散歩をしていると、明らかに空き家だなと思われる物件が増えてきました。あなたの周りでも、すこし暗い雰囲気を出している空き家が思い当りませんか?この空き家が深刻な社会問題になりつつあります。
放っておくと犯罪の温床になるなど、マイナス効果しかない空き家問題。わたしには関係がないしなぁと思うかもしれませんが、そうとも言い切れないのが空き家を使った悪事の数々です。振り込め詐欺、クレジットカードの不正利用、出火による近隣住宅の消失など、挙げればキリがありません。
問題の解決を急ぐ政府から新たな解決促進案が先日発表されました。今回発表された案は、空き家を相続する予定の方や、空き家を現に相続した方には節税効果が抜群なので、先取りしておきましょう。
[aside type="warning"]平成28年4月1日 追記
記事執筆時(平成27年12月21日)は「案」の段階でしたが、平成28年度税制改正要綱の一部として正式に発表されました。[/aside]
【この記事からわかること】
- 空き家問題の概要
- 空き家と税金の関係
- 新たな譲渡所得の控除について
- 譲渡所得の計算方法
- 譲渡所得の3000万円控除の適用条件
空き家の何が悪いのか?環境と治安の悪化。
普通の家は住人がいるため、なにかしらの管理がされているものです。ですが、空き家は誰も住んでいないので管理が行き届かない状態になっています。
管理が行き届かないだけなら良いのですが、実際にはそれだけでは終わりません。環境面・治安面で悪影響を及ぼしています。
環境面だと、景観を悪くしていることがあります。街の景観が悪いことくらいどうってことないじゃないかと考えましたか?それは大きな間違いです。
あなたが苦労して建てたマイホームの隣に無残な空き家があったらどうでしょうか?単純に嫌ですよね。もっと悪いのは、隣に空き家があることで、あなたの不動産価値も下がります。
治安面では、犯罪の温床になってしまいます。管理が行き届かないということは、人目につかないということです。そういう場所は悪事を働くにはうってつけです。
空き家を取引の場所として活用する例もありますし、放火することもあります。放火の場合には、近隣の家まで燃える可能性があります。問題だと思いませんか?
なぜ空き家を放置するのか?答えは税金対策。
これだけ悪影響を及ぼすとされる空き家がどんどん増えている現実があります。なぜ空き家だらけになるのか不思議ではありませんか?これには理由があります。
わたしたちは不動産を取得すると毎年必ず払わなければいけない税金があります。固定資産税です。家計にとっても大きな出費ですよね。
家が建っていない土地(更地)と家が建っている土地では、固定資産税の税負担が違います。家が建っている土地の固定資産税は、更地の6分の1になる軽減措置が適応されます。これが空き家が放置される原因の1つです。
昨今では、なかなか土地が売れにくくなっています。はりきって解体したものの、買い手が付かずに税負担だけ爆増するのでは誰も解体しませんよね。
どういうタイミングであれば地主は建物を壊すのか?
土地を販売するときに建物が建っていないほうが売りやすいのは事実です。そこに建物があると測量なども難しいですし、何よりイメージがしにくくなります。このようなデメリットからなかなか売れない土地のオーナーが解体に踏み切るタイミングがあります。
そのタイミングは年明け早々です。なぜなら固定資産税は1月1日を起算日とするので、1月1日の土地の状況が判断材料になります。
1月1日時点で建物がある土地であれば軽減措置が適応されます。そうすれば1年間はお得な固定資産税で、販売活動に勤しめるわけです。探し回ってもなかなか土地が出てこなくて困っているときは、年明けを狙いましょう。
譲渡所得から3000万円を特別控除し、売買の活性化を狙う
今回、国土交通省と財務省が検討を開始したのは「親などから相続した空き家や土地を売却した場合に譲渡所得から3,000万円特別控除する」というものです。2015年末の2016年度税制改正で議論を進めることとしています。
制度の詳細がはっきり決まらないとわからないのですが、最大で900万円の節税効果があります。高級車が1台買える額です。かなり力が入っていることがわかっていただけるでしょう。
この制度が適応されれば、不動産オーナーは積極的に売却する理由が生まれます。なので、今まで解体されずに放置されていた空き家なども、更地として公に出てくる可能性が高まるわけです。
譲渡所得の計算方法
不動産を売ったときには譲渡所得を支払う義務があります。では、譲渡所得はどのように決まるのかを簡単におさらいしましょう。
収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
まず課税譲渡所得金額の計算方法についてです。上記がその数式です。
例)親から相続したセカンドハウスを1億円で売却。購入時の金額は契約書が残っていないため分からない。
100,000,000円 - ( 5,000,000円 + 5,000,000円 ) - 30,000,000円 = 60,000,000円
このケースでは、6,000万円が課税譲渡所得金額になります。ここで勘の良い方なら契約書が残っていないのにどうして分かったの?という疑問が生まれるかと思います。これには秘密があります。
契約書が残っていないときには売却した値段の5%を取得費にするとされています。仮に8,000万円で取得したとしても500万円にされてしまいます。契約書はしっかりと保管しましょう。
あとは短期譲渡所得であれば30%、長期譲渡所得であれば15%の税率を掛けるだけです。先ほど最大で900万円としたのは、短期譲渡として扱われるならということです。所有期間が5年以下で売却したときには短期譲渡になりますが、親からの相続となるとケースが変わることも考えられます。
3000万円特別控除の適応条件案とは
どのような場合に3,000万円特別控除の適応を検討しているかを紹介します。相続して3年以内に取り壊しや耐震リフォームをして、建物や土地を売却した場合に検討していると発表されています。
また、空き家問題を焦点にした政策なので築年数の制約もあります。対象になるのは1981年以前の旧耐震基準で建てられた戸建て住宅とされています。
制限が強いような気がするかもしれませんが、このような住宅は日本中にあふれかえっています。決して珍しいケースではないので効果を体感できる方も多いでしょう。
まとめ
人口減少問題が加速するのと一緒に、空き家問題もだんだんと深刻化しています。地域の生活環境に悪影響を及ぼす空き家には、早めの対策が必要です。放っておけば、いずれはあなたの身にも危険がふりかかります。
今回政府が検討している譲渡所得からの3,000万円特別控除は、現に空き家を相続した方や、空き家を相続する予定の方が有効活用すべき政策です。譲渡所得税や相続税の計算はとても難しいので、面倒に感じるかもしれませんが何百万も節税できるとなれば話は別ですよね。少し地域社会に貢献しつつも、あなたの懐も潤うすばらしい政策をしっかり活用しましょう。