登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産を調べるうえで欠かせない書類です。
はじめて登記簿謄本を目にした方は、見慣れない形式に困ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、登記簿謄本の読み方・読みほどき方についてサンプルを使って解説します。
- 表題部(土地および建物)
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
- 共同担保目録
について、ひとつひとつ解説していきます。
※サンプルでは見やすさの観点から「要約書」を使っています。
※要約書と登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている内容は変わりません。
-
-
【登記事項証明書】取得方法と注意点
不動産について調べたり、理解しようとするときに必要不可欠な書類が「登記事項証明書」です。登記事項証明書には、対象となる不動産のこれまでの歩みと現状が記されています。簡単な形状や権利関係をただしく把握するのに、とても重要な書類です。
この記事では、登記事項証明書の基本から取得方法まで解説します。不動産についての第一歩になる方も多いかもしれませんので、できるだけ丁寧に解説を進めます。一歩一歩進めていけば、必ず登記事項証明書を入手できるので頑張りましょう。
この記事からわかること
- 登記簿謄本(登記事項証明書)の読み方
- 登記簿謄本(登記事項証明書)の構成
- 表題部(土地)の読みほどき方
- 表題部(建物)の読みほどき方
- 権利部(甲区)の読みほどき方
- 権利部(乙区)の読みほどき方
- 共同担保目録の読みほどき方
登記簿謄本(登記事項証明書)の読み方
まず、読み方ですが、
- 登記簿謄本:とうきぼとうほん
- 登記事項証明書:とうきじこうしょうめいしょ
と読みます。
登記簿謄本と登記事項証明書(全部)は、本質的には同じものです。
紙で管理されていた時代の登記情報が書かれた書類のことを「登記簿謄本」といいます。
データによって管理されている時代(つまり、今)の登記情報が書かれた書類のことを「登記事項証明書(全部)」といいます。
登記簿謄本(登記事項証明書)のサンプルと特別なルール
登記簿謄本(登記事項証明書)の読みほどき方について解説していきます。
以下のサンプルをご覧ください。
上に表示した登記簿謄本(サンプル)は、かなりきれいな部類に入るものです。
登記簿謄本を読むときにだけ使われる特殊なルールがひとつだけあります。
下線が引かれている部分は「強調」ではなく、「抹消事項(取得時点で効力が切れていること)」を意味しています。
不動産登記法の特性上、一度登記された情報は消すことができません。
間違って登録されてしまった場合にも、
- 正しい情報を正しい手続きで登記しなおす。
- 正しい情報を登記簿謄本に追記する。
- 間違っていた情報に下線を引いて、記録は残しておく。
という流れになります。
登記簿謄本(登記事項証明書)の構成
登記簿謄本(登記事項証明書)は、
- 表題部
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
- 共同担保目録
の4つで構成されています。
表題部(土地)のサンプルと読み方
登記簿謄本(表題部)のサンプルです。
※土地の登記簿謄本です。
緑の枠で囲んだエリアに「表題部(土地の表示)」と書かれています。
表題部から読み取るべき内容は、
- ① 不動産の所在(場所)
- ② 地番
- ③ 地目
- ④ 地積(土地の面積)
- ⑤ 登記の日付
です。
※番号はサンプルに表示されているものと一致しています。
不動産の所在には、市町村字までが記載されています。
地番には、対象不動産の地番が記載されています。
ですので、「不動産の所在+地番」が不動産の正確な所在地(地番管理による)になります。
例えば、
- 不動産の所在に「○○市××町」
- 地番に「△△番」
と書かれていれば、「○○市××町△△番」が、対象不動産の正確な所在地です。
地目には、土地の地目(種類のようなもの)が記載されています。
サンプルの場合は、地目が「宅地」です。
ほかにも、
- 田
- 畑
- 雑種地
などさまざまな地目があります。
-
-
地目の種類:全23種の一覧(主要5種とその他18種)
地目の種類:全23種の一覧(主要5種とその他18種)ついて解説しています。
地積には、土地の面積が記載されています。
たとえば、250.25㎡の土地であれば、「250:25」という記載がされます。
登記簿謄本に記載されている地積(および面積)を「公簿(こうぼ)面積」といいます。
登記の日付には、表示登記がされた日付および原因(理由)が書かれています。
サンプルの場合、昭和○○年××月△△日に土地区画整理事業による換地処分によって表示登記がされましたよということが読み取れます。
