リースバック契約について解説している記事です。
リースバック契約について、
- リースバックのメリット
- リースバックのデメリット
- 自宅にリースバックを活用する流れ
- 自宅にリースバックを活用する注意点
- リースバックの賃料相場と考え方
を解説しています。
さくっと要点を知る
- リースバック契約とは、所有している不動産を売却して、賃貸し直す契約
- リバースモーゲージに比べると、リースバックは自由度が高い
- リースバックの最大の魅力は、契約後のライフスタイルへの負担が少ないこと
- リースバックは、三者間交渉になるので、利害の一致が比較的難しい
- リースバック後の賃料は、生活コストのバランスを考える必要がある
リースバック契約とは
リースバック契約とは、任意売却のひとつの手段です。
契約の関係者には、
- 売主(取引後、借主)
- 買主(取引後、貸主)
- 仲介人
- 金融機関
がいます。
仲介人を通して、
- 売主から買主に不動産が売却される
- 売主、買主および金融機関の意見を聞いて、売却価格を決める
- 新たな所有者となった買主を貸主として、売主は売却した不動産を借りる
ことになります。
任意売却においては、
- 任意売却の価格
- 任意売却後の生活
などが懸念事項となりますが、リースバックの場合、
- 競売などよりは市場価格に近くなる
- 任意売却後の生活は、任意売却前とほとんど変わりがない
(完全所有から賃貸契約に切り替わるのみ)
となります。
リバースモーゲジとの違い
以下は、リースバックとリバースモーゲジの違いをまとめた表です。
リースバック | リバースモーゲジ | |
所有権の帰属先 | 引受人(買主) | 本人 |
納税義務者(固定資産税など) | 引受人(買主) | 本人 |
売却益の用途制限 | 用途制限なし (何に使ってもよい) |
用途制限あり (投資などは禁止される) |
年齢 | 年齢制限なし (誰でも利用できる) |
年齢制限あり (65才以上など) |
適用可能な不動産 | 物件制限なし (事業用なども可能) |
物件制限あり (基本的に個人の一戸建て) |
家族の同居 | 制限なし | 制限あり |
買戻しの可能性 | 可能性あり | 可能性なし |
大きな違いとしては、
- リースバックの場合、売却後の手元資金を自由に使うことができる
- リースバックの場合、年齢の制限がない
- リースバックの場合、どのような不動産であっても活用できる
- リースバックの場合、買戻しができる可能性がある
といったところです。
リースバックのメリット
リースバックのメリットは、
- 生活資金(貯蓄)が増える
- 事業資金が増える
- 借金が整理できる
- 生活を変えなくてもよい
- 買戻しができることがある
という点です。
生活資金(貯蓄)が増える
引受人(買主)を見つけて、不動産を売却するので、売却益が売主の手元には入ってきます。
たとえば、
- 年金の支給額だけでは生活費がまかなえず、貯蓄が減る一方で不安だ
- 収入が思ったように増えず、子供の学費負担が重くなってきた
といった場合に、資産を清算することで、生活資金を大幅に増やすことができます。
事業資金が増える
生活資金(貯蓄)と同じように、事業資金を増やすことにも活用できます。
先述したように、リースバックの場合には、
- 基本的に、不動産の種類によってリースバックができないことがない
- 売却後の手元資金をどのような用途に使うのか制約がない
のが特徴となります。
ですので、事業の資金がショートしそうなときでも、
- 事業資金を増やす
- 生活スタイルの変化を最小限にとどめる
ことができます。
借金が整理できる
後述しますが、アンダーローンの場合には、借金を整理することもできます。
売却益の一部を使って、借金の返済ができるということです。
生活を変えなくてもよい
リースバックの最大の強みだと考えられますが、ライフスタイルの変化を最小限にすることができます。
通常の不動産売却では、売主に引き渡したあとには、
- 住処を確保する
- 引越しをする
などの必要性が出てきます。
しかし、リースバックの場合、元の不動産を賃貸により継続使用ができるので、
- 住む場所が変わらないので、引越しなどの必要がない
- 転校や転勤の心配がない
- 周囲の人に隠し通すのが容易
