中古マンションの値引き交渉では、
- 不動産業者
- 不動産相場
の2つを味方につけられるかどうかがカギを握ります。
不動産の仲介取引では、
- 売主
- 買主
- 不動産業者
の3者が登場します。
中古マンションを買いたいときには、「売主」にばかり意識が行きがちですが、実際に価格をコントロールしているのは、
- 不動産業者
- 不動産相場
です。
この記事では、中古マンションの値引き交渉を上手にすすめるための鉄則について、詳しく解説します。
手順に沿って理解を深めることで、中古マンションを値引きするコツが見えてくるので、取引の参考にしてください。
中古マンションの売主は、基本的に「脇役」
多くの人が勘違いをしていますが、中古マンションの取引において、売主は「脇役」にすぎません。
どのような流れで売主が中古マンションの売却をすすめるのかを考えると答えが見えてきます。
中古マンションを売るとき、大半の売主は「不動産業者」のコントロール下にあります。
より正確にいえば、売主が決める「販売価格(売出価格)」は「不動産業者」のコントロール下にあります。
売主が決めている(と思っている)価格は、「査定」に依存している
言い切りますが、ほとんどの中古マンションの売主は「ただの素人」です。
中古マンションの価値や、価値の決まり方などについて知識もなければ、経験も持ち合わせていません。
それゆえ、「査定」が中古マンションを売りたいときの入り口になっているのです。
右も左もわからないので、プロ(不動産業者)に意見を聞いてみたいと考えて「査定」を申し込むのです。
経験が豊富な不動産投資家の場合、「査定」をとばして、最初から「いくらで売ってくれ。」と付き合いのある不動産業者に依頼がかかります。
不動産業者が提示する査定価格は「物件を預かるための価格」でしかない
何もわからない売主から査定の依頼を受けた不動産業者が考えることは「いかにして物件を預かるか?」のひとつだけです。
物件を預かるために、
- 誠実な対応を心がける不動産業者
- 高値を提示して誘惑する不動産業者
- 営業力などを武器にする不動産業者
などがいるだけです。
様々なアプローチの中から、売主が気に入った不動産業者を選んでいるにすぎません。
基本的に、売主は不動産業者を「信用」している
すでにお話しした流れから、査定を終えた時点で、売主は不動産業者を「信用」しています。
すこし荒っぽい表現をすれば、売主は不動産業者の言いなりに近いのです。
スイカ割のようなもので、目隠しをされた売主は、不動産業者の手引きによって中古マンションの売却まで歩むことになります。
売主が選んだ不動産業者なので、盲目的に「間違いない。」と思うのです。
経験上、売却するうま味がなく、かなりの期間にわたって放置されている物件の持ち主でも、なかなか不動産業者を変えようとはしません。
売主が不動産業者を変えるときは、雑な扱いよりも「不動産業者の態度」が大半の原因になっています。
ですので、価格決定という意味では、売主は「脇役」にすぎないのです。
中古マンションの仲介取引では、不動産業者が「主役」
中古マンションの仲介取引では、不動産業者が「主役」になります。
不動産業者は、
- 中古マンションの相場価格(現在)
- 中古マンションの成約価格(過去)
- 中古マンションの反響(見込みも含む)
- 中古マンションの特徴(長所・短所)
- 売主が希望する売却価格
- 売主が希望する最低価格
- 売主が抱えているローン事情
など、価格交渉に直接影響する重要な情報を保有しています。
中古マンションの反響が、「交渉の強気・弱気」を決める
不動産業者は、中古マンションの反響で、「交渉の強気・弱気」を判断します。
反響数が多ければ「強気」の交渉をします。
なぜなら、反響数が多ければ「また次の購入希望者が現れる。」と考えられるからです。
反響数があまりにも多く、同じときに複数の購入希望者がいる場合には、ほかの購入希望者さえ交渉の材料にできます。
逆に、反響数が少なければ「弱気」の交渉をします。
なぜなら、反響数が少なければ「もう二度と購入希望者が現れないかもしれない。」と考えるからです。
反響数や、反響の反応(内覧での印象や手ごたえ)は、不動産業者にしか情報がありません。
