土地を選ぶときには、土地の条件を整理します。
土地選びの条件は、人によってそれぞれ異なります。
一般的には、
- 日当たりのよい南向き
- 交通量は少ないが、広めの前面道路
- 近くに便利な施設がたくさんある
- 子供が学校まで簡単に登校できる
- 万が一のために総合病院が近い
などを満たしていると「条件の良い土地」といわれます。
しかし、条件が揃っているほど、土地の価格は高くなっていきます。
また、便利な施設といっても、
- スーパーマーケットなどの買物施設
- 市役所などの公的施設
- 銀行などの金融機関
- 電車の駅など公共交通機関
と、さまざまな施設があり、人によって求めるものが異なります。
もしあなたが、電車やバスをあまり利用しないとしたら、公共交通機関が近いことで土地の価格が高くなるのは歓迎できないはずです。
あなたが求める土地の条件を明確にすることで、
- 理想の環境が具体的にみえてくる
- 土地を探すときの方針が決まる
- 必要のない条件にお金を払わなくていい
- 営業マンの余計なひとことに惑わされない
などのメリットがあります。
あなたにとって本当に必要な条件を、はっきりとさせましょう。
生活環境にかかわる条件
あなたが暮らし始めたときの「生活環境」にかかわる条件は、
- 商業施設(全世帯)
- 勤務先(全世帯)
- 病院(全世帯)
- 上下水道(全世帯)
- 前面道路(全世帯)
- 教育施設(子育て世帯)
- 公共交通機関(交通文化による)
- 公的施設(ほぼ不要)
- 金融機関(ほぼ不要)
です。
どの条件を重視するのかは、ひとによって変わります。
何があなたにとって欠かせないものか、じっくり考えてください。
絶対に忘れないでほしいのは、条件が良くなれば、そのぶん「土地の価格」が高くなるということです。
商業施設(全世帯)
商業施設とは、
- 大型ショッピングセンター
- スーパーマーケット
- コンビニ
などで、全世帯がしっかりと考えたい条件です。
商業施設について考えるときには、土地からの距離に目が行きがちです。
しかし、土地からの距離だけで考えると、エリアが限定的になってしまうので、あまりよくありません。
土地からの距離だけで考えるよりも、
- 通勤
- 通学(送り迎え)
など、ライフスタイルに応じた適切な位置で考えるようにしてください。
勤務先(全世帯)
勤務先については、全世帯がしっかりと考えたい条件です。
ただし、
- 通勤手当が手厚い
- 早起きが苦痛ではない
- 電車なのであまり関係ない
などといった考え方ができる方であれば、もっとも妥協しやすいところでもあります。
すこし大きな規模での話になりますが、
- 東京(商業の中心地)
- 埼玉(ベッドタウン)
とよく言われますが、勤務先との距離について妥協できると、土地のエリアが県外にまで広がる可能性さえあるということです。
とはいえ、毎日のことなので現実的に可能な範囲内で考えるようにしてください。
病院(全世帯)
病院とは、
- 総合病院(都道府県立病院など)
- 各専門医院
などで、全世帯がしっかりと考えたい条件です。
ただし、総合病院(都道府県立病院など)については、付近にほかの条件も揃っていることが多く、近いほど土地の価格が急激にあがります。
土地の価格をすこし抑えたいのであれば、
- 欲しい専門医院(小児科など)が近い
- 総合病院も「1㎞~2㎞以内」にある
といった立地条件で考えるとよいです。
目安ですが、
子供がまだ小さい (小学校低学年以下) |
子供も成長し、夫婦も若い (小学校低学年 + 30代~40代) |
老夫婦 (60代前後) |
|
総合病院 | できれば欲しい | ほどほどの距離に欲しい | 近いと安心 |
専門医院 | 小児科が近いと安心 | さほど必要ではない | 持病などによる |
といった考え方です。
上下水道(全世帯)
見落としがちですが、上下水道は、全世帯がしっかりと考えたい条件です。
上下水道の引き込みがされていないと、工事費用として「50万円~100万円」が追加でかかります。
必要な土地の面積が50坪であれば、坪単価1万円~2万円あがるのと同じです。
かなりの負担になることは間違いがないので、できれば「引き込みあり」の土地を選んでください。
前面道路(全世帯)
前面道路は、全世帯がしっかりと考えたい条件です。
前面道路によって起こるトラブルには、
- 交通事故などの心配
- 大型車の交通が激しく、マイホームが揺れる
- 基幹道路になっていて、夜中でもうるさい
- 抜け道として頻繁に使われる
などがあげられます。
表通りから、1本から2本ほど中に入ったところを選ぶのが無難です。
教育施設(子育て世帯)
教育施設とは、
- 保育園
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高校
