冒頭から結論に入りますが、マンションを売却するときに不動産業者に支払う手数料は「仲介手数料(3%+6万円)」だけです。
宅建業法の改正、暴力団の排除などが進み、不動産業界もかなり健全になりましたが、いまだに「悪徳な不動産業者」がいることは事実です。
悪徳な不動産業者の中には、
- 地域によって習慣が違う
- 買主(もしくは、売主)のいずれかが「6%+12万円(双方分)」を負担する
- 追加報酬として「○○料(架空の名目)」を払ってもらっている
など、巧みに騙しの手口を用意しているものがいます。
取引を任せている不動産業者がすこしでもおかしなことを言ったら、注意してください。
- 最寄りの宅建協会に相談に行く
- 法律相談所に相談しに行く
など、相談する先はたくさん用意されています。
事実をしっかりと確認したうえで、適切に対処して、まともな不動産業者と新たに取引を開始するようにしましょう。
だからといって、法律に定められているより多い額を受け取ってよいわけではありません。
不届きな不動産業者から身を守ることができるのは、あなただけです。
仲介手数料には、法律で規定された全国共通のルールがある
不動産業者が受け取ることのできる仲介手数料は、法律で明確に規定されています。
法律に明記されていることは「日本全国共通のルール」です。
東京であれ、大阪であれ、広島であれ、鳥取であれ、関係ありません。
全国一律、すべての不動産業者が守らなければいけないルールです。
仲介手数料の上限額は「成約価格×3%+6万円(税別)」
仲介手数料の上限額は、
(成約価格 × 3% + 6万円) + 消費税 = 仲介手数料の上限額
という計算をします。
(※物件価格が400万円以上の場合)
例
マンションが5,000万円で売れた(売買契約を結んだ価格 = 成約価格)のであれば、
(5,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税 = 156万円 + 消費税
となります。
「成約価格×3%+6万円(税別)」の2倍が、不動産業者が受け取ることができる上限額
不動産業者は、仲介手数料の上限額を取引の双方から受け取ることができます。
取引の双方とは、
- 買主
- 売主
のことです。
例
マンションを5,000万円で売買契約を結んだのであれば、
(156万円 + 消費税) × 2 = 312万円 + 消費税
を受け取ることができます。
「成約価格×3%+6万円(税別)」は、取引の片方(売主または買主)から受け取れる上限額
取引の片方(売主または買主)が不動産業者に支払う仲介手数料の上限額は、
(成約価格 × 3% + 6万円) + 消費税 = 仲介手数料の上限額
までです。
例
マンションを5,000万円で売買契約を結んだときに、買主が「1.5% + 消費税(半額)」しか払わないからという理由で、売主に「4.5% + 消費税(買主分を負担)」支払わせることは違法です。
この場合、不動産業者が受け取ることができる仲介手数料は、
- 買主分:(156万円 + 消費税) ÷ 2 = 78万円 + 消費税 … ①
- 売主分:(156万円 + 消費税) … ②
- 合計:① + ② = 78万円 + 156万円 + 消費税 = 234万円 + 消費税
までです。
複数の業者が介入してきても仲介手数料の上限額は変わらない
マンションの仲介取引に「複数の不動産業者(および個人)」が介入してきても、仲介手数料の上限額は変わりません。
例
マンションを5,000万円で売買契約を結んだときに、
- 買主:不動産業者Bから紹介を受けて、不動産業者Aが担当
- 売主:不動産業者Aが担当
した場合、取引の関係者は「買主、売主、不動産業者A、不動産業者B」の4者になります。
この場合には、
- 買主側の仲介手数料:不動産業者AおよびBが、上限額内で分け合う
- 売主側の仲介手数料:不動産業者Aが上限額内で受け取る
という流れになるので、買主側の仲介手数料を、不動産業者AとBが折半(半分ずつ)にした場合、
- 不動産業者Aが受け取る仲介手数料の上限額:「156万円 + 消費税(売主側)」 + 「78万円 + 消費税(買主側)」 = 234万円 + 消費税 … ①
- 不動産業者Bが受け取る仲介手数料の上限額:「78万円 + 消費税(買主側)」 … ②
- 仲介手数料の合計上限額:① + ② = 234万円 + 78万円 + 消費税 = 312万円 + 消費税
となります。
買主側の仲介手数料は、不動産会社AとBに支払っているので、「+6万円」を2回して、「+12万円」になるということもありません。
あくまでも、片方からの上限額内で折半です。
不動産の種類(戸建て、マンションなど)は、一切関係がない
仲介手数料の上限額と、不動産の種類(戸建て、マンションなど)は、一切関係がありません。
あくまでも、成約価格(売買契約書の記載価格)によって決まるものであり、
- 木造だから2%
- 鉄筋鉄骨だから4%
- 築年数が15年だから6%
などといったことにはなりません。
仲介手数料は「成功報酬」なので、本来は「決済・引渡し」まで支払う必要がない
仲介手数料は「成功報酬」なので、売買契約を結び、無事に決済・引渡しが終わるまで、本来は支払う必要はありません。
慣習として、
- 売買契約時に、仲介手数料の半額を支払う
- 決済・引渡時に、仲介手数料の半額(残金)を支払う
というものがあるだけです。
本来であれば、媒介契約書に特段の定めがない限り、「決済・引渡し時(つまり、取引の完了時)」に全額支払うものです。
媒介契約の期限および記載価格と仲介手数料には、何の関係もない
仲介手数料の上限額は、あくまでも「成約価格(売買契約書に記載された価格)」をベースに考えるものです。
成約価格が5,000万円だけれども、媒介契約書には6,000万円(売出価格)と書いてあるから、6,000万円をベースに考えるというものではありません。
また、仲介手数料の支払いと、媒介契約の期限には、何の関係もありません。
媒介契約を結んだが、媒介契約の期限内に売ることができず、媒介契約を解除したからといって、仲介手数料を支払う必要はありません。
あくまでも、成功報酬なので、無事に売却することができたときだけ支払うお金です。
別の項目を使って「追加報酬」を受け取ることは違法行為
マンションの売却において、仲介手数料以外の項目を使って「追加報酬」を受け取ることは違法行為です。
例えば、
- 紹介料
- 買取保証手数料
などの項目を用意して、追加報酬を受け取ろうとする不動産業者が少なからずいます。
完全に違法行為であり、媒介契約書などに上記のような記載があった場合には、すぐに取引を停止してください。
すでにトラブルに発展している場合には、
- 最寄りの宅建協会に相談に行く
- 法律相談所に相談しに行く
など、適切なところへ相談に行ってください。
「裁判」では、高額な費用など負担が発生しますが、「調停」は気軽にすることができます。
そもそも、「調停」という言葉を出すだけで逃げ出すと思いますので、有効に活用するようにしましょう。
特段の定め(仲介手数料の減額など)は「媒介契約書」に必ず明記する
特段の定め(仲介手数料の減額など)がある場合には、口約束ではなく、必ず「媒介契約書」に明記するようにしてください。
不用意にサインをしてしまうと、「そんな約束をした覚えはないし、契約書にも、こう書いてある。」と言われます。
書面に残すことを依頼して、嫌がるような不動産業者(および担当者)は、
- 悪徳な者
- 大事な財産を預かる意識に欠ける者
のいずれかです。
唯一、例外といえるのは「事務手数料」
不動産業者に支払うお金で、手数料とつくもので、唯一、例外といえるのは「事務手数料」だけです。
事務手数料以外の「手数料」と銘打った項目には、十分に注意しましょう。
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