不動産の法律 国土利用計画法

国土利用計画法:土地取引の規制(注視/監視/規制区域、届出・許可制)


土地は、わたしたちの生活と密接に関係している財産です。

しかし、ほかの財産(生産財)と違い、国土には限りがあります。

そのため、土地は計画的かつ総合的に利用されるように的確な管理がされなければいけません。

本記事(ならびに、付随する記事)では、国土利用計画法について解説しています。

この記事からわかること

  • 土地取引の規制について
  • 土地取引の規制(早見表)
  • 全国(注視・監視・規制区域以外の区域)について
  • 注視区域について
  • 監視区域について
  • 規制区域について
  • 各区域の適用除外について

参考ページ(および注釈)

国土利用計画法(e-Gov)
※本ページの記載内容は、2017年11月26日現在に施行されている法令に基づいています。


土地取引の規制

国土利用基本法には、

  • 土地の投機的取引
  • 地価の高騰

が国民の生活に及ぼす影響(弊害)を除去するという目的があります。

高度経済成長期(バブル経済)には、土地価格(および不動産全体の価格)が、急速なスピードで上昇しました。

価格の高騰スピードはすさまじく、1,000万円で購入した土地が、数か月後に2,000万円で売れるといったことが全国で起きていました。

そのため、土地が投機的(ギャンブル性の高い)取引の対象となり、景気の良い話も聞ける一方、破産者も続出するなど、国民の生活を脅かす事態に陥っていました。

宅地や商業地などとして利用されるべき土地が、本来の目的を見失い、マネーゲームの対象となることによる日本全体の不利益を解消するために「国土利用計画法」が制定されたという背景があります。

解決方法として導入されたのが、土地取引を、

  • 届出制
  • 許可制

にして、市場を監視するという方法です。

土地取引の規制(早見表)

以下は、導入された規制内容の早見表です。

区域名 全国
(注視・監視・規制区域以外の区域)
注視区域 監視区域 規制区域
面積規定 市街化区域 … 2,000㎡以上
市街化調整区域および非線引都市計画区域 … 5,000㎡以上
都市計画区域外 … 10,000㎡以上
都道府県が個別に定めた面積以上 すべての面積
取引の種類 一定の土地取引(売買等)
届出義務者 買主等
(権利を取得した者)
契約の両当事者 契約の両当事者の申請
届出の時期および要件 取引の事後に届出
(取引後2週間以内)
取引の事前に届出
(契約締結前)
取引の事前に知事の許可
物理的・計画的一体性の判断 買主等 両当事者 -
審査対象 利用目的 予定対価の額
利用目的
予定対価の額
利用目的
権利移転の内容
予定対価の額
利用目的
審査期間 3週間以内 6週間以内
再届出(および許可)の要否 - 減額以外は再度の届出(または許可)が必要
契約の有効性 届出なく契約をしても有効 許可がなければ無効

例えば、注視区域にある市街化区域内の2,500㎡の土地を売買する場合には、

  • 面積要件(市街化区域内は2,000㎡以上)を満たしている
  • 一定の土地取引(売買等)を満たしている

ので、

  • 取引の両当事者(買主および売主)が、
  • 取引の事前に届出をし、
  • 取引の両当事者(買主および売主)が判断の対象となり、
  • 予定対価の額および利用目的が審査され、
  • 審査の結果は6週間以内に分かり、
  • 減額以外の指示を受けた場合には、指示内容を修正したうえで、もう一度届出を行う必要

があります。

しかし、届出をせずに契約をしても、当該契約は有効です。

届出および許可を要する土地取引

届出および許可を要する土地取引は、

  • 土地に関する権利(所有権、地上権、賃借権)の移転・設定があるもの
  • 対価を得て行われるもの
  • 契約(予約を含む)を結ぶもの

の3要件を満たす取引です。

具体的な例を挙げると、

  • 売買契約
  • 交換契約
  • 譲渡担保
  • 代物弁済
  • 権利金の授受よある地上権および土地賃借権の設定・移転
  • 形成権の譲渡
  • 土地区画整理事業における保留地の売買

などがあります。

まごころう

3要件のなかでも、「対価を得て行われるもの」は見逃されがちで、

  • 贈与
  • 相続
  • 抵当権の設定
  • 質権の設定
  • 権利金の授受のない地上権および土地賃借権の設定・移転

などは、対象となる取引に含まれません。

届出書および許可申請書に記載すべき内容

届出書および許可申請書には、

  • 契約の両当事者の氏名
  • 契約の両当事者の住所
  • 土地の所在
  • 土地の面積
  • 移転または設定に係る土地に関する権利の種別
  • 移転または設定に係る土地に関する権利の内容
  • 予定対価の額
    (事後届出制においては対価の額)
  • 移転または設定後の土地の利用目的

を記載しなければいけません。

届出書および許可申請書の記載内容に変更があった場合

届出書および許可申請書の記載内容に変更があった場合には、区域に応じて対応が異なります。

注視区域・監視区域・規制区域内では、予定対価の額を減額する場合を除き、再度の届出または許可申請が必要です。

全国(注視区域・監視区域・規制区域以外の区域)では、再度の届出は不要です。

まごころう
土地取引の規制目的を考えれば、自然と答えがわかります。

投機的取引および土地価格の高騰を防ぐのが目的なので、減額の場合には、双方が起きる心配はありません。

また、注視区域・監視区域・規制区域に指定されていない区域では、そもそも投機的取引および土地価格の高騰が起こらないだろうと考えられているので、補足的なスタンスです。