反響数くらいであれば、売主にも報告が届きますが、反響の反応は、案内をした不動産業者にしかわからない生の情報です。
中古マンションの特徴が、「交渉のシナリオ」を決める
不動産業者は、中古マンションの特徴で、「交渉のシナリオ」を組み立てます。
長所をできるだけアピールし、短所は法に触れない範囲で隠します。
また、効果的に長所が響くターゲットも選ぶことができます。
さらに、長所や短所によって「どのような環境(シチュエーション)で案内するか?」まで組み立てることができます。
とても眺望がよいバルコニーがある物件であれば、晴れの日にカーテンを開けておいて案内をセッティングするなど当然です。
「交渉のシナリオ」を組み立てることによって、最高の状態で購入希望者を誘導することができるのです。
売主の売却希望価格・最低売却価格・ローンなどの事情が「売値」を決める
交渉の最終段階に入ると、
- 売主が希望する売却価格
- 売主が希望する最低価格
- 売主が抱えているローン事情
によって、不動産業者が「売値」を決めます。
当然、最終的にOKを出すか出さないかは「売主」にゆだねられます。
しかし、実質的には「不動産業者」に決定権があるのです。
例えば、「弱気」の中古マンションで、「シナリオ通り」に購入希望者が見つかり、交渉で提示された価格が「最低価格より高い」場合には、
「反響数から考えて、今回の交渉を断った場合、半年から1年は話がないと考えられます。」
「タイミング的にも最良のタイミングですし、購入希望者も眺望などの良いところについて、かなり気に入っているようです。」
「交渉で提示された価格は、売却希望価格からは数百万円下がりますが、最低価格よりはずいぶんと高いです。」
「見送ることで、次の購入希望者がなかなか現れない場合には、マンションの価値も下がるので、トータルで考えて、損をする可能性のほうが高いです。」
などというような言葉を並べます。
結果、高い確率で「成約」の運びになります。
不動産業者でも「相場価格」には逆らえない
あらゆる情報を握っている不動産業者でも「相場価格」だけはコントロールができません。
まずは「相場価格」をしっかりと知ることが、値引き交渉を有利に進めるポイントになります。
不動産業者からすれば、売主も買主も、どちらも「ただの素人」です。
中古マンションの価格については、赤子の手をひねるように簡単に納得させることができると考えています。
「高くないですか?」と問われれば、
- なかなか出てこないマンションなので希少価値が高い
- ほかの部屋やマンションに比べて、○○な特徴があるので希少価値が高い
- 周辺に○○などの施設が多く、利便性があり希少価値が高い
など、ベテランであれば瞬時に様々な理由を提示することができます。
冷静に考えてみれば、上から順に、
- よほどの劣悪マンションでない限り、そもそも同じマンションから大量に売りがでることはない
- 新築当初の販売戦略上、価格差などをつけるためにオプションなどが違うのは当然
- マンションは立地が命であり、利便性が極端に低いことは稀
なのです。
しかしならが、買う気になっている人は「納得」してしまいます。
なぜなら、買う気になっているからです。
買う気になっている人にしか響かないのですが、不動産業者からすれば、買う気になっている人に響けば十分なのです。
「言葉」に惑わされないためには、相場価格を知る必要がある
不動産業者の巧みな言葉に惑わされないためには、相場価格を知っている必要があります。
相場価格は、絶対的な指針であり、成約価格こそが「適正な価値」なのです。
相場価格を知らずして、交渉に臨むのは、親や子供などを医者に診察してもらうときと同じです。
とても大切な存在が「何かわからない病気」に苦しんでるときには、医者の「言葉」に信用をおきやすくなります。
同じように、「相場価格」を知らずして中古マンションを購入しようとすると、不動産業者の「言葉」に信用をおきやすくなるのです。
とても誠実でよい不動産業者に出会うことができればよいですが、世の中甘くありません。
相場価格を知ることは、あなたを守るための「防御のポイント」になるのです。
