これから不動産を売るにあたって、権利証(登記済証・登記識別情報)の準備はできていますか?権利証は、対象の不動産について法的に権利を有している人であることの証明でもあります。必要になったときに慌てる前に、しっかりと準備しておきましょう。
また、不動産を相続した方などは「実は権利証が見当たりません...。」ということもあるでしょう。権利証を紛失してしまった場合、再発行などで対応できるのかどうか。困ったときの対応についても解説します。
もっとも基本的なところですが、権利証・登記済証・登記識別情報、それぞれの違いについても解説します。結局は同じものですが、違いを知って、混乱しないようにしておきましょう。(この記事内で、権利証と記載した場合には、登記済証・登記識別情報の両方を意味します。)
[voice icon="https://antenna-re.b-cdn.net/wp-content/uploads/2016/02/S.KOU_-1.jpg" name="S.KOU" type="l"]権利証については、「超重要書類です!」と言われることが多いです。確かに重要書類ではあるのですが、なかったらどうにもならないのかというと、そうではないので安心してください。[/voice]
[aside type="normal"]このプロセスの目的
①権利証(登記済証・登記識別情報)について知る
②権利証(登記済証・登記識別情報)を紛失した場合の対応
[/aside]
この記事は、徹底解説シリーズ:不動産売却編の一部です。
登記済証とは
一般に言われる「権利証」とは、「登記済証」のことを言います。では、どちらが正しい言葉かということですが、登記済証が正式な名前です。登記済証のことを、一般的に権利証といい、権利証という書類は実際にはないものです。
登記済証は、新たに申請された登記が完了したときに、登記所が登記名義人に発行するものです。登記済証は、それひとつで不動産の権利者であることを法的に表せる書類だと勘違いされていることがあります。どちらかというと、「あなたの申請した登記が無事に完了しましたよ。」というお知らせです。とはいえ、重要書類なので紛失しないようにしてください。
登記識別情報とは
登記済証と登記識別情報は、実質的には同じものです。平成16年(2004年)に行われた不動産登記法の改正以後、登記済証の発行に代わって、登記識別情報が発行されるようになりました。不動産登記法の改正は、インターネットを活用した登記手続きを行えるようにすることを目的としたものです。
登記識別情報には、数字・記号を使った12桁の番号が記載されています。登記の申請をした申請人にのみ通知される番号で、この番号を使って登記申請者本人であることを識別します。難しい言葉が続きますが、キャッシュカードなどに設定する暗証番号のようなものだと考えてください。
登記識別情報のシール
登記識別情報には、シールが貼られています。シールの下に12桁の番号が書かれています。番号を盗み見られたりすることを防ぐ目的で貼られているので、基本的には剥がさないでください。
不動産の売却と権利証
不動産を売るときに、どうして権利証が必要なのかですが、新たな買主(所有者)に所有権を移転するためです。所有権の移転を申請された登記所は、まず売主が正しい権利者かどうか確認します。この確認作業において、権利証を使用します。
登記識別情報には、12桁の番号が記載されていることを説明しました。実は、登記済証にも番号が記載されていて、「登記済」と書かれた赤い印鑑部分に書かれています。これらの番号と、すでに登記されている記録番号が一致するかどうかを確認しています。
保存登記の権利証が重要
権利証であれば何でもよいのかというと、違います。抵当権や賃借権の設定でも登記済証は発行されます。不動産の売却で必要なのは、保存登記の権利証であり、所有権を証明するものです。手元にある権利証が、所有権を証明するものかどうか必ず確認するようにしましょう。
権利証を紛失してしまった場合
大事にしまいすぎて、どこに片づけたのか分からなくなってしまった。親から相続したのだが、親がどこに片づけたのか分からず、結局見つからない。このように権利証を失くしてしまったときの対応について解説します。
登記済証と登記識別情報で紛失したときの対応に違いがあるのかですが、同じです。もともと同一の性質を持つ書類なので、名前が違っても扱いは一緒です。
権利証(登記済証・登記識別情報)を紛失した場合
権利証を紛失したときに、まず気になるのが「悪用」されないかどうかだと思います。悪用については、ひとまず安心してください。勝手に登記の申請をしてしまわれないかということについてですが、権利証のみでは手続きが完了しません。
登記の申請をするときには、登記済証以外にも印鑑証明書など本人確認書類を必要とします。ですので、不正に登記済証を入手した第三者が、登記を勝手にしてしまうことは簡単にはできません。とはいえ、実印などをしっかりと管理していなかったときは、例外です。
不正登記防止申出の利用
不正に登記されてしまう危険性があるときには、不正登記防止申出の制度を利用します。名前の通りではあるのですが、不正な登記を防止するための申出をする制度です。この制度を利用すると、なりすまし登記を3か月間のみ防止することができます。
注意したいのは、3か月間のみ防止できる制度なので、3か月経過しても危険な状態が続いているようであれば、改めて申出をする必要があります。また、防止するためのものであって、禁止するものではありません。委任によって代理人をたてることもできるので、不安な時には司法書士に相談するのがよいでしょう。
事前通知(不動産登記法第23条第1 項)による失効措置
所有権を移転するときには、原則として権利証を提出することとされています。ですが、提出できない正当な理由があるときには、ほかの方法によって登記の申請ができるようになっています。どれだけ頑張っても権利証が見つからないというときに残されている最後の登記手段です。
まず、登記所(登記官)から登記名義人へ「事前通知」というものが送られます。送り先は、登記名義人が登記している住所地です。郵送方法は、本人限定受取郵便なので、本人確認書類が必要になります。
事前通知を受け取ってから2週間以内に、真偽について申出をします。「間違いなく本人です。」という報告を受けてから、登記の手続きが行われるという流れです。こちらの手続きも司法書士に依頼することが可能です。
まとめ
一般に「権利証」と呼ばれますが、「登記済証・登記識別情報」が正式な名前で、どれも同じものです。所有権の移転をするときに必要になる書類ですが、ほかに印鑑証明書なども提出する必要があります。手元にあるかどうか確認しておきましょう。
もし、何らかの事情で紛失してしまったというときにも慌てずに対処してください。権利証だけで登記ができてしまうものではありません。安心できない状況であるときには、不正登記防止申出の制度を利用しましょう。また、見つからなかったとしても登記をする方法は残されているので司法書士の先生に相談するなどして、確実に進めましょう。