうと考えているとします。オーナーは、このマンションを購入するときに住宅ローンを使っており、その残債が2,500万残っています。オーナーに貯金がゼロ円だとすると、この物件は2,500万円以下では売ることができないのです。
査定の結果、3,000万円の価値があると判断されたなら問題ありません。しかし、2,300万円の価値ですと判断されたときには、売主は「200万円水増しして売ろう」と考えます。結果、適正価格が2,300万円にも関わらず、市場には2,500万円で商品が並ぶということになります。
媒介契約を結ぶための価格の水増し
つぎは不動産会社の都合で水増しが行われているケースです。不動産会社は価格を査定した後、オーナーと媒介契約を結びたいと考えています。媒介契約を結ぶということは、仕事を受注するということであり、これがなければ1円の利益も生まれません。
売主も人間ですので、自分の不動産に愛着などがあります。また、当たり前ですが少しでも高く売りたいと考えています。ですので、売主としては成約する価格(=売れる価格)ではないと分かっていても、高い価格をつけてきた不動産屋に依頼をしやすいのです。このようなことが当たり前に行われるので、不動産屋も価格が売値から多少乖離したとしても、色を付けた価格を提示するのです。
指値を意識した価格の水増し
最後に売主と不動産屋が同じ目的で価格を水増ししているケースです。それが指値を意識した値決めです。指値とは価格交渉のときに「この値段なら買います」という値段の指定を受けることです。不動産売買では必ずといっていいほど、指値による値引き交渉が行われます。
ですので、売主と不動産屋は売り出し価格を決定する時点で、指値を意識した値決めをしていることが多々あります。具体的には100万円~200万円は水増ししていると考えても、そう間違いはないでしょう。値切り交渉をどれだけしても、粘って値切りに応じないというケースも稀にありますが、大体は指値を意識しているので了解の返事が数日中に来ます。
不動産屋としても、仲介手数料は多少減るものの値切ったほうがメリットが大きいと考えているので、指値による値切りに応じるのには積極的です。買主は値切れたことで満足感を得ることができるので、その後の交渉や打合せはスムーズに進みやすくなります。潤滑油として用意されている水増し価格ですので、カットし損ねては大損です。
最終的な売却価格は市場が決める
最終的な売却価格は市場が決める
今まで説明したようなプロセスを辿って、不動産の売り出し価格は決定されます。しかし、実際に成約する価格(=売却価格)は、売り出し価格と必ずしも一緒ではありません。むしろ、中古市場などでは指値が当たり前に行われますので、より安値で成約しているケースが多々あります。
どれだけ高い値段で出したとしても、市場が「うん」といわなければ売れません。市場といわれると大げさに感じるかもしれませんが、つまり、あなたのことです。買主であるあなたが「これなら買いだ!」とならない限り、絶対に売れはしません。最終的な売却価格を決めるのは、あなたです。
査定と同じプロセスを辿る
売却価格を決めるのは、あなただとお話しました。では、売却価格(=適正価格)を割り出すにはどうすればよいのでしょうか。それは、不動産屋が行った査定と同じプロセスを辿るのです。
物件の種類(土地、一戸建て、マンション)などによって価格査定のプロセスは異なります。路線価などを活用して、より具体的に価格を査定するといったことも行われています。しかし、重要なのは「市場が決めた価格こそが適正価格」ということなんです。
つまり、価格の査定とは市場の動向を確認することが8割を占めるといっても過言ではありません。そのためには、周辺の物件(マンションであれば同じマンションの1室など)がいくらで売れたのか履歴を辿るのが一番です。
以前は、成約価格の履歴を知ることができるのは不動産屋だけでした。しかし、今は一般人でもデータにアクセスできるサービスが用意されています。不動産投資において、相場を知ることは絶対にはずすことのできないポイントなので必ずおさえるようにしましょう。
まとめ
不動産の売り出し価格を決めるのは売主です。ほとんどの売主は、不動産屋の査定書を参考にして価格を決定します。希望売却価格と乖離が激しくなければ、ほぼ査定書どおりの額を売り出し価格とします。
売り出し価格は水増しされていることが多々あります。これらの水増し価格は無駄なコストでしかないので、購入時には必ずカットするようにしましょう。なぜ水増しされているのか理由を把握することも値引き交渉を有利に進めるためには欠かせないことです。
最終的な売却価格は市場が決定します。市場とは、買主であるあなたのことです。よい投資物件を見つけたとしても、割高な価格で買ってはすべてが無駄になります。適正価格をしっかりと調べて、割高な物件を掴んでしまわないように入念な調査をしましょう。