登記事項証明書から情報を正確に知るためには、表題部よりも権利部の方が大事です。ですが、表題部より権利部のほうがややこしくわかりにくいのが常です。今回は自力で権利部を読むのに必要な知識を解説します。
*登記事項証明書と登記簿謄本はほぼ同じものです。詳しくは以下の記事より。
【登記事項証明書】登記事項証明書と登記簿謄本の違い
【この記事からわかること】
- 権利部(甲区・乙区)の基本的な読み方について
- 主登記と付記登記について
- 本登記と仮登記について
1.登記事項証明書の読み方
権利部(甲区) - 最後の情報が最新の登記事項
登記事項証明書には、似たような内容がずらりと並んで表示されていることが多いです。見方に慣れていないときには、いまいち理解しにくいものだと思います。
登記事項証明書を読むために知っておくべきは、原則として最後に書いてある情報が最新の情報だということです。たとえば、現在の所有者が知りたいときには、権利部(甲区)の一番最後に記載されている内容を確認します。
ただし、共有者がいる不動産の場合は少し違ってきます。共有者がいる不動産で、共有持分のみを移転している場合には「所有権一部移転」「持分一部移転」「持分全部移転」といった記載がされています。この場合は、最後に記載されている内容のみではなく、他の共有者の確認も必要となります。
権利部(乙区) - アンダーラインは抹消、変更
権利部(乙区)の場合、アンダーラインが引かれていない登記事項は全て有効なものです。アンダーラインは、抹消した部分ですよという意味です。権利部(乙区)は、アンダーラインの引かれた部分がたくさんある状態になりやすいです。
また、アンダーラインが一部の場所にのみ引かれているときがあります。この場合は、その部分のみが抹消(または変更)されましたという意味です。
権利部(乙区)と権利部(甲区)の例
たとえば、Aさんが所有していたマンションをBさんが購入し、その後息子のCさんが相続したとします。権利部(乙区)には、3つ記載があるはずです。
まず、Aさんが始めて所有したことが一番上に記載されます。次に、Bさんが売買により取得したことが記載されます。最後に、Cさんが相続により取得したことが記載されます。
Aさんは購入時に銀行でお金を借りていて、Bさんに売却したときに残債がまだ残っていた。Bさんも購入費用の一部を銀行で借入れしていたとします。権利部(甲区)には、3つ記載があるはずです。
まず、Aさんが購入したときに借り入れた分の抵当権の設定登記がされています。しかし、この登記事項はBさんの購入によってアンダーラインが引かれます。その下には、抵当権抹消の登記事項が記録されます。
さらに一番下には、新しく設定されたBさんの抵当権の設定登記が記載されます。
2.その他のルール
主登記と付記登記
登記には主登記と付記登記があります。主登記とは、登記事項証明書に順位番号が付けられている登記のことです。通常、登記は主登記で行われます。
たまに付記登記が行われます。これは主登記の追加情報として行うべき登記と判断されたものです。
例えば所有者のAさんが住所の変更をしたときなどです。このときは住所の箇所にアンダーラインが引かれ、その下に新しい住所が記載された付記登記がされます。
仮登記と本登記
仮登記とは、本登記(通常の登記のこと)をするための要件が整わない場合に、将来行う登記の順位をあらかじめ確保するために行う登記です。登記にとって順位は非常に重要なことなので、こういった措置がとられます。
しかし、仮登記には対抗力もなく、本登記ほどの強い効力は持っていません。ですので、仮登記をしたから安心というわけではないので注意してください。
3.まとめ
権利部(甲区)では、最新の情報ほど後ろに記載されます。共有者などの情報にだけ気をつければ、比較的分かりやすい箇所です。
権利部(乙区)では、効力がなくなった登記事項にはアンダーラインが引かれます。アンダーラインが引かれていない登記事項は全て有効な情報です。
主登記と付記登記は、関係している登記のまとまりです。主登記の補足として、付記登記がされます。
仮登記とは、本登記をする前に順位番号の予約をする登記です。本登記ほどの強い効力を持っていないので、注意が必要です。
以上、権利部(甲区と乙区)の基本的な読み方でした。