今、中古住宅が脚光を浴びつつあります。
政府主導のもと、官民一体となって中古住宅市場を活性化するための制度が増えてきました。
さまざまな制度の焦点となっているのが、いかに安心して中古住宅を購入してもらうかです。
政府の発表では、一定の品質に達している中古住宅には認定証などを発行し、その品質が保証されていることを打ち出すことも考えているそうです。
フロー型社会からストック型社会への転換が重要だと叫ばれる昨今ですが、中古住宅については他にも重要な話がいくつかあります。
そのなかでも今回は、わたしたちが安心して中古住宅を買うための制度のひとつ、既存住宅売買瑕疵保険について解説します。
平たく言ってしまえば、中古住宅を買ったあとのトラブルに対する保険です。
どのような保険で、どのようにして活用すればいいのかなど基本的なところを徹底解説します。
【この記事からわかること】
- 最近の中古住宅選びで重視されていること
- 瑕疵担保責任について
- 既存住宅売買瑕疵保険の内容
- 既存住宅売買瑕疵保険の仕組み
さらに詳しく
中古住宅の購入ガイドでは、
- 良い中古住宅の効率的な見つけ方
- 割安・割高をしっかりと見分ける方法
- すこしでも安く中古住宅を購入する方法
- 中古住宅にかかる全費用(購入後も含めて)
- 売却や建て替えに適した費用性の高い築年数
など、より賢く、よりお得に、中古住宅を購入する方法についてまとめています。
あなたは中古住宅を購入するときに何を重視しますか?
以下に紹介するのは、全国宅地建物取引業協会連合会(いわゆる全宅連)が9月23日(不動産の日)に行ったアンケートの結果です。
Q. 中古住宅の購入を考える場合、必要と思われることはどれですか。
- 瑕疵保険が付されていること ⇒ 64.2%
- 履歴情報が残っていること ⇒ 61.6%
- インスペクション(建物診断)が付されていること ⇒ 61.6%
中古住宅購入時に必要なものについて、「瑕疵保険が付されていること」が64.2%と最も多く挙げられていました。
これとは逆に「瑕疵保険などなくても、とにかく価格が安いこと」は11.2%に留まりました。
今、中古住宅市場に求められていることが、この結果から鮮明に分かりますね。
通常、中古住宅に瑕疵担保責任はない
中古住宅の瑕疵保険(瑕疵担保責任)は、ある場合とない場合に分かれます。
ほとんどのケースでは、瑕疵保険がない場合なのが現実です。
中古住宅の取引では、誰が売主なのかはとても大事です。
売主が一般人のときと、売主が宅建業者のときの2パターンに分かれます。
あくまで売主であり、不動産仲介業者ではないので注意してください。
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売主が宅建業者のとき
宅建業者が中古住宅を買い取り、その所有権を自身に移転して販売したときを言います。
このときには、宅建業者は中古住宅といえども瑕疵担保責任を負うことになります。
売主が宅建業者のときには、原則として住宅全部の部位について引渡時から2年間の瑕疵担保責任を負います。
特約などを契約書に付記して、期間の短縮をしようとすることがあります。
ですが、一般消費者保護の観点から、これらはすべて無効となります。
売主が一般人のとき
一般の方が売主になって、中古住宅を販売しているときです。
あなたが自宅を売ろうと思って、不動産屋さんに相談しに行きました。
中古住宅を売るための販売活動を不動産屋さんにお任せしたときは、売主はあなたですので、この当たり前のケースこそが売主が一般人のときです。
中古住宅市場に出回っている物件のほとんどは、売主が一般人です。
そして、売主が一般人のときには、原則として瑕疵担保責任は負いません。
保証されたとしても、引渡後1ヵ月から3ヶ月程度であり、宅建業者では無効とされた期間の短縮などの特約も認められます。
既存住宅売買瑕疵保険の役割
既存住宅売買瑕疵保険(別名:中古住宅売買かし保険)とは、中古住宅の検査(ホームインスペクション)と瑕疵保証がセットになった保険です。
瑕疵保証だけで機能するものではなく、必ず検査が必要です。
既存住宅売買瑕疵保険を使うことで、売主が誰かに関係なく、買主は隠れた瑕疵について保証を受けることができるようになります。
住宅は調査を行おうと思っても、なかなか分解して細かく見ることはできません。
分解して細かく調べられないにもかかわらず、住宅にとって重大な欠陥は見えない部分から出てくるのが常です。
このような予測不可能なトラブルに対して、安心させてくれるのが既存住宅売買瑕疵保険です。
これから中古住宅の購入するときには、必ず付けるようしたほうがいいです。
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既存住宅売買瑕疵保険の取り扱い業者
既存住宅売買瑕疵保険は、住宅瑕疵担保責任保険法人といわれる保険法人が管理しています。
住宅瑕疵担保責任保険法人は、国土交通大臣が指定した住宅専門の保険会社です。
現在、全国で5つの保険法人が指定されています。
- (株)住宅あんしん保証
- 住宅保証機構(株)
- (株)日本住宅保証検査機構
- (株)ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証(株)
上記の5つが、現在指定されている住宅瑕疵担保責任保険法人です。
これらの5つの機関から、自分にあったものを自由に選択することができるようになっています。
既存住宅売買瑕疵保険(宅建業者販売タイプ)
宅建業者が売主となって中古住宅を販売しているときのための既存住宅売買瑕疵保険です。
この保険に加入するのは売主の宅建業者です。
トラブルが生じたときに、補修などの費用が保険法人より宅建業者に支払われます。
また、販売した宅建業者が倒産してなくなってしまっていたときには、補修費用などは買主に直接支払われます。
なので、万が一のことがあっても買主は守られますから安心です。
保証される対象は、大きく4つです。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
- 給排水管路
- 給排水設備・電気設備
上記の4つについて、5年間または2年間保証されます。
既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ)
中古住宅の売買で、大部分を占めるのは個人間売買です。
個人間売買で活躍するのが、既存住宅売買瑕疵保険の個人間売買タイプです。
宅建業者販売タイプに比べて、少し複雑なのでじっくり解説します。
検査機関(保証者)
宅建業者販売タイプでは、売主の宅建業者が住宅瑕疵担保責任保険法人に直接依頼をするようになっていました。
しかし、個人間売買タイプでは住宅瑕疵担保責任保険法人に直接依頼はできません。
必ず、検査機関(保証者)を通して、保険契約を結びます。
そして、保険契約を結ぶのは買主や売主ではなく、検査を実施した検査機関(保証者)となります。
個人間売買タイプでの契約の流れ
まず、売主か買主のどちらかが、検査機関(保証者)に対してインスペクションを依頼します。
依頼を受けた検査機関(保証者)は、対象の中古住宅を検査したのち、保険法人に申し込みをします。
申し込みを受けた保険法人は、売主から買主に物件の引渡しが行われる前に、独自にインスペクションを行ったうえで保険を引き受けることになります。
なので、個人間売買で既存住宅売買瑕疵保険を利用するときには、中古住宅に対してインスペクションが2度行われます。
入念な調査が行われたうえで、買主に対する保証が行われます。
保証内容
保証される対象は、宅建業者タイプと変わりありません。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
- 給排水管路
- 給排水設備・電気設備
期間が、5年間または1年間保証となります。
個人売買タイプを利用するときの注意点
誰が費用を払うのかをしっかりと決めておきましょう。
売主負担なのか、買主負担なのかを決めずに話を進めると、ほぼ必ず最後にもめます。
お金に関わることは、話し合いをしてから、しっかりと書面に残しておくのが大事です。