審査対象(および勧告の基準)

審査対象は、区域によって異なり、

全国(注視・監視・規制区域以外の区域)
  • 土地の利用目的
注視区域
  • 土地の利用目的
  • 予定対価の額
監視区域
  • 土地の利用目的
  • 予定対価の額
  • 権利の移転の内容
    (投機的取引にあたるか)
規制区域
  • 土地の利用目的
  • 予定対価の額

上の表のようになっています。

土地の利用目的

土地の利用目的の審査基準(フローチャート)

土地の利用目的の審査では、

  • 土地利用基本計画(およびその他の土地利用に関する計画)への適合性
  • 届出を受けた土地および周辺の地域への適合性

の2つが主に判断されます。

まずは、届出された土地の権利の移転または設定後における土地の利用目的が、土地利用基本計画(およびその他の土地利用に関する計画)に適合しているかどうか判断します。

その後、届出を受けた土地の利用目的が、その土地および周辺の地域の状況を考えて、適正かつ合理的な土地利用を図ることができるかどうか判断されます。

総合的に判断して、著しく支障があると認められる場合には、勧告を受けることになります。

まごころう
事前届出制(注視・監視区域)の区域内では、上記の判断基準に加えて、

  • 道路、水道、その他の公共施設および学校その他の公共的施設の整備の予定からみて、明らかに不適合であるもの
  • 周辺の自然環境の保全上、明らかに不適合であるもの

も勧告の対象となります。

予定対価の額

予定対価の額の審査基準(フローチャート)

予定対価の額の審査では、

  • 近傍類地(付近の似た土地)の取引価格等
  • 政令で定めるところにより算定した土地に関する権利の相当な価格

の2つが主に判断されます。

例えば、届出を受けた取引が地価公示法に基づく公示区域に所在する土地の売買(所有権)であったとします。

まず、当該土地が公示価格を取引の指標とすべきものであるかどうかを判断します。

公示価格を取引の指標とすべき土地だと判断された場合には、権利の種類(所有権)に応じた公示価格を基準として算定した価格と照らし合わせて、最終的な判断がなされます。

権利の移転の内容(投機的取引にあたるか)

権利の移転の内容の審査(フローチャート)

権利の移転の内容の審査では、

  • 投機的取引の要件
  • 届出を受けた土地および周辺の地域の適正な地価の形成への影響

の2つが主に判断されます。

投機的取引の要件は、

  • 権利を移転しようとする者の審査(審査①)
  • 届出に係る土地に関する権利の移転の審査(審査②)
  • 権利の移転を受けようとする者の審査(審査③)

の3つの審査に分かれます。

3つの審査すべてに該当し、かつ、届出を受けた土地および周辺の地域の適正な地価の形成への影響が著しいとは判断された場合には、勧告を受けることになります。

審査①:権利を移転しようとする者の審査
以下の要件のいずれにも該当すること
要件1 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が当該権利を土地売買等の契約により取得したものであること。

※ただし、

  • その土地売買等の契約が民事調停法による調停に基づくものである場合
  • 当該権利が国等から取得されたものである場合
  • 担保権の実行として行われる場合
  • その他政令で定める場合

を除く。

要件2 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者により当該権利が取得された後1年以内に、その届出がされたものであること。
要件3 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が、当該権利を取得した後、その届出に係る土地を

  • 自らの居住
  • 事業のための用
  • その他自ら利用するため

の用途に供していないこと。
(一時的な利用その他政令で定める利用を除く。)

要件4 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者が、

  • 事業として届出に係る土地について区画形質の変更または建築物その他の工作物建築もしくは建設を行った者
  • 債権の担保その他政令で定める通常の経済活動として、届出に係る土地に関する権利を取得した者

のいずれにも該当しないこと。

審査②:届出に係る土地に関する権利の移転の審査
以下の要件のいずれにも該当しないこと
要件1 債権の担保その他の政令で定める通常の経済活動として行われるもの。
要件2 区画形質の変更等の事業の用またはこれらの事業の用に供する土地の代替の用に供するために土地に関する権利を買い取られた者に対してその権利の代替の用に供するために行われるものであって政令で定めるもの。
要件3 届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者に対してその権利の代替の用に供するために行われるものであって政令で定めるもの。
審査③:権利の移転を受けようとする者の審査
(以下のいずれにも該当しないこと)
要件1 届出に係る土地を自ら利用するための用途に供しようとする者
要件2 事業として届出に係る土地について区画形質の変更を行った後、その事業としてその届出に係る土地に関する権利を移転しようとする者
要件3 届出に係る土地を自ら利用するための用途に供しようとする者に、その届出に係る土地に関する権利を移転することが確実であると認められる者
要件4 届出に係る土地について区画形質の変更等を事業として行おうとする者に、その届出に係る土地に関する権利を移転することが確実であると認められる者

物理的・計画的一体性の判断

複数の土地取引において、それぞれの取引面積が規定以下であったとしても、

  • 物理的
  • 計画的

に一体性を伴った土地取引であるときには、それらの取引面積の合計が面積要件を満たす場合に、届出をしなければいけません。

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