生産緑地法は、昭和49年に施行され、直近では平成29年5月12日に改正が行われました。
一般的には「2022年問題」などと言われ、市街地にある農地が大量に不動産市場に流れ込み、地価の暴落を招くと言われています。
この記事では、2022年問題について考えるうえで避けて通ることができない「生産緑地法」について、重要なところをピックアップしながら解説しています。
憶測や過剰な煽り文句によって、問題が大きくなりすぎていることもあるので、生産緑地法に関する問題に直面している人は注意が必要です。
正しい認識をしたうえで、どのような対応をとるのが最善なのかを考えるようにしましょう。
この記事からわかること
- 生産緑地法の目的
- 生産緑地法に関する重要な定義(登場人物)
- 国及び地方公共団体の責務
- 生産緑地地区に関する都市計画
- 生産緑地の管理
- 生産緑地地区内における行為の制限
- 生産緑地の買取りの申出
- 生産緑地の買取り等
- 生産緑地の買取りの通知等
- 生産緑地の取得のあっせん
- 生産緑地地区内における行為の制限の解除
- 生産緑地の買取り希望の申出
目的
生産緑地法 第一条
この法律は、生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的とする。
上記は、生産緑地法 第一条(目的)の原文です。
条文にあるように、生産緑地法は都市計画の一部であり、都市計画法と密接な関係があります。生産緑地地区での都市計画に関して、さまざまな取り決めを行い、そのルールに沿って、農林漁業のバランスの取れた街づくりを目指しましょうという法律です。
定義(登場人物)
生産緑地法 第二条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 農地等 現に農業の用に供されている農地若しくは採草放牧地、現に林業の用に供されている森林又は現に漁業の用に供されている池沼(これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林漁業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)をいう。
二 公共施設等 公園、緑地その他の政令で定める公共の用に供する施設及び学校、病院その他の公益性が高いと認められる施設で政令で定めるものをいう。
三 生産緑地 第三条第一項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいう。
四 地方公共団体等 地方公共団体及び土地開発公社その他の政令で定める法人をいう。
上記は、生産緑地法 第二条(定義)の原文です。
生産緑地法にかかわる用語の意義について定義されています。登場人物の一覧だと考えてください。
出てくる用語は、
- 農地等
- 公共施設等
- 生産緑地
- 地方公共団体等
の4つです。
この4つは生産緑地法を理解するうえで、欠かすことのできない要素ということです。
農地等
農地法でいうところの「現況主義」です。
確認した現在、農業・林業・漁業に使われている土地を「農地等」として扱います。
また、農地そのものに隣接し、農林漁業のために使われている農業用道路やその他の土地についても「農地等」に含むとされています。
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公共施設等
- 公園
- 緑地
- 学校
- 病院
- その他の政令で定める公共の用に供する施設
- その他の公益性が高いと認められる施設
を「公共施設等」としています。
生産緑地
生産緑地地区(第三条第一項で規定・後述)に指定された区域内の土地または森林のことを「生産緑地」としています。
生産緑地地区の指定を受けた地区にある土地・森林は、すべて生産緑地です。生産緑地とは、農地等だけを指す言葉ではありません。
地方公共団体等
- 地方公共団体
- 土地開発公社
- その他の政令で定める法人
を「地方公共団体等」としています。
国及び地方公共団体の責務
生産緑地法 第二条の二
国及び地方公共団体は、公園、緑地その他の公共空地の整備の現況及び将来の見通しを勘案して、都市における農地等の適正な保全を図ることにより良好な都市環境の形成に資するよう努めなければならない。
上記は、生産緑地法 第二条の二(国及び地方公共団体の責務)の原文です。
都市開発が進むにつれて、都市部にある農地が営農を続けるのは困難になっていくことが予想されます。
水路の確保も難しくなります。また、トラクターなどで一般道路を走行することは、社会全体の利益を著しく損なう行為になりかねません。
国及び地方公共団体には、すでにある公園、緑地、空き地などの状況や将来の見通しを勘案しながら、今後どのように都市開発を進めていけば、都市にある農地等と都市産業のバランスが保たれるのかをしっかり考える責務があるとされています。
生産緑地地区に関する都市計画
生産緑地法 第三条
市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の規定による市街化区域をいう。)内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、都市計画に生産緑地地区を定めることができる。
