中古住宅を購入するときには、いろいろなことに注意をしなければいけません。
そのひとつが「越境問題」です。
中古住宅を購入するときには、敷地の調査を行います。
具体的には、土地家屋調査士に依頼して、地境の確定・確認をします。
このときに発覚するのが「越境問題」です。
今回は「地境の確定・確認をしたら隣家の塀が敷地内に入り込んでいたときの対処法」について話をします。
とてもデリケートな問題で、間違った対応をしてしまうとものすごい損をしかねません。
また、担当の不動産屋さんがしっかりしていればよいのですが、経験が浅い人だととんでもないことを言い出しかねません。
購入後に泥沼の越境トラブルに発展しないように、事前にしっかりとした対策ができるようにしておきましょう。
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越境問題とは:木の根、木の枝
越境問題(えっきょうもんだい) 越境問題というと国際的な問題ように思えますが、実際には非常に身近な問題です。不動産における越境問題というのは、土地や住まいの境界線を越えてしまうことによって発生してくる ...
購入予定の中古住宅の隣家の塀が敷地に入り込んでいる!
どうしたらいいのかしら?
木の葉・根程度のことであれば、さほど気にする必要はないですが、塀は放っておくとまずいですよ。
かといって、土地が目減りして泣き寝入りするのも納得がいかないですよね?
対応1:敷地内への越境を説明する
まずは隣家の方に敷地内への越境を説明しましょう。
説明には、土地家屋調査士および不動産屋さんに行ってもらうのが一番です。
最悪でも、一人で行かずに、土地家屋調査士に同行をしてもらってください。
説明に行ってほしいといってもいかないような不動産屋さんであれば、連れて行かないほうが無難です。
土地の仲介を別の不動産屋さんに依頼できるのであれば、付き合いを考えたほうがよいでしょう。
地境問題については、法的な根拠などもしっかり整っているので、丁寧に説明することで理解を得ることはほぼ確実にできるはずです。
土地家屋調査士の方は、地境の確定をするときに、周辺住民の確認・同意を得る仕事を頻繁にしているので対応には慣れているでしょう。
まずは、
- あなた
- 隣家の方
- 不動産屋さん
- 土地家屋調査士
の認識を一致させることに注力します。
余計ないがみ合いを引き起こしてしまうので、状況は丁寧に説明してください。
対応2:塀の撤去を依頼
隣家の方に「塀の撤去」を依頼します。
塀の撤去に承諾してもらえるようであれば、話は解決です。
あなたの敷地には何も存在しないので、地境問題を引き起こす要因はありません。
が、塀の撤去を快く引き受けてくれる方はあまりいないのが現実です。
撤去するにもお金がかかるので、なかなか条件を飲みにくいのです。
かといって、あなたも費用を払うのは納得ができないでしょう。
ダメもととはいえ、提案しないのはもったいないです。
対応2-a:塀の強制的な撤去を求める(法的措置)
どうしても塀を撤去してほしいときには、強制的な撤去を求めることもできます。
土地の取得が終われば、所有権はあなたのものになります。
塀が越境している状態では、あなたの所有権が不当に損なわれているので、所有権の侵害を回復させる権利があります。
ですので、塀を撤去してくれと要求し、訴訟を起こすことが可能です。
ただし、オススメはしません。
裁判をしたところで、数センチの侵害であれば撤去が認められる可能性は低いです。
そこまで争いをしたのであれば、隣家の方との関係も最悪からスタートします。
当然、近隣住民からも警戒されてしまいます。
もし、裁判をするつもりであれば、簡易裁判所による調停を先に利用しましょう。
不調になる可能性も高いですが、費用も低額ですみます。
対応3:将来、建て替えをするときに越境を解消する約束をしてもらう
最も一般的な方法は、将来、建て替えをするときに越境を解消する約束をしてもらいます。
必ず書面で行ってください。口約束では意味がありません。
将来、老朽化した塀を建て替えるときに地境を越えないように建て替えるということで話を落ち着けます。
塀の建て替えはいつになるかわからないので、長い間(10年や20年以上)待つ覚悟が必要です。
あなたと隣家の方との関係が悪化することがありませんし、将来的には問題が解消します。
対応4:塀の建て替え(協同)
隣家の方に協同での塀の建て替えを提案します。
建て替え費用は、基本的には折半(半分こ)です。
もし、あなたが塀を建てるつもりだったのであれば負担減にもなります。
塀の協同での建て替えに同意してもらえた時には、「塀を再建する位置」について話し合いをします。
つまり、
- あなたの敷地内に塀を建てる
- 隣家の方の敷地内に塀を建てる
- 双方が敷地内に塀を建てる(塀を2つ建てる)
- 塀の中心が地境に乗るように塀を建てる(敷地を半分ずつ提供し合う)
ということです。
重要なことは「塀の所有権」です。
建築後の塀は誰の所有物とするのか?ということが焦点になります。
1であれば、あなたの所有物になります。
2であれば、隣家の方の所有物になります。
3であれば、あなたと隣家の方がそれぞれ塀を所有します。
4であれば、あなたと隣家の方の協同の持ち物になります。
一見すると、4がもっとも平等に見えるのですが、オススメしません。
4の場合、将来、塀を建て替えたい時に話し合いが必要になります。
さらに、どちらかが将来、家を売却したとすれば、また同じ問題に発展しかねません。
じっくりと話し合いを重ねて、1、2、3のいずれかで落ち着けるようにしましょう。
所有するほうが多少多めに出すことで、話をまとめるのが一般的です。
3は折半です。
対応5:分筆および買取請求
隣家の塀が越境している部分について、分筆して買い取ってもらいます。
奥行20mの土地で、5cm越境しているのであれば、
0.05m × 20m = 1㎡
に応じた代金を請求します。
当然、
- 分筆費用
- 買取費用
などがかかります。
誰がどう負担するのかが話の焦点です。
手間や費用の割に、あまりいい解決方法とは言えないので本当に稀です。
不動産屋が理不尽な書面や話を持ってきた場合
一般的な対応ができる不動産屋さんであればあり得ないのですが、
- 越境の認識
- 越境の容認
を要求する書面を持ってくる者がいます。
つまり、「隣家の塀が越境していますが、どうにもならないので泣き寝入りしてください。」という書面です。
このようなふざけた書面にはサインをしてはいけません。
そして、すぐに土地の購入を取りやめるか、不動産屋を変えてください。
そのような不動産屋は、あなたに土地を売りつけることしか考えていません。
付き合いを続ければ、ほかのトラブルにも巻き込まれる可能性が高いです。