などで、子育て世帯はしっかりと考えたい条件です。
通学期間 | 子供の年齢 | 校区 | 通学方法 | |
幼稚園(および保育園) | 3年間 | 1歳~5歳 | なし | 親または園 |
小学校 | 6年間 | 6歳~12歳 | あり | 子供の自力 |
中学校 | 3年間 | 12歳~15歳 | あり | 子供の自力 |
高校 | 3年間 | 15歳~18歳 | なし | 子供の自力 |
中でも、しっかりと考えたいのは、
- 小学校
- 中学校
です。
小学校と中学校は、
- 義務教育
- 校区が決まっている
という特徴があり、合わせると「9年間」もの間、学校に通うことになります。
鍛えられるといえば、間違いないかもしれません。
しかし、安全や利便性を考えると、適度な距離にあってほしいものです。
保育園や幼稚園については、
- 親の送迎
- 園の送迎
など、あまり心配する必要はありません。
高校ともなってくると、
- 体力がついている
- どこに進学するかわからない
- 近かったとしても、どこかに遊びに行く
など、不確定なことが多すぎて、距離が近い意味がかなり薄れていきます。
公共交通機関(交通文化による)
公共交通機関とは、
- 電車
- バス
などで、交通文化などによっては、しっかりと考えたい条件です。
車社会であれば、あまり必要ありません。
都会に暮らしていて、自家用車を使っていないのであれば、重視したい条件になります。
また、高齢の方も意識してみてください。
公的施設(ほぼ不要)
公的施設とは、
- 市役所
- 県庁
などで、ほとんどの人が考える必要のない条件です。
たとえば、
- 公的施設に勤務している
- 公的施設を月に何度も利用する
のであれば、話は別です。
しかし、ほとんどの方は、利用頻度が「年に数回」だと思います。
金融機関(ほぼ不要)
金融機関とは、
- 銀行
- 郵便局
などで、ほとんどの人が考える必要のない条件です。
公的施設と同じように、
- 金融機関に勤務している
- 金融機関を月に何度も利用する
のであれば、話は別です。
しかし、今時、ほとんどの方は「近場のATM」を利用することが多いでしょう。
分譲住宅のチラシなどでも、金融機関の距離を記載していますが、惑わされないようにしてください。
環境条件の一覧
環境条件を一覧でまとめると、
項目 | 世帯 | 注釈 |
商業施設 | 全世帯 | ライフスタイル(生活導線)が重要 |
勤務先 | 全世帯 | ある程度妥協しやすいところ |
病院 | 全世帯 | 世帯のステージに合わせる |
上下水道 | 全世帯 | 引き込みがないと「50万円~100万円」の追加負担 |
前面道路 | 全世帯 | 多様なトラブルが起こりやすい |
教育施設 | 子育て世帯 | 小・中学校を重視すべき |
公共交通機関 | 交通文化による | 高齢世帯は重視すべき |
公的施設 | ほぼ不要 | あまり使わない |
金融機関 | ほぼ不要 | あまり使わない |
となります。
権利にかかわる条件
権利にかかわる条件とは、
- 所有権(原則として、所有権で土地を取得すべき)
- 借地権(安くなるが、おすすめしない)
いずれによる土地の取得なのかです。
借地権を活用すると、土地にかかるお金は安くなりますが、
- 定期借地契約(一定期間で強制解消される)ものもある
- 契約終了後、建物の解体が義務化されることもある
- 当然、土地は資産として残らない
など、一般の方には扱いがとても難しい側面があります。
マイホームの建築にかかわる条件
マイホームの建築にかかわる条件を考えるときには、
- 前面道路
- 用途地域
- 地目
- 建ぺい率
- 容積率
- 土地の面積
- 防火地域(および準防火地域)
の順番に考えていきます。
以降の解説では、ステップ1:土地の予算をマイホームの建築費がわからなくても正しく決める方法の内容を前提に話を進めています。
前面道路
前面道路は、必ず
- 建築基準法(および道路法)上の道路
- 幅員が4m(雪の降るところは6m)
を選び、接道義務を満たすようにしてください。
(※接道義務を満たしていなければ、家は建てることができない。)
また、
- 位置指定道路
- みなし道路
については、できれば避けたほうがトラブルに巻き込まれることがありません。
前面道路の条件が悪いと、
- そもそも家が建てられない(接道義務)
- 建て替えや増築ができない(幅員が狭いと、建ぺい率・容積率に影響)
- 利便性が著しく落ちる(狭い道路は使いにくい)
- 近隣とのトラブルが増える(位置指定道路、みなし道路は権利が複雑)
などの弊害があります。
より詳しいことは、以下のページを参考にしてください。
道路について