表題部(建物)のサンプルと読み方
登記簿謄本(表題部)のサンプルです。
※建物の登記簿謄本です。
緑の枠で囲んだエリアに「表題部(主である建物の表示)」と書かれています。
表題部から読み取るべき内容は、
- ① 不動産の所在(場所)
- ② 家屋番号
- ③ 種類
- ④ 構造
- ⑤ 床面積
- ⑥ 登記の日付
です。
※番号はサンプルに表示されているものと一致しています。
不動産の所在には、市町村字および番地が記載されています。
ですので、「不動産の所在」が不動産の正確な所在地(住居表示による)になります。
-
-
地番とは:調べ方、住居表示(番地・住所)との違い
不動産のことについて調べるときには、地番を知ることが第一歩となります。普段わたしたちが使っている住所に書かれているのは、地番ではなく番地とよばれます。さかさまになっているだけなので、同じものと勘違いしてしまうこともあるでしょう。
ですが、地番と番地はまったく異なるものです。その調べ方や活用方法も違います。地番を教えてくださいといわれても、なんのことだかさっぱり分からないということもあるでしょう。
今回は、そんな方のために地番について解説します。そもそも地番とはどういうものなのか?そして、地番を調べるにはどうすればよいのか?この記事で地番についてマスターしましょう。
家屋番号には、不動産の家屋番号が記載されています。
家(住居)ではあまり使われませんが、区分所有建物(マンション)について調べるときには、家屋番号は重要です。
-
-
家屋番号とは:調べ方
家屋番号(かおくばんごう) 建物の登記簿の中には家屋番号という事項があります。この家屋番号というのは、建物を特定するためにつけられた番号になります。 登記事項として、登記所がひとつの建物ごとに番号をつ ...
種類には、建物の種類が記載されています。
サンプルの場合、「居宅」です。
住むために使われている家という意味です。
構造には、建物の構造が記載されています。
サンプルの場合には、「木造セメント瓦葺2階建」です。
木造の住宅で、屋根がセメント瓦の2階建ての建物という意味です。
床面積には、建物の床面積が記載されています。
各階の面積が記載されていて、1階部分が25.25㎡であれば、「1階 25:25」という記載がされます。
登記簿謄本に記載されている床面積を「公簿(こうぼ)面積」といいます。
床面積には、
- 内法(うちのり)
- 壁芯(かべしん)
の2種類ありますが、登記簿に記載されているのは内法です。
壁芯とは、壁の真ん中(壁の芯)を基準にして測った面積です。
内法とは、壁の表面(内壁)を基準にして測った面積です。
別に違法ではないのですが、消費者にとっては不都合な表示なので気を付けましょう。
登記の日付には、表示登記がされた日付および原因(理由)が書かれています。
サンプルの場合、昭和○○年不詳(月日はわからない)に新築されたことで表示登記がされましたよということが読み取れます。
権利部(甲区)のサンプルと読み方
登記簿謄本(権利部甲区)のサンプルです。
緑の枠で囲んだエリアに「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」と書かれています。
タイトルに書いてあるように、権利部(甲区)には、権利の中でも「所有権」に関することが記載されています。
権利部(甲区)から読み取るべき内容は、
- ① 順位番号
- ② 登記の目的
- ③ 受付年月日
- ④ 権利者その他の事項
です。
※番号はサンプルに表示されているものと一致しています。
順位番号には、所有権の順位が記載されています。
登記の目的には、所有権が登記された目的が記載されています。
サンプルの場合は、「所有権の保存」が行われたことがわかります。
ほかにも「所有権の移転」などがあります。
所有権の移転は、AさんからBさんに所有権が移転されたときに行われる登記の目的です。
受付年月日には、所有権に関する登記が受け付けられた年月日が記載されています。
登記所が登記を完全に受け付けた日付です。
訴訟などになったときの対抗力が誰にいつからあるのかを判断するときに使ったりします。
権利者その他の事項には、権利者の氏名および住所が記載されています。
所有者の横に、所有権を持っている人の名前が書かれます。
所有者の下に、所有権を持っている人の住所が書かれます。
権利部(乙区)のサンプルと読み方
登記簿謄本(権利部乙区)のサンプルです。
緑の枠で囲んだエリアに「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」と書かれています。
タイトルに書いてあるように、権利部(甲区)には、権利の中でも「所有権」以外の権利に関することが記載されています。
サンプルの場合には、「抵当権」に関することが記載されていることが分かります。
賃借権などが出てくることもありますが、競売物件など複雑な事情を抱えている不動産にしか出てきません。