中古マンションの相場価格を調べる3つの方法
中古マンションの相場価格を調べるには、
- ポータルサイトを活用する方法
- 国土交通省などを活用する方法
の3つがあります。
上から順に手間がかかります。
ポータルサイトを活用する方法
情報が広く一般に公開されている情報サイトのことをポータルサイトといいます。
不動産の主要なポータルサイトは、
- アットホーム
- ホームズ
の2つです。
ほかにも、Yahoo!不動産やスーモなどがありますが、現状、上記の2つで十分です。
もっとも簡易的な方法は、以下の画像のような、
-
アットホームの物件検索ナビゲーション
-
ホームズの物件検索ナビゲーション
各サイトの物件検索ナビゲーションから、あなたが買いたい物件の所在する地域などを選択して、現在売出中の物件情報を確認する方法です。
条件を選択していくことで、条件に適合する現在売出中の物件が一覧で並びます。
- 間取り
- 面積
- 築年数
などの細かい条件を入力して、絞り込むことで、あなたの買いたい物件に似た物件の情報を取得できます。
注意点として、あくまでも売出価格なので、成約価格ではありません。
中古マンションの売主が決めた売りたい価格であり、「いくらくらいで市場に出ているのか?」の参考にすべきものです。
売出価格と成約価格
売出価格とは、売主が決めるマンションの表示価格です。
あくまでも、売主(および不動産業者)が単独で決めている価格なので、その価格でしか買えないわけではありません。
成約価格とは、売主と買主が合意した価格です。
売主と買主が相談をして、売買契約が成立した価格であり、実際に売れた価格を意味します。
ポータルサイト、情報誌、企業ホームページなどの広告に表示されている価格は、すべて売出価格です。
すこし深めに調査をするときには、
- 建物ライブラリー - アットホーム
- 価格調査 - ホームズ
を活用するとよいでしょう。
過去の情報などをさかのぼって調査することができます。
過去の情報をさかのぼったときに、現在売りに出ているマンションと同一のマンションを見つけたときには、価格を比較してみましょう。
- 売出価格と成約価格の差がどのくらい開いているのか
- 安すぎるまたは高すぎる価格の目安はどのくらいなのか
をつかむことができます。
国土交通省などを活用する方法
国土交通省や、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営しているサイトである、
を活用して相場価格を調査する方法を紹介します。
上記2サイトを活用するときには、
-
不動産取引価格情報(国土交通省)の物件検索ナビゲーション
-
レインズの物件検索ナビゲーション
上記の物件検索ナビゲーションを利用します。
アットホームやホームズと違って、実際に成約した価格(売れた価格)がデータベース化されています。
注意点として、あくまでも過去の成約価格であり、今の成約価格ではありません。
ちょっとした条件の違いで不動産の価格は大きく変わります。
不動産取引価格情報(国土交通省)のサイトは、国土交通省が管理しているサイトです。
レインズは、不動産流通機構が管理していますが、基本的には不動産業者向けに作られているサイトです。
ですので、アットホームやホームズに比べて、使いにくさが目立つのが欠点です。
とはいえ、非常に重要なデータを手に入れることができるので、しっかりチェックするようにしてください。
不動産業者には、ログインIDとパスワードが与えられており、会員のみアクセスすることができるページが用意されています。
より詳細な情報を取得できるようになっているのですが、まじめに入力していない不動産業者も多く、必ずしも機能しているわけではありません。
値引き交渉の攻めのポイント「不動産業者」を味方につける
値引き交渉の攻めのポイントは、「不動産業者」を味方につけることです。
「不動産業者」を味方につけるコツは、
- 不動産業者の立場に立って考えること
- 不動産業者をイラつかせないこと
です。
あなたの購入の意思が固まってから値引き交渉を始める
あなたが購入の意思が固まってから値引き交渉を持ち掛けてください。