※ただし、
- 建築基準法(および道路法)上の道路
- 幅員が4m(雪の降るところは6m)
を選び、接道義務を満たしていれば、あまり敏感になる必要はありません。
用途地域
用途地域とは、都市計画法によって決められる地域で、各地域によって建てることができる建物が決まっています。
用途地域の中には、
- 住居系の地域(全7種)
- 商業系の地域(全2種)
- 工業系の地域(全3種)
の、12種類が存在します。
マイホームの建築に適しているのは、住居系の地域(全7種)とされる、
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
のうち、いずれかです。
各用途地域の重要ポイントをまとめたものが、以下の表です。
絶対高さの制限 | 斜線制限 | 外壁後退距離制限 | 建てられてしまう建物 | |
第一種低層住居専用地域 | 10mまたは12m | 道路斜線 北側斜線 |
1mまたは1.5m | ほぼ心配なし |
第二種低層住居専用地域 | 10mまたは12m | 道路斜線 北側斜線 |
1mまたは1.5m | ほぼ心配なし |
第一種中高層住居専用地域 | なし | 道路斜線 隣地斜線 北側斜線 |
なし | 床面積500㎡以内の店舗 |
第二種中高層住居専用地域 | なし | 道路斜線 隣地斜線 北側斜線 |
なし | 床面積500㎡以内の店舗 |
第一種住居地域 | なし | 道路斜線 隣地斜線 |
なし | 床面積500㎡以内の店舗 ボーリング場など ホテル・旅館 |
第二種住居地域 | なし | 道路斜線 隣地斜線 |
なし | 床面積500㎡以内の店舗 ボーリング場など ホテル・旅館 パチンコ カラオケボックス |
準住居地域 | なし | 道路斜線 隣地斜線 |
なし | ほとんどの騒音施設 |
あくまでも傾向としてですが、上に行くほど「土地の価格」が高いです。
あまり馴染みのない、
- 絶対高さの制限
- 外壁の後退距離制限
について、少しだけ解説します。
絶対高さの制限がある地域では、建物の高さを必ず制限より低くしなければいけません。
外壁の後退距離制限がある地域では、各建物の外壁は規定以上の距離をはなす必要があります。
ですので、いわゆる高級住宅地である、
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
のみ、適用されています。
もっとも気にしたいのは、建てられてしまう建物で、場所によっては、
- ボーリング場
- パチンコ
- カラオケボックス
など、
- 治安悪化
- 騒音
につながる施設が建設可能です。
ですので、選ぶのであれば、
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
のいずれかにすると、マイホームが建った後の暮らしも安心できます。
斜線制限について
斜線制限によっては、建物の屋根の形状が制限されることがあります。
とはいえ、よほど高い建物にしない限り、ほとんど関係はありません。
たとえば、マイホームを5階建ての鉄筋コンクリート造りにするのであれば、考える必要があります。
しかし、一般的には、建築士(および設計士)の技量でなんとかしてくれる部分です。
地目
地目とは、登記法で定められる土地の種類で、原則として「宅地」を選びます。
農地や山林は安く買えるように見えますが、
- 法的な制約
- 造成費用(数百万単位)
を乗り越えなければいけないので、実質的には、さほど安くなりません。
農地を選んだ時には、
- 農地転用(そもそも取得できないケースも)
- 盛り土工事(土を入れて地面を上げる)
- 地盤改良工事(緩いので大規模になりやすい)
を行う必要があり、より多くの時間(1か月~半年)と、より多くの費用(数百万円)が必要になります。
また、地盤改良を行ったとしても、やはり自然に固まった地盤に比べると緩いので、不同沈下(地面がばらばらに沈み、家が傾く)が起こりやすくなっています。
より確かな「宅地」を選ぶなら
より確かな「宅地」を選ぶのであれば、「古地図」を活用しましょう。
古地図を確認して、かなりさかのぼっても「宅地」であるようなら、地盤は固い可能性が高いです。
しかし、比較的近い年数(50年~100年以内)に「農地」であったようなところは、地盤が緩い可能性が高いです。
建ぺい率
建ぺい率とは、敷地に占める建物を建てることができる面積の割合です。
具体的に例を出すと、
100坪の土地 × 建ぺい率50% = 50坪
となり、50坪まで建物を建てる敷地として使うことができます。
「建物を建てる敷地として使える」とは、「屋根で覆ってもよい面積」です。
つまり、建ぺい率として考えれば、
- 1階の面積:45坪
- 2階の面積:35坪
