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【中古住宅の購入】建物価値を割戻して「割高・割安」を判断する方法


中古住宅の建物価値を割戻して「割高・割安」を判断する方法について解説している記事です。

中古住宅を購入するときには、比較検討がもっとも難しく、とくに建物価値がブラックボックスになります。

中古住宅の建物価値を比較するためには、

  1. 中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算する
  2. 中古住宅の建物価値を計算する
  3. 中古住宅の建物条件について整理する

という手順を正しく行う必要があります。

シュミレーションを交えながら、どのように比較するのか解説します。

さくっと要点を知る

  • 中古住宅の建物価値を比較するには、中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算する必要がある
  • 中古住宅の建物価値を比較するには、建物価格および建物条件を整理する
  • 同じ価格の中古住宅であっても、建物価値を比較するとまったく違う結論になる

さらに詳しく


中古住宅の購入ガイドでは、

  • 良い中古住宅の効率的な見つけ方
  • 割安・割高をしっかりと見分ける方法
  • すこしでも安く中古住宅を購入する方法
  • 中古住宅にかかる全費用(購入後も含めて)
  • 売却や建て替えに適した費用性の高い築年数

など、より賢く、よりお得に、中古住宅を購入する方法についてまとめています。


中古住宅の建物価値を比較する手順

中古住宅の建物価値を比較するためには、

  1. 中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算する
  2. 中古住宅の建物価値を計算する
  3. 中古住宅の建物条件について整理する

という手順をとります。

中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算する

中古住宅は、

  • 土地
  • 建物

によって構成されています。

中古住宅の最低資産価値を決めるのは「土地の価格」です。

建物の価値は、木造であれば築25年で急速に減少しはじめ、築35年でゼロと考えるのが一般的です。

しかし、どれだけの時間が流れても、土地の値段がゼロになることは考えにくいです。

言い換えれば、

  • 土地の価値は「普遍的(多少の変動を伴う)」
  • 建物の価値は「流動的(大きく変化する)」

となります。

ですので、まずは中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算します。

さらに詳しく

詳しい方法については、以下の記事を参考にしてください。

路線価を使って中古住宅の最低資産価値(土地の価格)を計算する方法

中古住宅の建物価値を計算する

中古住宅の最低資産価値(土地の価格)が算出できたら、

  • 土地
  • 建物

を切り離して、中古住宅の建物価値を計算します。

計算は簡単で、

中古住宅の価格 - 中古住宅の最低資産価値(土地の価格) = 中古住宅の建物価値

です。

中古住宅の建物価値を計算することで、

  • 別の地域にある中古住宅を比較することができる
  • 建物条件の異なる中古住宅を比較する準備ができる

ようになります。

中古住宅の建物条件について整理する

中古住宅の建物価値が算出できたら、中古住宅の建物条件について整理します。

中古住宅の建物条件とは、

  • 建物面積
  • 築年数
  • 施工業者
  • 接道状況
  • 間取り
  • 設備

などです。

中古住宅の建物について、当初価値(新築時の価値)を比較するときには、

  • 建物面積
  • 築年数
  • 施工業者

が重要な要素になり、建物価値を割り戻すことで、建物について割高・割安が比較できるようになります。

中古住宅の建物について、今後の費用(リフォーム費用など)を含めて比較するときには、

  • 築年数
  • 接道状況
  • 間取り
  • 設備

が重要な要素です。

実際に中古住宅の建物価値を比較してみましょう

以後、実際に中古住宅の建物価値を比較していきます。

どのようにして中古住宅の建物価値を比較するのか、参考にしてみてください。

シュミレーションに使う中古住宅について

シュミレーション では、

  • 中古住宅A
  • 中古住宅B

の2つを用意します。

比較したい中古住宅がいくつになっても、やることは同じですので、安心してください。

中古住宅Aの条件は、

中古住宅の価格 3,480万円
最低資産価値(土地の価格) 1,500万円
(238.21㎡・72.05坪)
建物価値 1,980万円
建物面積 108.47㎡
(32.81坪)
築年数 築5年
施工業者 業者A
(新築時平均坪単価65万円)
接道状況 北西4m・私道
(43条但し書き道路として再建築可)
間取り 4LDK
備考 駐車場3台分
プロパンガス
地目:畑

です。

中古住宅Bの条件は、

中古住宅の価格 3,380万円
最低資産価値(土地の価格) 1,750万円
(163.45㎡・49.44坪)
建物価値 1,630万円
建物面積 136.25㎡
(41.21坪)
築年数 築15年
施工業者 業者B
(新築時平均坪単価80万円)
接道状況 北西6m・私道・位置指定有り
間取り 5LDK
備考 駐車場2台分
都市ガス
地目:宅地

です。

建物価値を割り戻して、割高・割安を比較する

建物の当初価値を計算するときには、

  • 建物価値
  • 建物面積
  • 築年数
  • 施工業者

の条件を活用します。

中古住宅A・Bの条件をまとめると、

中古住宅A 中古住宅B
建物価値 1,980万円 1,630万円
建物面積 108.47㎡
(32.81坪)
136.25㎡
(41.21坪)
築年数 築5年 築15年
施工業者 業者A
(新築時平均坪単価65万円)
業者B
(新築時平均坪単価80万円)