抵当権でも十分に注意が必要ですが、その他の権利が付着している場合には、注意するくらいの認識がよいでしょう。
権利部(乙区)から読み取るべき内容は、
- ① 順位番号
- ② 登記の目的
- ③ 受付年月日
- ④ 権利者その他の事項
です。
※番号はサンプルに表示されているものと一致しています。
順位番号には、所有権以外の権利の順位が記載されています。
サンプルの場合には、順位1位の抵当権が設定されていることがわかります。
抵当権の順位は、抵当権者(お金を貸している方)に関係のあることです。
登記の目的には、所有権以外の権利が登記された目的が記載されています。
サンプルの場合は、「抵当権の設定」が行われたことがわかります。
ほかにも「抵当権の抹消」などがあります。
抵当権の抹消は、金融機関から借りたお金を返し終えて、抵当権を消すときに行われる登記の目的です。
-
-
【抵当権設定登記とは】費用(相場)、必要書類、登録免許税の軽減など
抵当権設定登記について解説している記事です。「抵当権設定登記の基礎知識」「抵当権設定登記の流れ」「抵当権設定登記の費用」「抵当権設定登記に関する特別なケース」について触れています。登録免許税の軽減に関する情報など、費用負担を大幅に削減する方法も掲載しています。
-
-
抵当権抹消登記とは:手続き、必要書類、費用と相場、申請書作成方法
住宅ローンが完済すると抵当権抹消登記をすることになるのが一般的です。抵当権抹消登記とは、抵当権を消す登記です。その性質上、抵当権を設定した金融機関などから許可がなければ、抵当権抹消登記を行うことはできません。
抵当権抹消登記が行えるということは、融資を完済しているので差し押さえなどのリスクは通常考えられません。なので、別にしなくてもいいのではないのか?と思う方もいるでしょう。ですが、相続や急な売却になったときに困るのが常です。
今回は、抵当権抹消登記がどういうものなのかということや、費用など知っておくべき内容を抑えつつ、注意点も説明します。これを読めば、抵当権抹消登記についてはバッチリです。
受付年月日には、所有権以外の権利に関する登記が受け付けられた年月日が記載されています。
登記所が登記を完全に受け付けた日付です。
訴訟などになったときの対抗力が誰にいつからあるのかを判断するときに使ったりします。
権利者その他の事項には、権利者の氏名および住所が記載されています。
所有権の場合には読み取りやすいのですが、権利部(乙区)に記載される権利は、若干ややこしくなることが多いです。
サンプルの場合では、
- 登記の原因
- 登記の年月日
- 債権額(借りた金額)
- 利息
- 損害金(支払いが滞ったときの利息)
- 債権者(お金を借りた人)
- 抵当権者(お金を貸した人)
- 共同担保(後述)
が記載されています。
- 登記の原因は、登記がされた理由です。
- 登記の年月日は、登記がされた年月日です。
- 債権額は、借金の金額です。
- 利息は、借金の金利です。
- 損害金は、借金の支払いが滞ったときに生じた損害に対する金利です。
- 債権者は、お金を借りた人です。
- 抵当権者は、お金を貸した人で、通常、金融機関(銀行)などです。
- 共同担保は、後ほど詳しく解説します。
サンプルの場合には、
- 金融機関からお金を借りたことで、
- 平成○○年××月△△日に、
- 債権額が、3,700万円
- 利息は、年利7.68%
- 損害金は、年利14.6%
- 債権者は、Aさん
- 抵当権者は、B銀行C支店
- 共同担保は、共同担保目録□□号
という内容の抵当権が設定されたことがわかります。
共同担保目録のサンプルと読み方
登記簿謄本(共同担保目録)のサンプルです。
緑の枠で囲んだエリアに「共同担保目録」と書かれています。
共同担保目録とは、抵当権を設定したときに一緒に担保にされた不動産をまとめて表示しているものです。
たとえば、住宅ローンを借りるときには、土地と家を担保に入れます。
この場合、土地の登記簿謄本を取得すると、共同担保目録の欄に土地と家の担保情報が記載されます。
サンプルの場合には、土地および土地に建っている建物が記載されていることが分かります。
共同担保目録から読み取るべき内容は、
- ① 番号
- ② 担保の目的である権利の表示
- ③ 順位番号
- ④ 予備
です。
※番号はサンプルに表示されているものと一致しています。
番号には、担保になっている不動産の番号が記載されています。
サンプルの場合には、1番が土地で、2番が土地に建っている建物です。
担保の目的である権利の表示には、担保になっている不動産の表示登記(表題部の内容)が記載されています。
サンプルの場合は、
- ○○番の土地
- ○○番の土地に建っている家屋番号××番 ○○番の建物
ということがわかります。
順位番号には、抵当権の順位が記載されています。
予備には、その他に特別に記載すべき内容が書かれています。