となります。
買戻しができることがある
引受人(買主)から同意を得る必要がありますが、買戻しをすることも可能です。
ただし、
- 買戻しの費用は、売却金額よりも高くなる傾向にある
- 引受人(買主)の同意を得られないこともある
といったリスクもあるので、注意してください。
リースバックのデメリット
リースバックのデメリットは、
- 売却価格は市場相場よりも安くなる傾向にある
- 賃料設定は市場相場よりも高くなる傾向にある
- あくまでも「賃貸」なので、すこし窮屈に感じることがある
という点です。
売却価格は市場相場よりも安くなる傾向にある
あくまでも「任意売却」なので、売却価格は市場相場よりも安くなる傾向にあります。
売主の状況は圧倒的に不利な状況なので、基本的に交渉での優位性はありません。
さらに、
- 金融機関:確実に回収したいと考えている
- 引受人(買主):投資採算効率を意識するので、できるだけ安く買いたいと考えている
という状態にあり、価格交渉の主導権を握っているのも、この二者です。
とはいえ、
- 仲介人がバランスを考えながら物事を進めようとする
- 安すぎては、金融機関も困る
という抑止力も働くので、競売などになるよりは高値での売却になるケースがほとんどです。
賃料設定は市場相場よりも高くなる傾向にある
賃料設定は市場相場よりも高くなる傾向にあります。
リースバックの場合、貸主が選べる借主は限定されています。
その借主も、やむを得ない事情を抱えてリースバックを活用しているので、経済的に裕福な状態であることは稀です。
貸主のリスクを考えると、当然、賃料設定は多少高めになってしまいます。
あくまでも「賃貸」なので、すこし窮屈に感じることがある
売主は、今まで完全所有であった不動産を、賃貸物件として使用することになります。
ですので、以前に比べると、多少の窮屈を感じることはあります。
リースバックを自宅に活用するときの流れ
リースバックを自宅に活用するときには、
- 引受人(買主)を見つける
- 売却価格の交渉をする
- 賃貸価格の交渉をする
- 売却後、自宅の賃貸(リース)を開始する
という流れになります。
引受人(買主)を見つける
肝心なところですが、引受人(買主)が見つからなければ、リースバックは成立しません。
リースバックの場合、引受人(買主)からすると「賃貸目的の物件購入」以外にありえません。
ですので、一般的な不動産売買とは違い、不動産投資の側面が色濃くなります。
不動産投資であるからには、投資採算効率が意識されるので、物件としての魅力がなければ引受人(買主)は見つからないことになります。
たとえば、
- 築浅の一戸建て
(資産価値の減少が大きい) - 立地の悪いマンション
(賃貸物件としての魅力がない) - 特殊なテナント
(飲食系など高コストなもの)
は避けられる傾向にあります。
売却価格の交渉をする
引受人(買主)の候補が見つかったら、
- 売主
- 金融機関
を交えて、三者間での価格交渉が行われます。
通常、二者間で価格交渉が行われますが、リースバックでは三者になるので、交渉難度は上がります。
経験の豊富な仲介人がいるかどうかによって、取引の良し悪しが大きく左右されるでしょう。
賃貸価格の交渉をする
売却価格によってほぼ決まってくるのですが、賃貸価格の交渉をします。
賃料の交渉では、
- 売主
- 引受人(買主)
の二者間交渉となるので、売却価格よりはスムーズにことが運びます。
売却後、自宅の賃貸(リース)を開始する
無事に売却が完了した後、自宅の賃貸(リース)を開始します。
住宅ローンの支払いが賃料に切り替わるだけであり、あまりライフスタイルは変わることがありません。
リースバックを自宅に活用するときの注意点
リースバックを自宅に活用するときの注意点は、
- リースバックと抵当権(アンダーローン)
- リースバックと譲渡所得
- リースバックと買戻し(投資家の理解)
です。
リースバックと抵当権(アンダーローン)
リースバックをするには、売主から買主に正常に売買契約が成立する必要があります。
しかし、リースバックの場合、ほとんどの物件には「抵当権」が設定されています。
抵当権の設定を解除するには、
- 売買の決済前に、住宅ローンを完済する
- 売買の決済時に、住宅ローンを同時完済する
のいずれかが必要になります。