一 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
二 五百平方メートル以上の規模の区域であること。
三 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
2 市町村は、公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して必要があると認めるときは、前項第二号の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域の規模に関する条件を別に定めることができる。
3 生産緑地地区に関する都市計画の案については、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)第百六条第三項又は農住組合法(昭和五十五年法律第八十六号)第八十八条第二項の規定による要請があつた土地の区域に係るものを除き、当該生産緑地地区内における農地等利害関係人の同意を得なければならない。
4 前項の「農地等利害関係人」とは、農地等(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)第九十八条第一項(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法第八十三条において準用する場合を含む。)の規定により仮換地として指定された農地等にあつては、当該農地等に対応する従前の土地。以下この項において同じ。)について所有権、対抗要件を備えた地上権若しくは賃借権又は登記した永小作権、先取特権、質権若しくは抵当権を有する者及びこれらの権利に関する仮登記若しくは差押えの登記又は農地等に関する買戻しの特約の登記の登記名義人をいう。
5 生産緑地地区に関する都市計画を定めるに当たつては、当該生産緑地地区に係る農地等及びその周辺の地域における幹線街路、下水道等の主要な都市施設の整備に支障を及ぼさないようにし、かつ、当該都市計画区域内における土地利用の動向、人口及び産業の将来の見通し等を勘案して、合理的な土地利用に支障を及ぼさないようにしなければならない。
上記は、生産緑地法 第三条(生産緑地地区に関する都市計画)の原文です。
まず、生産緑地地区を定めることができる条件について書かれています。
条文によれば、
市街化区域内にある農地等で、
- 公害や災害の防止、農林漁業とバランスの取れた都市環境の保全など良好な生活環境の確保に効果があること
- 公共施設等の敷地として活用するのに適していること
- 500㎡以上の規模の区域であること
- 農林業業が継続できる用排水その他の環境が整っていると認められること
の条件を満たしている区域について「生産緑地地区」に指定ができるとされています。
例外として、市町村は、土地の利用状況をみて必要があると認められるときには、500㎡未満の区域であっても、区域の規模に関する条件を別に定めることができるとされています(条例による)。
生産緑地地区に関する都市計画の案
都市計画を決定するときには案を作成しなければいけません。
生産緑地地区に関する都市計画の案については、
- 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法
- 農住組合法
による要請があった土地の区域に係るものを除いて、その案に関係する生産緑地地区内の農地等利害関係人の同意を得なければいけません。
農地等利害関係人とは、一般的に考えられる範囲に加えて、土地区画整理事業などにより仮換地にしていされた農地等について、従前の土地(換地前の土地)について
- 所有権
- 対抗要件を備えた地上権
- 対抗要件を備えた賃借権
- 登記した永小作権
- 先取特権
- 質権もしくは抵当権
- 質権もしくは抵当権に関する仮登記
- 差し押さえの登記
- 農地等に関する買戻しの特約の登記
の権利者・登記名義人である者を指します。
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土地区画整理事業:概要と事業の認可まで
日本のように国土が少ない国では、土地の有効活用は経済成長に不可欠な要素です。地方の郊外や、発展の著しい都会では、土地の利便性を向上させるために整地する必要があります。都市計画に従って、一帯の土地を整備する事業を土地区画整理事業といいます。
今回の記事では、土地区画整理事業の概要と認可までの流れについて解説します。まずは、大まかな流れや目的についてざっくりと理解します。その後、土地区画整理事業の中でも認可までの流れについて詳しい解説をします。
生産緑地地区に関する都市計画の決定
生産緑地地区に関する都市計画を定めるときには、
- その生産緑地地区に関係する農地等
- その農地等の周辺の地域における幹線街路
- その農地等の周辺の地域における下水道等
- その他、主要な都市施設
の整備に支障を及ぼさないようにし、その都市計画区域内における
- 土地利用の動向
- 人口
- 産業
の将来の見通し等を考えて、合理的な土地利用に支障をきたさないようにしなければならないとされています。