所得税の減税措置には、住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例があります。
所得税の減税措置 - 住宅ローン控除:概要、改正内容のうち、「住宅の増改築に係る住宅ローンの控除制度」がベースになっています。
通常の住宅ローン控除では、10年間以上の借入が必要ですが、本特例では5年以上の借入から控除を受けることができます。
ただし、
- 住宅の増改築に係る住宅ローンの控除制度
- 住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例
は選択適用なので、どちらか一方を選ばなければいけません。
基本的には、住宅の増改築に係る住宅ローンの控除制度を活用したほうが控除額は大きくなります。
あなたのケースに合わせて、どちらがお得なのかじっくり考えてみてください。
住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例
概要
一定の個人が、その者の居住の用に供する家屋について一定のバリアフリー改修工事を含む増改築等を行った場合において、当該家屋を平成19年4月1日から平成33年12月31日(平成28年11月改正により延長)までの間にその者の居住の用に供したときは、一定の要件の下で、そのバリアフリー改修工事を含む増改築等に充てるために借り入れた住宅借入金等の年末残高の1,000万円以下の部分の一定割合を所得税の額から控除することができます。
適用要件
法的には、
- 50歳以上の者
- 介護保険法の要介護または要支援の認定を受けている者
- 障害者である者
- その個人の親族のうち、上記2もしくは3に該当する者または65歳以上の者のいずれかと同居している者
のいずれかに該当する者と定義されています。
- その工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)の合計額が50万円を超えるものであること
- その個人の居住の用に供される部分の工事費用の額が、増改築等の工事費用の総額の2分の1以上であること
- その工事をした後の家屋の床面積(登記簿の面積)が50㎡以上であること
- その工事をした家屋が、その個人が主としてその居住の用に供しているものと認められるものであること
を満たすものであることとされています。
まず「住宅の増改築等に係る住宅ローンの控除制度」がベースになっているので、住宅の増改築等に係る住宅ローン控除制度の要件を満たす必要があります。
さらに、
- 特定の改修工事をした場合の特別控除の適用を受けないものであること
- 適用対象となるのは、償還期間5年以上の一定の住宅借入金等および死亡時一括償還にかかる借入金等である
が加えられます。
- 50歳以上の者
- 介護保険法の要介護または要支援の認定を受けている者
- 障害者である者
- その個人の親族のうち、上記2もしくは3に該当する者または65歳以上の者のいずれかと同居している者
のいずれかに該当する者であること。
つぎに、
- その工事費用(補助金等をもって充てる部分を除く)の合計額が50万円を超えるものであること
- その個人の居住の用に供される部分の工事費用の額が、増改築等の工事費用の総額の2分の1以上であること
- その工事をした後の家屋の床面積(登記簿の面積)が50㎡以上であること
- その工事をした家屋が、その個人が主としてその居住の用に供しているものと認められるものであること
を満たすバリアフリー改修工事を含む増改築等であること。
加えて、
- 住宅取得後6か月以内に入居していること
- 居住日以後その年の12月31日まで引き続き居住していること
- 床面積の2分の1以上が、専ら自己の居住の用に供されるものであること
- 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 入居した年以前3年間について、居住用財産の3,000万円特別控除や買換え等の課税の特例などを受けていないこと
- 入居した年の翌年又は翌々年について、この控除対象家屋とその敷地以外の資産の譲渡に関し、上記(7)の特例を受けていないこと
- 自己の所有している家屋で、自己の居住の用に供するものの増改築等であること
- 家屋について行う国土交通大臣が財務大臣と協議して定める高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造および設備の基準に適合させるための「一定のバリアフリー改修工事」
- 特定の改修工事をした場合の特別控除の適用を受けないものであること
- 適用対象となるのは、償還期間5年以上の一定の住宅借入金等および死亡時一括償還にかかる借入金等であること
を満たす必要があります。
具体的には、借り入れた住宅借入金等の年末残高の1,000万円以下の部分の一定割合が所得税の額から控除されます。
選択適用に注意(あくまでも特例)
なので、住宅の増改築等に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります。
つまり、
- 住宅の増改築等に係る住宅ローン控除制度
- 住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例
のどちらを使うのか選ばなければいけません。
住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例の控除額
住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例の控除額について、具体的に確認します。
平成19年4月1日から平成25年12月31日までの間に居住の用に供した場合
居住の用に供する時期 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高 | 控除率 |
平成19年4月1日から平成25年12月31日まで | 5年間 | 1,000万円以下の部分 |
|
平成26年1月1日から平成33年12月31日までの間に居住の用に供した場合
居住の用に供する時期 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高 | 控除率 |
平成26年1月1日から平成26年3月31日まで | 5年間 | 1,000万円以下の部分 |
|
平成26年4月1日から平成33年12月31日まで | 5年間 | 1,000万円以下の部分 |
|
計算例
条件
- 平成28年1月1日から居住を始める
- 一定のバリアフリー改修工事を含む増改築等に係る工事費用から補助金等を控除した金額:300万円
(※月々の支払額:5万円) - その他の住宅借入金等:1,500万円
(※月々の支払額:10万円)
計算例
一定のバリアフリー改修工事を含む増改築工事等に係る工事費用から補助金等を控除した金額を「A」とします。
その他の住宅借入金等を「B」とします。
年数 | 年末残高(合計:A+B) | 年末残高(A) | 控除率(A) | 控除額(A) | 年末残高(B) | 控除率(B) | 控除額(B) | 合計控除額(A+B) |
1年目 | 1,520万円 | 240万円 | 2% | 4.8万円 | 1,280万円 | 1% | 7.6万円 (※限度額:1,000万円 - 240万円 = 760万円) |
12.4万円 |
2年目 | 1,340万円 | 180万円 | 3.6万円 | 1,160万円 | 8.2万円 (※限度額:1,000万円 - 180万円 = 820万円) |
11.8万円 | ||
3年目 | 1,160万円 | 120万円 | 2.4万円 | 1,040万円 | 8.8万円 (※限度額:1,000万円 - 120万円 = 880万円) |
11.2万円 | ||
4年目 | 980万円 | 60万円 | 1.2万円 | 920万円 | 9.2万円 | 10.4万円 | ||
5年目 | 800万円 | 0万円 | 0万円 | 800万円 | 8万円 | 8万円 | ||
合計控除額 |
53.8万円 |
よりリアルな控除額を伝えるために年末残高が中途半端になるような計算例を使いました。
5年間ずっと最大控除額をキープするような借入をした場合には、合計控除額は62.5万円になります。
あとは
- 住宅の増改築等に係る住宅ローン控除制度
- 住宅のバリアフリー改修工事に係る住宅ローン控除の特例
のどっちがお得なのかを見極めて選べばいいのね。
基本的には「住宅の増改築等に係る住宅ローン控除制度」を使ったほうが合計控除額は高くなります。
この特例のメリットは「5年以上の借入」から使えるというところでしょう。
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所得税の減税措置 - 住宅ローン控除:概要、改正内容(平成29年度)
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申告に必要な書類
申告に必要な書類は、
- 住民票の写し
- 家屋および土地の登記事項証明書
- 工事請負契約書の写し
- 改修工事資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 住宅ローン控除における「一定のバリアフリー改修工事」の場合と同様の高齢者等居住改修工事などの証明書
が必要です。
忘れずに申告を行いましょう。