したがって、ほとんど自己資金がないという状況から、住宅ローンの残債を上回る売却価格での合意が必要になります。
(※アンダーローンといいます。)
抵当権の抹消については、以下の記事を参考にしてください。
-
-
抵当権抹消登記とは:手続き、必要書類、費用と相場、申請書作成方法
住宅ローンが完済すると抵当権抹消登記をすることになるのが一般的です。抵当権抹消登記とは、抵当権を消す登記です。その性質上、抵当権を設定した金融機関などから許可がなければ、抵当権抹消登記を行うことはできません。
抵当権抹消登記が行えるということは、融資を完済しているので差し押さえなどのリスクは通常考えられません。なので、別にしなくてもいいのではないのか?と思う方もいるでしょう。ですが、相続や急な売却になったときに困るのが常です。
今回は、抵当権抹消登記がどういうものなのかということや、費用など知っておくべき内容を抑えつつ、注意点も説明します。これを読めば、抵当権抹消登記についてはバッチリです。
抵当権抹消登記とは:手続き、必要書類、費用と相場、申請書作成方法
リースバックと譲渡所得
リースバックによる売却益には、譲渡所得(税金)がかかります。
手元資金の額に大きな影響を与えるので、忘れずに確認するようにしましょう。
ただし、自宅をリースバックする場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」が適応される可能性が高いです。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除が適応された場合、ほとんどのケースでは譲渡所得がかからなくなるので安心してください。
リースバックと買戻し(投資家の理解)
リースバックでは、将来的に買戻しを行うことが可能です。
しかし、引受人(買主)の同意が必要になるので、必ずではないことに注意してください。
どうしても不安な場合には、リースバック契約の締結時点で「買戻しの特約」を設定することもできます。
ただし、期限の定めなどがあるので、リースバック契約締結後の生活をしっかりとたて直さない限り、実現の可能性は低いです。
リースバックの賃料相場と考え方
リースバックの賃料相場は、
売却価格 × 10% ÷ 12ヶ月 = 賃料
となるケースが多いです。
10%の部分については、6%〜15%と幅があります。
何パーセントが適用されるかは、リースバックする物件の投資採算効率により異なります。
たとえば、
- 築年数も落ち着いていて、手頃な大きさの一戸建て
(資産価値の減少が少なく、需要が見込める) - 立地条件がよいマンション
(管理が悪化する心配もなく、需要が見込める) - 立地条件がよいテナント
(どのような業態にでも対応できる)
といった物件に適用されるパーセントは低くなる傾向にあります。
賃料と売却価格のジレンマ
リースバックでは、
- できるだけ高く売却して、手元資金を残したい
- 生活は苦しいので、賃料を安くしたい
というジレンマが起こります。
売却価格が上がれば、賃料が上がります。
賃料が下がれば、売却価格が下がります。
このジレンマに対して、売主が適切な対応をすることができるかによって、リースバック契約後の生活を立て直すことができるかが大きく左右されます。
売却価格を優先した方がよい場合
リースバック契約を活用する物件の他にも、借金などを抱えいて、すでに首が回らない状態の場合には、売却価格を優先した方がよいでしょう。
ほかの借金を多く抱えている場合には、多少の賃料を下げたところで、月々の返済額によって負担が変わらないということになります。
ほかの借金の月々返済額とのバランスが重要になりますが、トータルの生活コストが下げられる方向に持っていくようにしてください。
引受人(買主・貸主)にとっても、借主の生活が安定することは、不動産投資の視点からかなり重要な要素になります。
理解をしてほしいという姿勢で臨むのであれば、よい条件での契約成立も十分あり得ます。
賃料を優先した方がよい場合
賃料を優先した方がよい場合とは、
- 離婚をして、安定した収入が見込めない
- 夫に先立たれ、安定した収入が見込めない
といった、定期収入にリスクを抱えているときです。
上記のような場合には、賃料を下げて、生活を維持しやすくしておくのが賢明です。