用悪水路(ようあくすいろ)とは、地目の一種です。
用水路と悪水路が組み合わさった言葉で、主に灌漑用の水路として使用される土地です。
用悪水路を活用する場合には、水利権者との合意など様々な注意が必要になります。
この記事では、用悪水路について詳しく解説をしています。
用悪水路の評価方法、売買および建築の注意点などについて解説しているので、参考にしてください。
この記事からわかること
- 用悪水路とは
- 用悪水路と水利地役権(水利権)
- 用悪水路の土地評価
- 用悪水路と固定資産税
- 用悪水路の売買について
- 用悪水路と建築許可について
用悪水路とは
用悪水路の概要について解説します。
読み方
用悪水路は、「ようあくすいろ」と読みます。
間違えて、「悪用水路」と思い込んでしまう方もいますが、「用悪水路」です。
地目の一種
「用悪水路」とは、地目の一種です。
- 用水路(田畑に水を引くための水路)
- 悪水路(田畑の水を吐き出すための水路)
を組み合わせてできている言葉です。
基本的に、灌漑(かんがい)用の水路であり、田畑(農地)の活用をするための土地です。
ただし、田畑に限らず、
- 家庭用排水
- 工業用排水
などにも使われます。
水利地役権(水利権)
用悪水路には、「水利地役権(水利権)」という地役権の一種が付着しています。
地役権者は、
- 用水路管理組合
- 農業用水路管理組合
であることが一般的です。
地役権は土地に付着する権利なので、単純に地目変更をすれば消滅するものではありません。
消滅させたいのであれば、地役権者の同意が必要になります。
万が一、地役権者から元に戻せと勧告を受けた場合には、自費で復帰させる必要があります。
用悪水路の土地評価
用悪水路の土地評価について解説します。
固定資産税評価などはない
用悪水路は、法外公共地に該当します。
法による特段の定めはないが、公共地(国の土地・みんなの土地)であるということです。
よって、固定資産税評価および相続税評価などが存在しません。
不動産登記事務取扱手続準則 第68条による解釈
不動産登記事務取扱手続準則 第68条
次の各号に掲げる地目は、当該各号に定める土地について定めるものとする。
この場合には、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、 土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
十六 用悪水路 かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
上記は、不動産登記事務取扱手続準則 第68条の一部です。
条文の中で、「用悪水路」についてきっちりと書かれています。
条文によれば、周辺の土地などと一体の土地として評価をすると解釈できます。
一般的には、
- 近傍類地(付近の似た土地)
- 隣接地(用悪水路に接している土地)
の評価額に100分の30を乗じて、土地評価を算出するとされます。
登録免許税などの計算には、上記の方法による土地評価額が適用されるのが一般的です。
用悪水路と固定資産税
用悪水路と固定資産税の関係について解説します。
固定資産税は非課税
用悪水路は「水路」であり、「法外公共地」なので、非課税になります。
私道の扱いと同じような運びになります。
現況の変更による「脱税」に注意
水路として使われている用悪水路を埋め立ててしまうことは考えにくいです。
しかし、水路として使われていない用悪水路も数多く存在し、勝手に埋め立ててしまうケースがあります。
この場合、使用されていないためバレていないだけで「脱税」をしていることになります。
埋め立ててしまって宅地としているのであれば、立派な土地です。
土地には固定資産税がかかりますが、用悪水路のままであれば固定資産税が非課税のままになるので「脱税」ということです。
用悪水路の売買について
用悪水路の売買について注意すべきことを解説します。
購入する場合
用悪水路を購入する場合には、適切なリスクの除去が必要です。
具体的には、適切に地目変更をすることになるのですが、水利地役権に注意が必要です。
適切な地目変更による水利地役権の消滅を怠り、購入後に水利地役権者に復帰を要請された場合、水路に戻す義務が発生します。
ですので、用悪水路の購入を検討しているのであれば、
- 用水路管理組合
- 農業用水路管理組合
- 役所
と十分に協議をし、同意を得たうえで購入するようにしましょう。
数百万に及ぶ可能性もありますので、十分に注意してください。
購入後に用悪水路であることが判明した場合
土地の購入後に用悪水路であることが判明した場合には、
- 原状復帰
- 払い下げ
などの要請を受けることがあります。
不動産業者(宅地建物取引業者)を介して土地を購入している場合、
- 十分な調査
- 適切な告知
の責任を不動産業者が果たしていないことになります。
よって、購入後に発生した思わぬ費用を負担する責任は「不動産業者(宅地建物取引業者)」側にあると考えるのが妥当です。
売却する場合
用悪水路を売却する場合には、基本的に「農地転用」をする必要はありません。
あくまでも、農地転用は「農地(田・畑)」の権利移転などに必要な手続きです。
ただし、用悪水路の地目(および土地の目的)上、排水などによる土壌汚染の可能性が否めません。
ですので、土壌汚染の可能性についてしっかりと調査をしたうえで、買主に十分な告知をしてください。
買主が告知内容に納得して売却をするのであれば、何の問題もありません。
用悪水路と建築許可
用悪水路と建築許可について解説します。
接道義務を果たしているかに注意が必要
上図のような宅地に建物を建設したい場合には、注意が必要です。
建築基準法上の接道義務には、現況は関係がありません。
用悪水路が水路として機能している場合には、橋かけなどにより接道をしなければ宅地を使えないのでトラブルに発展することは考えにくいです。
用悪水路が水路として機能していない場合、勝手に埋め立てて、道路法上の道路と見かけ上は接道させることができます。
しかし、勝手に埋め立てて「見かけ上」接道させた場合、建築基準法では「接道義務」を果たせていないことになります。
あくまでも、宅地が接しているのは「用悪水路」であり、「道路法上の道路」ではありません。
ですので、接道義務を果たしていないという理由で、当然、建築許可も下りません。
用悪水路が関係する宅地で建築をするときには、
- 所有権者
- 水利地役権者
- 役所
としっかりと協議をし、同意などを得たうえで建築に取り掛かりましょう。