購入の意思が固まっていない段階で、とりあえず値引き交渉を持ち掛けるのはタブーです。
どのような状況であれ、買う気なく値引きを持ち掛けることは悪影響を及ぼします。
購入の意思が十分に固まっていない状態で値引き交渉を持ち掛けると、
- 不動産業者に真剣に相手にしてもらえなくなる
- 不動産業者が誠意をもって対応してくれなくなる
恐れがあります。
結果、今している話だけでなく、今後本当に気に入った中古マンションが出てきたときにも悪影響を引きずることになります。
不動産業者の立場で考えれば理由は明確で、相手は「交渉の代理人」なのです。
しかも、仲介手数料という利益を大きくするためには「できるだけ高く売りたい」と考えています。
買う気がない相手に対して、「○○万円値引きします。」と告げることは、交渉を圧倒的に不利にしてしまいます。
弱みに付け込まれてしまえば、さらなる値引きを求められる危険性もあるのです。
値引き交渉は、購入の意思が固まってから始めましょう。
値引き交渉のために不動産業者に「手土産」を持たせる
先にも伝えた通り、不動産業者は「交渉の代理人」です。
あなたから「いくらにしてほしい!」という指値を受けたら、売主と交渉をしにいきます。
ですので、売主との値引き交渉をするための「手土産」がほしいのです。
例えば、
- 立地は気に入っているのだけれども、リフォームが必要だからお金をすこし残したい
- とても気に入っていて、すぐにでも買いたいのだけれども、予算をすこしオーバーしている
- ほかのマンションと比べて、○○の点で劣っていて、リフォームも規約上できないから金銭でカバーしたい
など、売主に考えてもらえるような「何か」がほしいのです。
売主と値引き交渉をするときに、理由なく100万円値引きをしてほしいと提案しても効果が薄いです。
しかし、しっかりとした理由があって100万円値引いてほしいといわれると、売主も考える余地が出てきます。
売主を納得させることができるような「手土産」があれば、不動産業者も前向きに交渉に向かえます。
値引き交渉のために「気のある風」を演出する
不動産業者に案内をされているときには、「気のある風」を演出します。
何度も案内をしていると、成約に結び付くかどうかは「なんとなく」わかります。
「ダメそうだなぁ。」と感じてしまうと、とたんにやる気がなくなり、話そのものが消えてしまいます。
「ちょっと気に入っているけど買うかどうかはゆっくり考える風」を装ってください。
購入の意思が固まっていない状態で「値引き交渉」を持ち掛けるのはタブーですが、「買いそうな感じ」をほのめかすのは大事です。
恋愛と似たようなもので、不動産業者から「どういった点でお悩みですか?」などの質問を受けるような関心を持たせてください。
値引き交渉のタイミングを遅らせることで、「焦らし」を演出する
値引き交渉を持ち出すには、タイミングがあります。
物件の見学が終わり、費用の計算や物件の調査などが完了してからです。
それまでは値引き交渉を持ち掛けないようにしましょう。
焦る必要はありません。
不動産業者は、売主が値引きできる限界を知っています。
あなたがじっくりと物事を考えている間に、不動産業者から値引きを持ちかけてきたら儲けものです。
いきなり最低価格を提示してくることは考えにくいので、さらに下げられる可能性が高いです。
また、「どういった点でお悩みですか?」などと聞かれたときには、価格以外のこと(立地や間取りなど)を答えてください。
続けて、「となると、この値段では納得しにくいよね。」といった一言を添えるくらいがベターです。
立地や間取りは動かしようがないので、不動産業者としては困ってしまいます。
困り果てた末に、金額という努力可能な条件が出てくると弱いものです。
営業マンが新人だと売主を相手に熱心な価格交渉をしてきてくれます。
「相場価格」で守備を固め、「不動産業者」で攻める!
中古マンションの値引き交渉をうまく進めるためには、
- 相場価格で守備を固める
- 不動産業者にうまく攻めさせる
の2つがポイントです。
相場価格で守備を固めたあとは、不動産業者をうまく味方につけて攻めてもらいましょう。
あなたが武器を持つのではなく、不動産業者に武器を持たせるのがポイントです。