- 屋根の面積:50坪
の建物は「問題なし」ということです。
マイホームのプランとして、1階の面積(目安)がわかるはずです。
土地を見たときに、
売地の面積 × 建ぺい率 = 1階の面積(目安)より大きい
であれば、おおむね問題がないと判断できます。
容積率
容積率とは、敷地面積に応じて建てられる建物の総床面積の割合です。
具体的に例を出すと、
100坪の土地 × 建ぺい率200% = 200坪
となり、総床面積が200坪までの建物を建てられます。
つまり、例にあげた土地であれば、
- 1階の面積:150坪
- 2階の面積:50坪
の建物は「問題なし」ということです。
マイホームのプランとして、建物の総床面積(目安)がわかるはずです。
土地を見たときに、
売地の面積 × 容積率 = 建物の総床面積(目安)より大きい
であれば、おおむね問題がないと判断できます。
※ほとんどの場合、容積率は「無視」して問題ありません。
土地の面積
土地の面積は、
- 建ぺい率
- 容積率
- 庭
- 駐車場
を総合して考えます。
必要以上に土地の広さを求めると、環境条件に大きな影響がでるので、細かく考えてください。
まとめるとわかりやすいのですが、
何も考えない | しっかり考えた | |
土地の予算 | 2,000万円 | 2,000万円 |
検討している面積 | 100坪 | 75坪 |
本当に必要な面積 | 75坪 | 75坪 |
土地の坪単価 | 20万円/坪 | 26万7,000円/坪 |
土地の面積を適当にするとは、上の表のようなことです。
土地を、
- 坪20万円
- 坪26万7,000円
で探すのでは、出てくる選択肢に雲泥の差があります。
「広々とした土地でいいだろ~!」といえるかもしれませんが、
- もっとマイホームの設備をよくできた
- もっと住環境のよいところに住めた
- 土地を持っている限り、余計な固定資産税がかかる
など、圧倒的にデメリットのほうが大きいです。
仮に、しっかり考えたうえで、坪20万の土地購入に落ち着いたとすれば、500万円の節約につながり、
- カーポート
- ハイグレードなキッチン
- ハイグレードな浴室
- ウォークインクローゼット
- よりよい家具・家電
などを揃えても「おつり」がきます。
駐車場について
駐車場に必要な面積は、
- 1台当たり5坪(標準・ゆったりめ)
- 1台あたり4坪(軽自動車)
- 1台あたり3.5坪(ギリギリ)
です。
「1台あたり5坪」で考えるのがおすすめです。
シミュレーションすると、
項目 | 数値 |
1階の面積(目安) | 35坪 |
建ぺい率 | 60% |
必要面積① | およそ60坪 (35坪 ÷ 60%) |
建物の総床面積(目安) | 55坪 |
容積率 | 200% |
必要面積② | 27.5坪 (55坪 ÷ 200%) |
庭 | 10坪 |
駐車場 | 15坪 (ゆったり3台分) |
合計必要面積 (①・②のいずれか大きいほう + 庭・駐車場) |
85坪 (60坪 + 10坪 + 15坪) |
土地の購入予算 | 2,500万円 |
坪単価 | およそ29.5坪 (2,500万円 ÷ 85坪) |
となります。
防火地域(および準防火地域)
防火地域(および準防火地域)では、消防法により建物のコストが「100万円前後」あがります。
防火地域(および準防火地域)では、
- 特殊加工された窓ガラス(格子模様の線の入ったもの)
- 防火シャッター
などを、適切な箇所に使用することが義務付けられています。
すこし建材として値段が高いので、余計なコストがかかるということです。
ただし、悪いことばかりでもなく、火災保険で優遇されたりもします。
日当たり・占い(風水など)について
日当たりや占い(風水など)については、ひとそれぞれですが、あまり深く考えすぎないことをおすすめします。
すこしきつい言い方になりますが、「こだわる人は、結局土地が買えない人」です。
たとえば、日当たりであれば、南向きが良いとされますが、
- 日当たりが良いので、心地よい
- 日当たりが良いので、光熱費がかさむ
といったように、なんどでもいえるのです。
日当たりや占い(風水など)に共通していることは、「セールストーク」に利用されやすいことです。
日当たりは、「不動産営業マンのセールストーク」に活用できます。
占い(風水など)は、「占い師のセールストーク」に活用できます。
不動産営業マンからすれば、
- 決めたいときの文句
- 別の物件に誘導するための文句
にできます。
占い師からすれば、何度も占いをしてくれれば「お金」が入ってくるので、「あーだ、こーだ。」言うのです。
説教じみた話になりますが、「答えのない問い」で迷うよりも、「答えのある問い」を確実にこなしていきましょう。