となります。

前提として、建物の価値は、

築年数 建物の価値
新築当初 建物価値:100%
築1年 建物価値:80%
築5年 建物価値:70%
築10年 建物価値:60%
築15年 建物価値:45%
築20年 建物価値:30%
築30年 建物価値:0%

といった落ち方すると仮定します。

ですので、中古住宅A・Bを比較すると、

中古住宅A 中古住宅B
坪単価(新築当初) 坪単価65万円 坪単価80万円
築年数 築5年
(建物価値:70%)
築15年
(建物価値:45%)
現在坪単価(想定) 坪単価45.5万円
(坪単価65万円 × 70%)
坪単価36万円
(坪単価80万円 × 45%)
建物面積 108.47㎡
(32.81坪)
136.25㎡
(41.21坪)
建物価値(想定) 1,492.85万円
(32.81坪 × 坪単価45.5万円)
1,483.56万円
(41.21坪 × 坪単価36万円)
建物価値(現在) 1,980万円 1,630万円
建物価値の比較
(割高・割安)
24.6%割高
(1,980万円 - 1,492.85万円) ÷ 1,980万円
9.0%割高
(1,630万円 - 1,483.56万円) ÷ 1,630万円

となります。

結論としては、

  • 中古住宅Aの建物価値は、割り戻し価値と比較すると、24.6%割高である
  • 中古住宅Bの建物価値は、割り戻し価値と比較すると、9.0%割高である

となります。

割安であることがベストですが、物件資料を比較している段階で「割安」の物件はあまり出てきません。

値段を決めている不動産業者もプロですので、

  • 妥当な建物価値を計算する
  • 値引きを想定した上乗せをする

という流れで価格を決めるため、おおむね5%〜15%は割高になることが多いです。

ですので、物件資料による比較段階では「割高10%以内」であれば、値引き交渉によって適正価格で購入できる可能性が高いです。

施工業者(および新築当初坪単価)がわからなくても、逆算することに意味がある

施工業者(および新築当初坪単価)を知るには、

  • 建物の登記事項証明書を取得する
  • 不動産業者に問い合わせる

などの方法がありますが、必ずしも正確な数字が分かるとは限りません。

施工業者(および新築当初坪単価)が正確に分からない場合には、割り戻し価値を計算する意味がないのか?といえば「NO」です。

たとえば、中古住宅Aの施工業者(および新築当初坪単価)としても、

中古住宅A
坪単価(新築当初) 坪単価?万円
建物価値(現在) 1,980万円
築年数 築5年
(建物価値:70%)
建物価値(割戻) 2,828.57万円
(1,980万円 ÷ 70%)
建物面積 108.47㎡
(32.81坪)
適正坪単価(新築当初) 坪単価86.21万円
(2,828.57万円 ÷ 32.81坪)

となります。

結論としては、

  • 新築当初の坪単価86.21万円以上であれば、割安
  • 新築当初の坪単価86.21万円以下であれば、割高

ということになります。

仮に施工業者名(低価格ハウスメーカー)だけがわかっているのであれば、坪単価86.21万円以上の価値があるとは考えられないので、割高の可能性が濃いと結論づけられます。

中古住宅の建物について、今後の費用(リフォーム費用など)を比較する

今後の費用(リフォーム費用など)について比較をするときには、

  • 築年数
  • 接道状況
  • 間取り
  • 設備

が重要な要素になります。

大前提として「接道状況」を確認する

大前提ですが、「接道状況」には十分に注意をしてください。

一般的に、

  • 前面道路の幅員6m以上
  • 敷地の接道距離2m以上

が確保されていれば、増改築(および建て替え)はできると言われます。

しかし、

  • 前面道路の幅員が狭すぎる
  • 敷地の接道距離が短すぎる
  • 土地の建ぺい率・容積率が小さすぎる

といった場合には、増改築(および建て替え)ができないことがあるので注意が必要です。

今回のケースでは、

  • 中古住宅A:北西4m・私道(43条但し書き道路として再建築可)
  • 中古住宅B:北西6m・私道・位置指定有り

となっているので、中古住宅Bは問題なさそうですが、中古住宅Aは危ないと言えます。

築年数とリフォーム費用(建て替えを想定)

一般的に、木造住宅は築10年を経過したあたりからリフォームをする必要が出てきます。

代表的なリフォームには、

  • キッチン
  • トイレ(簡易)
  • トイレ(全体)
  • お風呂
  • 給湯器の交換
  • 洗面台の交換
  • 外壁塗装
  • 屋根塗装
  • 畳の表替え
  • 畳替え
  • クロスの張替え
  • フローリングの張替え

などが挙げられます。

項目別に、

項目 耐用年数の目安 金額の目安 必要性
キッチン 15年前後 50万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
トイレ(簡易) 5年前後 5万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
トイレ(全体) 15年前後 15万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
お風呂 15年前後 100万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
給湯器の交換 10年前後 20万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
洗面台の交換 15年前後 10万円前後 不便がなければ、故障時のみでよい。
外壁塗装 10年前後
(※塗料の種類による)
50万円前後 定期的に行いたい。
(※躯体に影響を及ぼすため)
屋根塗装 10年前後
(※塗料の種類による)
30万円〜50万円前後 定期的に行いたい。
(※躯体に影響を及ぼすため)
畳の表替え 5年前後 3万円〜5万円前後 美観が気にならなければ、不要。
畳替え 10年前後 6万円〜10万円前後 美観が気にならなければ、不要。
クロスの張替え 10年前後 50万円前後 美観が気にならなければ、不要。
フローリングの張替え 15年前後 30万円前後 美観が気にならなければ、不要。

となります。

主要なリフォーム項目のみを抜粋すると、

  • キッチン
  • トイレ(全体)
  • お風呂
  • 給湯器の交換
  • 外壁塗装
  • 屋根塗装

の6つに絞られます。

築35年までのリフォーム費用を計算すると、

新築 築5年 築10年 築15年 築20年 築25年
キッチン 100万円
(50万円 × 2回)
50万円
(50万円 × 1回)
50万円
(50万円 × 1回)
50万円
(50万円 × 1回)
0万円
(50万円 × 0回)
0万円
(50万円 × 0回)
トイレ(全体) 30万円
(15万円 × 2回)
15万円
(15万円 × 1回)
15万円
(15万円 × 1回)
15万円
(15万円 × 1回)
0万円
(15万円 × 0回)
0万円
(15万円 × 0回)
お風呂 200万円
(100万円 × 2回)
100万円
(100万円 × 1回)
100万円
(100万円 × 1回)
100万円
(100万円 × 1回)
0万円
(100万円 × 0回)
0万円
(100万円 × 0回)
給湯器の交換 60万円
(20万円 × 3回)
40万円
(20万円 × 2回)
40万円
(20万円 × 2回)
20万円
(20万円 × 1回)
20万円
(20万円 × 1回)
0万円
(20万円 × 0回)
外壁塗装 150万円
(50万円 × 3回)
100万円
(50万円 × 2回)
100万円
(50万円 × 2回)
50万円
(50万円 × 1回)
50万円
(50万円 × 1回)
0万円
(50万円 × 0回)
屋根塗装 150万円
(50万円 × 3回)
100万円
(50万円 × 2回)
100万円
(50万円 × 2回)
50万円
(50万円 × 1回)
50万円
(50万円 × 1回)
0万円
(50万円 × 0回)
総費用 690万円 405万円 405万円 285万円 120万円 0万円

となります。
(※入居時に新品に交換していることを想定)
(※築35年で建て替えすることを想定)

ですので、

  • 中古住宅A(築5年):想定リフォーム費用405万円
  • 中古住宅B(築15年):想定リフォーム費用285万円

となります。

さらに詳しく

詳しくは、以下のページを参考にしてください。

【築年数の決め方】中古住宅の購入後、建て替えをする場合の考え方

総合評価

中古住宅A・Bの条件をまとめると、

大項目 小項目 中古住宅A 中古住宅B
土地 最低資産価値(土地の価格) 1,500万円
(238.21㎡・72.05坪)
1,750万円
(163.45㎡・49.44坪)
接道状況 北西4m・私道
(43条但し書き道路として再建築可)
北西6m・私道・位置指定有り
最低資産価値の確保(再販性) やや懸念が残る 十分に確保されている
建物 建物価値 1,980万円 1,630万円
建物面積 108.47㎡
(32.81坪)
136.25㎡
(41.21坪)
築年数 築5年 築15年
施工業者 業者A
(新築時平均坪単価65万円)
業者B
(新築時平均坪単価80万円)
建物価値(想定) 1,492.85万円
(32.81坪 × 坪単価45.5万円)
1,483.56万円
(41.21坪 × 坪単価36万円)
建物価値の比較
(割高・割安)
24.6%割高
(1,980万円 - 1,492.85万円) ÷ 1,980万円
9.0%割高
(1,630万円 - 1,483.56万円) ÷ 1,630万円
リフォーム リフォーム費用(想定) 405万円 285万円
増改築(および建て替え)の可否 やや懸念が残る 十分に確保されている

となります。

中古住宅Aの結論は、

  • 土地の最低資産価値は1,500万円あるが、売れるかというと微妙
  • 建物の価値は24.6%割高なので、値引き交渉をしても適正価格にするのは難しい
  • リフォーム費用は405万円で、接道状況を加味すると、増改築(および建て替え)が難しい

となります。

中古住宅Bの結論は、

  • 土地の最低資産価値は1,750万円あり、買い手が見つかる見込みもある
  • 建物の価値は9.0%割高だが、値引き交渉によって適正価格にできる見込みがある
  • リフォーム費用は285万円で、接道状況も悪くないので、増改築(および建て替え)ができる見込みがある

となります。

今回のケースでいえば、中古住宅Bは購入しても良い物件です。


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